【解説レビュー】息、すると死ぬってよ。『ドント・ブリーズ』何がそんなに怖いのか
2016年はビビリのくせにホラー映画を沢山見た。何故かというと、『イット・フォローズ』からはじまり、『貞子vs伽倻子』『ライト/オフ』など斬新なアイデアのものが多かったからだ。今年もビビリのくせに、多くのホラー/スリラー映画を観ていきたいと思う。
ところで年の暮れに、『ドント・ブリーズ』というホラー映画が公開されたことはご存知だろうか。チラシには“20年に一本の恐怖の作品”と書かれていて、つい我々に「ほんと〜?」なんて勘ぐらせる。ところが、そのコピーがその通りで、今作は現在日本でも大ヒット中。私も先日劇場に足を運んだのだが、鑑賞後には、まるでジェットコースターから降りてすぐのように足がすくみ、酸欠状態になっていた。ジジイ、怖すぎる。
何故私たちも息を止めてしまうのか
若者三人が家についた時、彼らが家の中をくまなくチェックするシーンがある。そのカメラワークは、しっかりと一階から二階へ動き、廊下の先にはあの部屋があって、横は浴室で……など、家の構造をしっかり観客に説明するかのようだ。家の構造を知る事で、その後若者が逃げ惑う際、どこに何があるのかを観客も理解することになる。あたかも自分がその場にいるような気持ちになり、彼らと一緒にジジイに追われる気分を味わえるのだ。(そこ、横の部屋逃げて!って具合にね)
ロッキーにはどうしようもない母親がおり、すでに家庭は崩壊している。彼女には、母親との生活から抜け出し、幼い妹を幸せにするためカリフォルニアに行くという夢があった。その資金のために盗みを行っていたロッキーは、今回大金が入れば足を洗うつもりだったのだ。
一方、アレックスはロッキーに恋人(三人組のひとり、マニー)がいる事を知りながら、密かに彼女に恋心を抱いている。アレックスの父親は街の警察官で、巡回地区で担当する家のスペアキーなどを持っていた。彼はその鍵を使うことができ、また父親から得たセキュリティシステムの知識の豊富なため、いわば“盗みのキーマン”としての役割を担っている。しかし、金に貪欲なマニー(綴りもMONEYだから救いようがない)よりも良心的な少年だ。
『ドント・ブリーズ』いったい何が怖いのか
この映画の何が怖いかって、言うまでもなくあのジジイだ。しかし彼はあくまで人間で、幽霊でもなんでもない。そんな彼が何故あれほどまでに我々にショックを与え、恐怖心を抱かせたのか……。それは彼が“盲目”であり“孤独な老人”だからだ。