Menu
(0)

Search

『ダンケルク』を日本唯一のIMAX次世代レーザーで観てわかった、109シネマズ大阪エキスポシティに行くべき理由

ダンケルク レーザーIMAX
cORIVERcinema

そうした鑑賞体験は、確実に『ダンケルク』という作品が語る“ごく小さな個人の戦場体験”をより切実なものとして観客に体感させるだろう。やがてそのことは、作品全体が描き出す「ダンケルクの戦い」なるものの“解像度”をより高めることにもなる。そして、その効果が最も優れた形で発揮される場所は日本国内にエキスポシティしかないということなのだ。

最後に:映画監督クリストファー・ノーランのミッション

ところでクリストファー・ノーランという映画監督は、昨今世界的に浸透しているNetflixに対して批判的な人物だ。具体的には「オリジナル作品の劇場公開とストリーミング配信を同時にしなければならない」という配給ポリシーを、映画館の閉鎖にも繋がりうるものとして厳しく断じているのである。

現在最も影響力のある映画監督のひとりであるノーランの発言は、同じ映画監督や業界人、また映画ファンの間で大きく賛否が分かれた。「映画は映画館で観るもの、同意する」という者もいれば、「まるで時代遅れの考え方」と切り捨てる者もあったのだ。その背景には、“自宅の近くに映画館がない”という環境で暮らす大勢の映画ファンの存在があった。

c2017 Warner Bros. All Rights Reserved.
c2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

実際に、本作『ダンケルク』でも「IMAXでの鑑賞を推奨する」という論調には同じく賛否が分かれている。日本国内でIMAXシアターに足を運べない人、世界的にもノーランの望む環境で本作を観られない人は非常に多いことだろう。もちろんノーランもそれを理解しているからこそ、大画面・大音響ならば自身の企みをなるべく達成できる(理解できる)作品として『ダンケルク』を仕上げているのである。

さらにいえば、自身を「ホームビデオ世代」だと称するノーランがNetflixの価値を理解していないはずがない。エンターテインメントのありかたが多様化した今、映画をリビングルームで気軽に観られることの貴重さや、動画配信サービスが映画館で上映されない映画の受け皿になりうる現状もよく理解しているはずだ。そして彼は、自分自身ほど「好き勝手に大作映画を作ることができ、しかもそれが世界各地で上映される映画監督はいない」ということも自覚しているだろう。なぜなら海外のインタビューで、彼はインタビュアーから「あなたは作りたいものをなんでも作れていますよね」という言葉を正面から投げかけられているのである……。

そんな彼が、「映画は映画館に足を運んで観るもの」という思想を持ち、“映画館で観てもらう”ことにここまで強いこだわりを見せるのは自然なことだろう。大作映画を好きに作れる映画監督として、現在最も影響力のある映画監督として、彼は自分の生み出した作品に「わざわざ足を運んでもらう」というミッションを背負っているのではないだろうか。だとしたら、彼が自分の意図を体験してもらうには限界のある映画を発表しつづけることも理解できるような気がしてくる。

『ダンケルク』でノーランが目指したという「ゴーグルなしのバーチャル・リアリティ」と、いわゆる「バーチャル・リアリティ映像」の違いは、『ダンケルク』を観るためには物理的に大きな移動が必要だというところにある。すでに熱心な映画ファンは、『ダンケルク』をより優れた環境で観るため日本から海外へと足を伸ばしているし、9月9日には日本各地からエキスポシティへ映画ファンが集まったともいわれている。その風景は、きっとノーランがどこかで夢想していたものではないだろうか。

ちなみに109シネマズ大阪エキスポシティは、幸か不幸か、よほど近隣に住んでいないかぎり絶妙にアクセスしづらい場所に立地している。現地で『ダンケルク』を観る際には、ノーラン監督が意図した通りの映像体験を、ノーランが意図したであろう「わざわざ足を運ぶ」という体験とともにじっくりと味わってみてほしい。

109シネマズ大阪エキスポシティ

大阪府吹田市千里万博公園2-1 EXPOCITY内

公式ウェブサイトはこちら

Sources:?http://ew.com/movies/2017/07/18/christopher-nolan-dunkirk-feature/

http://jp.ign.com/movie/15730/news/netflix

ジョシュア・レヴィーン著 武藤陽生訳『ダンケルク』ハーパーコリンズ・ジャパン刊

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly