アダム・ドライバー、やけくその歌とダンス ─ 『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』で鬼才監督のオモチャに

いま映画界で最も注目される男、それがアダム・ドライバーである。『スター・ウォーズ』で知名度を急激に伸ばしたが、それでなくともここ数年の活躍は目覚ましい。2017年に『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』『ローガン・ラッキー』、2018年に『ブラック・クランズマン』、2019年に『マリッジ・ストーリー』『ザ・レポート』『The Dead Don’t Die(原題)』。いったい、どうやってこれだけの映画をこなしているのか。
そんな彼の最新作、構想30年&企画頓挫9回という“映画史上最も呪われた企画”『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』より、アダムが歌い踊るミュージカル・シーンの映像が公開された。この人、カイロ・レンやぞ。
主人公のCM監督トビーは、仕事への情熱を失いながらもスペインの田舎で撮影に取り組んでいた。ある日、トビーが謎の男から渡されたDVDは、学生時代にトビーが監督した映画『ドン・キホーテを殺した男』。舞台の村が近いと知ったトビーは現地に向かうが、人々は映画のせいで変わり果てていた。ドン・キホーテを演じた老人ハビエルは自分を本物の騎士だと信じ込み、清楚な少女だったアンジェリカは女優を夢見て村を飛び出したのだ。トビーを忠実な従者のサンチョだと思い込んだ老人は、トビーを引き連れて大冒険の旅へと出発する。
アダム演じるトビーは、ハビエル=ドン・キホーテとの旅路のさなか、かつての主演女優アンジェリカと再会。しかしアンジェリカがトビーについて「妖術師(エンチャンター)なの」と誤解を招く発言をしたことから、ドン・キホーテは妖術師を成敗すべくトビーに剣を向けた。窮地を脱するべく、トビーは「歌手(チャンター)」だと言い張る。なんとか取り繕うため、トビーは高らかな歌声と陽気なステップを披露した。なんとかドン・キホーテの心をつかみ、2人で華麗なハーモニーを大自然に響かせるが……。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のカイロ・レン役、『マリッジ・ストーリー』でゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされたアダム・ドライバーは、2019年冬の顔といっていい存在。新作では鬼才テリー・ギリアムの世界観に飛び込んだが、世界各国で「大胆不敵で抱腹絶倒」「とんでもなく感動的」「狂気に満ちた世界」「意味が全く分からない」との絶賛が寄せられているだけに、きっとまだ見ぬ新境地を見せてくれることだろう。

1989年に構想が開始された本作は、2000年にスペイン・マドリードで撮影が始められるも、撮影現場周辺を戦闘機が飛び交って中断。さらに鉄砲水に襲われて撮影機材が流失、風景も様変わりしてしまい、ついにはドン・キホーテ役(当時)のジャン・ロシュフォールが腰痛で歩けなくなったために企画は頓挫した。その後も資金繰りやキャスティング、権利問題などで完成に至らず、企画の経緯は『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2002)としてドキュメンタリー映画化されている。
主人公トビー役は『スター・ウォーズ』や『ブラック・クランズマン』(2018)のアダム・ドライバー、老人ハビエル役には「ゲーム・オブ・スローンズ」で知られ、テリー・ギリアム監督とは4度目のタッグとなる重鎮ジョナサン・プライス。トビーのボス役は『パイレーツ・オブ・カリビアン』『アベンジャーズ』の名優ステラン・スカルスガルド、ボスの妻ジャッキ役は『007/慰めの報酬』(2008)のオルガ・キュリレンコが演じている。
映画『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は2020年1月24日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。