『ダンケルク』を日本唯一のIMAX次世代レーザーで観てわかった、109シネマズ大阪エキスポシティに行くべき理由

クリストファー・ノーラン監督による最新作『ダンケルク』は、これまで監督が採用してきたIMAXカメラ(IMAX 2Dフィルム・カメラ)を多くの場面で使用した作品だ。通常の35mmフィルムより圧倒的に高い解像度、その鮮やかさで観客を惹きつける映像で語られる物語は、『ダンケルク』が海外で封切られるや多くの映画ファンの度肝を抜いてきた。

しかしながらここ日本において、『ダンケルク』をノーラン監督の意図通りに(もしくは意図に最も近い環境で)観ることのできるスクリーンは(2017年9月現在)たったひとつしかない。1970年に日本万国博覧会が開催された会場の跡地である万博記念公園、その隣に建つ109シネマズ大阪エキスポシティ、シアター11である。

109シネマズ大阪エキスポシティの<日本で唯一>のIMAXR次世代レーザーは、クリストファー・ノーラン監督の意図したベストの映像で『ダンケルク』がお楽しみいただけます。IMAXR次世代レーザーは、日本最大級のビル6階分に相当する〝タテ18m、ヨコ26m〟の超巨大スクリーンに、4Kツインレーザープロジェクションシステムで最大1.43対1のアスペクト比で上映されます。これは、通常のシアターではカットされている映像が上下(垂直方向)に拡張し約40%広くなり、『ダンケルク』の大迫力の映像が巨大なIMAXRスクリーンを埋め尽くす驚愕の<フルサイズ>上映です。これが観ることが出来るのは、日本で109シネマズ大阪エキスポシティのみ!

<日本で唯一>『ダンケルク』IMAXR次世代レーザーについて – 109シネマズ | 109CINEMAS

2017年9月9日、『ダンケルク』の日本公開初日にORIVERcinemaはエキスポシティへと飛んだ

太陽の塔を横目に見ながら

109シネマズ大阪エキスポシティのある、大型複合施設「EXPOCITY-エキスポシティ-」は、大阪モノレール「万博記念公園」駅から歩いてすぐの場所にある。モノレールが駅に入ってくると、否応なく目に飛び込んでくるのは万博のシンボルである岡本太郎作「太陽の塔」。この日はあいにくの曇天だったが、その圧倒的な存在感は駅を出てもすぐそばに感じることができる。

cORIVERcinema

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駅を出るとやや長いスロープがあり、広場に出る。そこを左手に進めば「万博記念公園」、そこに鎮座ましますのが太陽の塔だ。遠方からお越しの場合は、ぜひ間近でその全貌を見上げてみてほしい。

その広場を直進すると真正面に見えるのがEXPOCITY、その中央前面に109シネマズ大阪エキスポシティは建っている。ちなみに背後には巨大ショッピングモール「ららぽーとEXPOCITY」があるので、映画の前後にはフードコートやレストラン街で舌鼓を打つこともできる。

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ついつい脱線してしまいがちだが、本記事はあくまで109シネマズ大阪エキスポシティで『ダンケルク』を観ることについてご紹介するものだ。今回は脇目もふらずに館内に入ったところ、ロビー天井付近には視界に収まりきらない『ダンケルク』巨大バナーが掲示されていた(画像に収まりきっていないが、この右側にもバナーは連なっている)。

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さらに館内には、ノーラン監督による直筆サインが入った『ダンケルク』IMAX 70mmフィルムプレートも展示されている(実物は回転している)。
なお公開初日である9月9日には、ロビーに延々と『ダンケルク』の劇伴音楽が流れており、予告映像でもおなじみの秒針の音が聞こえつづけていた。まさに「『ダンケルク』観に来たんでしょ?」と言わんばかりのおもてなし、上映時間が近づくにつれて人口密度を増していくロビー。もはやすでに戦場の空気だ……。

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エキスポシティの『ダンケルク』が見せる風景

恐縮ながら筆者は、公開に先がけること約1ヶ月、『ダンケルク』を試写会にて拝見した身である。したがって作品のストーリーや構造はあらかじめ理解していたわけだが、それでも自信をもってこう記さねばならない。
109シネマズ大阪エキスポシティで観る『ダンケルク』は、かつて観た『ダンケルク』とはまるで別の作品だった。天井から床まで壁いっぱいに広がった、視界に収まらない大きさのスクリーンに映し出される戦場は、かつて見たはずの光景とはまるで別物だったのである。

