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Eメールとネットは集中力妨げる「コカインのようなもの」 ─ 映画『ダウンサイズ』監督、脚本執筆の仕事術

ダウンサイズ
マット・デイモンとアレクサンダー・ペイン監督 (C) 2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

マット・デイモン主演の映画『ダウンサイズ』が、2018年3月2日より日本公開を迎えた。本作は、人間を14分の1のサイズにまで「ダウンサイズ」する革命的な技術を用いて、爆発的な人口増加問題を解消し、個人の幸福としては今ある資産で裕福な生活を送るという「人類縮小計画」を描く作品。監督は、アカデミー脚色賞最多受賞者のひとりとして知られる俊英アレクサンダー・ペインだ。今作のインタビューでアレクサンダー監督は、ひとりの物書きとしての仕事術を語っている。

アレクサンダー監督は、『ダウンサイズ』で盟友ジム・テイラーと共同で脚本を手掛けた。二人はかつてのルームメイトであり、これまで何度も共同執筆を行い、『サイドウェイ』(2004)などで数々の映画脚本賞を共に受賞している名コンビ。ジムは、身体を小さくして、もっと大きな家に暮らし、贅沢な生活を送ることができたら…というアイデアを、原始的な状態でアレクサンダーのもとに持ち寄ったという。監督はこう語る。

「彼に質問したんです。”実際にそれはどうやって起きるんだろう?” ハイパーリアリズムでそれをやるとしたら、そして、もっとリアリスティックに、そして同時にもっと不条理なやり方でやったらどうなるだろうと想像しました。それからさらに政治的な偏向をつけて、“だれが一体それを始めるだろう”って考えたら、ノルウェー人だろう、ってことになった。ノルウェー人の科学者が人口過剰の万能策として始めるだろう。でもどうやって?どうやって彼らはそれを広めようとするだろうか。
そうしたら、人々はゴールドラッシュみたいにそこに駆けつけるようになって、他の人々にとっては不正になりうるだろうか。そうやってただ考え始めて。それから、何年もかけてストーリーがどうなりえるかってことを考え続けたんです。」

ダウンサイズ
アレクサンダー・ペイン監督
(C) 2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

アレクサンダー監督とジムは、この無限の可能性を秘めたアイデアを一冊の脚本に仕上げる仕事を、いつも同じ部屋で行ったという。アレクサンダー監督はロサンゼルスと故郷のオマハを行き来していて、一方のジムはニューヨークに暮らしていたため、その中間地点となる街に集合した。そこで二人は、どのようにして仕事を進めていたのだろうか。

「ただ座って、話して、次に何が起こるか想像するんです。それから少しずつ一人が2、3、4ページ書き始めて、”ヘイ、一緒にやろう”といって、もう一人がソファから立ち上がって、もう一人に加わるんです。再考も一緒に。」

もっと具体的なワーク・スタイルを尋ねると、アレクサンダーはユニークな事実を明かしてくれている。たとえばGoogleドライブなどを用いれば、オンライン上でリアルタイムの共同作業を行うこともできる。しかしアレクサンダー・ペインとジム・テイラーは、二人で一台のコンピューターを使い、そこに二つのキーボードを接続して共同執筆を行ったという。まるで一枚の模造紙に、二人でペンを書き込んでいくように。最も臨場感あるデジタル・コラボレーションだ。

二人のような執筆作業を生業にする者のみならず、多くのクリエイティブ・ワーカーにとって集中力との付き合い方は一生の課題。これにあたってアレクサンダーは、集中力の妨げになるものを排除する、というスタンスを選んでいるようだ。

書きものにとって最もだめなものはEメールですよ。デヴィッド・セダリス(※)のような書き手はEメールを持っていないんです。意識的に自律したかたちで、彼は言うんです。“Eメールとインターネットを持っていたら、一日中何かを見上げて終わってしまうだろう。それで、仕事を終えることができないだろう”。Eメールっていうのは、書きものをする者にとってはコカインみたいなものですよ。」

※デヴィッド・セダリスは、独特のユーモアを持ち味とするアメリカのエッセイスト。著書のいくつかは邦訳版も発売されており、『すっぱだか』『サンタランド日記』(共に草思社)がある。

こうして完成した脚本だったが、監督自身は「ジムと費やす時間は大好きだし、ジムのことも大好きだけれど、書く過程は苦しいし、長く続く」として、脚本制作の苦労を振り返っている。

ダウンサイズ
マット・デイモンとアレクサンダー・ペイン監督
(C) 2017 Paramount Pictures. All rights reserved.

映画『ダウンサイズ』は、その印象こそ強いコメディ要素を思わせるが、思いのほか風刺的な痛快作だ。こうした観方は監督もむしろ歓迎しているようで、「私の方がもっと政治的で風刺的な映画だと思っている」と述べている。ブラックユーモアも効いていて、メディア関係者向けの試写室内では何度も笑いが起こっていた。「人類縮小計画」というユニークな設定に惹かれた方にはもちろん、シャレの分かる大人にもたっぷりお楽しみいただきたい一作だ。アレクサンダー監督とジム・テイラーが丹念に練り上げた脚本のなせる妙技をご堪能あれ。

映画『ダウンサイズ』は2018年3月2日より公開。

『ダウンサイズ』公式サイト:http://downsize.jp/

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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