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アニメ版『デッドプール』製作中止にクリエイターが反撃 ― 偽脚本でマーベルを痛烈に皮肉る

デッドプール
© Twentieth Century Fox Film Corporation 写真:ゼータ イメージ

2018年3月25日、マーベル・コミック原作、アニメ版デッドプール(原題:Deadpool)』の製作が頓挫したという情報が入ってきた。マーベル・テレビジョンと米FXが共同製作してきた本作から、「創作上の相違」を理由にFXが離脱。マーベルがアニメ版の製作を続行するかどうかは不明だったが、どうやら状況はやや複雑なようである。
脚本・監督・プロデュースを務める予定だった俳優ドナルド・グローバーが、Twitterを通じて、そしてデッドプールの口を介して、アニメ版『デッドプール』製作中止の背景を語り始めたのだ。

ドナルドは『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(6月29日公開)など話題作に続々出演する新鋭俳優。ドラマ『アトランタ』(2016-)では自身がショーランナー(製作統括)を務め、脚本・監督・出演を兼任して高い評価を受けた。
アニメ版『デッドプール』は過密なスケジュールの中で製作されており、製作中止が報じられた際には、ドナルド自身が忙しすぎるのではないかとも推測されている。ただしドナルド本人は、「『デッドプール』が作れないほど忙しくはなかった」と記している(この投稿はのちに削除された)。

アニメ版『デッドプール』、驚愕の偽脚本

ドナルドがTwitterで公開したのは、アニメ版『デッドプール』の15ページにわたる脚本だった。「最終回(finale)」と題されたこの物語は、実際にアニメ化を想定して書かれたものではない、いわゆる“フェイク”のスクリプト。時事ネタがぎっしり詰め込まれたストーリーから、この脚本は2018年3月26, 27日ごろ(現地時間)までに執筆されたとみられる。

この「最終回」では、デッドプールがケニアに現れ、世界で最後の一体となったオスのキタシロサイ、スーダン(編注:2018年3月20日に死亡)を守ろうとするエピソードが描かれている。しかし脚本の後半、突如としてデッドプールはアニメ版の製作中止に言及し始めるのだ。草をムシャムシャするスーダンをよそに、デッドプールが一人で語り続ける、問題の場面を日本語訳でお確かめいただきたい。

アフリカ・サバンナ(昼)

スーダンは草をかじっている。デッドプールは木にもたれて座っている。

デッドプール: あのさ、俺ちゃんは今回の「中止」全部に怒ってるわけじゃないんだよ。実際いいことだと思ってる。暴力と銃が大好きで、テレビでわめいてる白人男性にとっては都合いいだろ? 大統領以外にもさ!

スーダン、かじり続ける。

デッドプール: これが「ラスト・ウィーク・トゥナイト」(編注:米国のテレビ番組)だったら、みんな笑ってるだろうな。(考え直して)拍手するかも。

スーダン、向き直ってツノを木にこすっている。

デッドプール: うん、わかってる。たぶん彼らはオモチャを売りたかっただけ。こんなスタイルのコメディはやりたくなかったんだ。「ハッハッハ、でも腹立つな」って感じ。わかってるんだよ。

スーダン、身体を揺すって、草をかじり続ける。

デッドプール: 番組が中止になったことをどう思う……人種差別のせいだって!?

スーダン、草をかじっている。

デッドプール: いや、でも脚本家は全員黒人だったし、扱ってたのも黒人がらみが多かったし。週に一回はランチにジャマイカ料理を注文できる予算を考えてたって聞いたぞ。

スーダン、食べている。

デッドプール: わかってるよ、ブラックパンサー。[少し間があって]もしかして、俺たち白人の視聴者を無視してたのかな? ……いや、ゴート・ヨガのエピソードも作ったし(編注:アメリカで流行した、ヤギと一緒にやるヨガのこと)。くそっ、じゃあなんだ?

さらに食べている。

デッドプール: ウソだろ、テイラー・スウィフトのエピソードのせい? 違う、違う。あの脚本は評価されるべきだった。

スーダン、離れていく。

デッドプール: おい、マジかよ!

デッドプール、起き上がって追いかける。

デッドプール: あのエピソードは最高だったって!

スーダン、見向きもせず歩きつづける。

デッドプール: なんだよ、マーベルについて言ったことがダメだった? マーベルは7歳の子供と50歳のロリコンにオモチャを売ろうとしてるって言っただけだろ。彼らは楽しいし、クールだし、わかってくれるよ。

スーダンはとにかく歩き続ける。

デッドプール: えっ、俺がバカだって? それでいいよ、スーダン。

スーダン、止まってカラフルな花をかじる。

デッドプール: 俺は何がしたいのかって!? なぜ中止になったのか、本当のことが知りたいんだよ。みんながたくさんデータを持ってれば、未来を予測できるのに。Google、Amazon、Facebookだけあればいい。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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