映画『ダンケルク』の特徴

109シネマズ大阪エキスポシティでの『ダンケルク』がどのような体験だったかを記す前に、まずはこの映画の特徴について簡単に振り返っておかなければならない。
『ダンケルク』は、第二次世界大戦中の1940年に起こった「ダンケルクの戦い」を描いたものだ。ドイツ軍によってフランス北端の港町・ダンケルクに追い込まれたイギリス・フランス連合軍の兵士40万人をいかに撤退させるか、という「ダイナモ作戦」が成功するまでの物語である。
しかし本作には、なぜそのような状況に陥ったのか、物語の舞台であるダンケルクの外側では何が起きているのか、ドイツ軍の動向は……そういった説明や要素がほとんど一切含まれていない。ノーラン監督が「映像で物語を語りたかった」と述べているように、背景の説明や登場人物のセリフがなるべく削ぎ落とされた作品なのだ。

もっといえば、『ダンケルク』は「ダンケルクの戦い」を陸・海・空の3視点から描いた“群像劇”であり、ずらされた時系列が鮮やかな構成で織り合わせられるストーリーだ。しかし本作は、「戦争とはなにか」「なぜ人間は戦うのか」ということを真正面から問いかける物語ではない。また、戦場やその周辺にいる人間同士の立場や心情がいかに絡み合い、その人間関係がいかに変化していくかという性質の“群像劇”でもない。3つの視点が絡み合うこと自体に人間ドラマとしてのエモーショナルな効果はほとんどなく、陸・海・空でそれぞれの人物がとにかく必死に頑張る、それだけに尽きるのである。

したがってスクリーンに映し出されるのは、ひたすら“その場”と“自分”しかない。いつ敵軍の戦闘機が飛来するかわからない海岸、燃料の残量を知ることすらできない戦闘機で飛ぶ空、そしてダンケルクへ向かって急ぐ民間船、そこに立っている“自分”だ。前述のように舞台の外側の様子が直接わかることはないし、ドイツ軍の兵士すら観客や登場人物の目には見えない。それでも、ただ危機だけが“その場”に忍び寄ってくる。

ノーラン監督は本作を「戦争映画ではなく、サバイバルの物語」だと形容している。まさしくその言葉通り、登場人物は“その場”を一生懸命に生きるしかない。降り注ぐ銃弾、爆弾、押し寄せる海水、得体の知れない人間そのものを相手にしながら、彼らは広い戦場をごく小さな個人として生きるのである。『ダンケルク』は、そうしたそれぞれの時間がスクリーンに立ち上がることで「ダンケルクの戦い」という出来事そのものを描き出していく映画だ。初めはバラバラだった時系列が少しずつ一点に結びついていく構造も、個人の生から出来事そのものへとフォーカスしていくストーリーテリングに深く繋がっている。

c2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

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IMAX次世代レーザーが映し出す「余白」

109シネマズ大阪エキスポシティでの『ダンケルク』が格別の体験となりうるのは、本作がまさに“その場”“自分”を映し出すことでストーリーを語る映画だからだ。視界に収まりきらないスクリーンには“その場”の風景と光、そこを生きている人間の表情が映し出され、場内には座席が震えるほどの戦闘機の轟音や波の音、それから秒針の音と音楽が鳴り響くことになる。

あえて言うならば、「通常のシアターでカットされる映像が上下に約40%広くなる」ということ自体は、『ダンケルク』という作品のストーリーを適切に理解する上ではなんら影響がない。作品を観て、その内容を理解することだけを考えるなら、わざわざエキスポシティを選ぶ必要はないのかもしれない。それでもエキスポシティのIMAX次世代レーザーに利があるのは、精緻に織り上げられたストーリーテリングからこぼれ落ちる風景がことごとく豊かになるという点だ。
たとえば海岸を歩く兵士たちを包む空や砂浜の広さが、戦闘機を操縦するパイロットの背後に広がっている雲やその眼下に広がる港町が、あるいは兵士でいっぱいになった船室の狭さと密度、その外側にある夜の海の暗さが、また突如として頭上に現れる戦闘機の轟音や銃声が、時に穏やかで時に激しい水の音が、それらすべてがダンケルクの風景として観客に迫ってくる。そしてそれらすべてが、ストーリーテリングには直接関係のないような“余白”も含めたすべてが『ダンケルク』という映画なのだ。圧倒的に豊かな余白を見ている時、観客もまた登場人物と同じく、その場に立ち会った「ごく小さな個人」になっている。

おそらくノーランの意図とは、観客をそうした各場面の風景に、もっといえばそれぞれの画面や音響に直接対峙“させる”ものだったのではないだろうか。対峙“できる”、没入する、といった生やさしいものではなく、暴力的なまでの映像と音響で観客を強制的にダンケルクへと送り込むこと。さながらその場に居合わせたかのように、ストーリー以外の部分に仕掛けられた余白へと観客を対峙“させる”ことだ。
そうした鑑賞体験は、確実に『ダンケルク』という作品が語る“ごく小さな個人の戦場体験”をより切実なものとして観客に体感させるだろう。やがてそのことは、作品全体が描き出す「ダンケルクの戦い」なるものの“解像度”をより高めることにもなる。そして、その効果が最も優れた形で発揮される場所は日本国内にエキスポシティしかないということなのだ。

最後に:映画監督クリストファー・ノーランのミッション

ところでクリストファー・ノーランという映画監督は、昨今世界的に浸透しているNetflixに対して批判的な人物だ。具体的には「オリジナル作品の劇場公開とストリーミング配信を同時にしなければならない」という配給ポリシーを、映画館の閉鎖にも繋がりうるものとして厳しく断じているのである。
現在最も影響力のある映画監督のひとりであるノーランの発言は、同じ映画監督や業界人、また映画ファンの間で大きく賛否が分かれた。「映画は映画館で観るもの、同意する」という者もいれば、「まるで時代遅れの考え方」と切り捨てる者もあったのだ。その背景には、“自宅の近くに映画館がない”という環境で暮らす大勢の映画ファンの存在があった。

c2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

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実際に、本作『ダンケルク』でも「IMAXでの鑑賞を推奨する」という論調には同じく賛否が分かれている。日本国内でIMAXシアターに足を運べない人、世界的にもノーランの望む環境で本作を観られない人は非常に多いことだろう。もちろんノーランもそれを理解しているからこそ、大画面・大音響ならば自身の企みをなるべく達成できる(理解できる)作品として『ダンケルク』を仕上げているのである。

さらにいえば、自身を「ホームビデオ世代」だと称するノーランがNetflixの価値を理解していないはずがない。エンターテインメントのありかたが多様化した今、映画をリビングルームで気軽に観られることの貴重さや、動画配信サービスが映画館で上映されない映画の受け皿になりうる現状もよく理解しているはずだ。そして彼は、自分自身ほど「好き勝手に大作映画を作ることができ、しかもそれが世界各地で上映される映画監督はいない」ということも自覚しているだろう。なぜなら海外のインタビューで、彼はインタビュアーから「あなたは作りたいものをなんでも作れていますよね」という言葉を正面から投げかけられているのである……。

そんな彼が、「映画は映画館に足を運んで観るもの」という思想を持ち、“映画館で観てもらう”ことにここまで強いこだわりを見せるのは自然なことだろう。大作映画を好きに作れる映画監督として、現在最も影響力のある映画監督として、彼は自分の生み出した作品に「わざわざ足を運んでもらう」というミッションを背負っているのではないだろうか。だとしたら、彼が自分の意図を体験してもらうには限界のある映画を発表しつづけることも理解できるような気がしてくる。

『ダンケルク』でノーランが目指したという「ゴーグルなしのバーチャル・リアリティ」と、いわゆる「バーチャル・リアリティ映像」の違いは、『ダンケルク』を観るためには物理的に大きな移動が必要だというところにある。すでに熱心な映画ファンは、『ダンケルク』をより優れた環境で観るため日本から海外へと足を伸ばしているし、9月9日には日本各地からエキスポシティへ映画ファンが集まったともいわれている。その風景は、きっとノーランがどこかで夢想していたものではないだろうか。

ちなみに109シネマズ大阪エキスポシティは、幸か不幸か、よほど近隣に住んでいないかぎり絶妙にアクセスしづらい場所に立地している。現地で『ダンケルク』を観る際には、ノーラン監督が意図した通りの映像体験を、ノーランが意図したであろう「わざわざ足を運ぶ」という体験とともにじっくりと味わってみてほしい。

109シネマズ大阪エキスポシティ
大阪府吹田市千里万博公園2-1 EXPOCITY内
公式ウェブサイトはこちら

Sources:?http://ew.com/movies/2017/07/18/christopher-nolan-dunkirk-feature/
http://jp.ign.com/movie/15730/news/netflix
ジョシュア・レヴィーン著 武藤陽生訳『ダンケルク』ハーパーコリンズ・ジャパン刊

About the author

1989年生まれ。THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはわかりづらいまま、少しだけわかりやすくしてお届けできればと思っております。

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