『ダンケルク』最新予告編から読み解く「陸海空」の3視点と、緊迫を生む「時計の針の音」の仕掛け

鬼才クリストファー・ノーラン監督による話題の最新作『ダンケルク』より、日本語字幕が付いた新たな公式予告編が解禁となった。この映像では、陸海空3つの視点から戦場の緊迫を描いており、『ダンケルク』のストーリーがあらゆる視点で同時進行していく物語であることを示唆している。
https://youtu.be/yZvHuuhXDJE
先に本国プロモーションで公開された映像から読み取れる本作の見所(構成、テーマ)と、史実『ダンケルクの戦い』、予告編に登場する戦闘機の解説は既にこちらの記事でご紹介した通りだ。
https://theriver.jp/dunkirk-main-trailer/
今回は、この予告編映像で描かれている陸海空の3つの視点から想像できるドラマと出演者、見どころについてご紹介したい。
陸:フィオン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズ
映像では、彼らが息切れしながら街を駆ける様子や、絶望とも憤りとも取れぬ表情で浜辺に呆然と座り込む様子が確認できる。おそらく登場人物らの中でも最も”純粋”または”無知”に近い立場で描かれるであろうこの若者たちの視点を通じて、僕たち観客は戦地で巻き起こる狂気と不条理さに振り回されるのだろう。
海:マーク・ライアンス、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー
今作は、海峡でドイツ軍に包囲されたイギリス・フランス連合軍の40万人の兵士たちを命がけで救出する史実を描くもの。陸空でのストーリーが海上での戦いに集結してくと考えられるだろう。
映像内でジョージと呼ばれる青年を民間船に乗せ「招集がかかった」「戦場へ行くぞ」と発している男性は、ディズニー✕スピルバーグ監督作品『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』の巨人を演じたことも記憶に新しい、ベテラン舞台俳優のマーク・ライアンス。
そして、海軍将校と見られる衣装に身を包み、険しい表情を見せているのは1989年公開の『ヘンリー五世』でアカデミー監督賞及び主演男優賞にノミネートされた経歴を持つシェイクスピア俳優、ケネス・ブラナーだ。
さらに、船内で激昂しているのは『ダークナイト』三部作のジョナサン・クレイン / スケアクロウ役、『インセプション』ロバート・フィッシャー役とノーラン作品代表作でもおなじみのキリアン・マーフィー。民間船による援助作戦指示に抵抗の様子を見せており、劇中では複雑な人物として描かれそうである。
空:トム・ハーディ
空軍のパイロットとして登場するのは、『インセプション』イームス役、『ダークナイト ライジング』 ベイン役と、ノーラン作品ではおなじみのトム・ハーディ。『ダンケルク』は陸海空の3視点から物語が進行すると見られることから、特定の主人公といった概念は存在しないようだが、過去のノーラン作品における役どころや本映像で見られる立ち位置、そしてトム・ハーディ自身の知名度を省みても、事実上の主人公またはそれに準ずる重要な役どころとして登場することは明らかだ。
本映像では全体を通じて絶体絶命的な”絶望感”を煽るような印象だが、トム・ハーディは映像の最後にも「空軍はなぜ来ない!」のセリフを受けて勇ましく登場。ドイツ軍の戦闘機と緊迫のドッグファイトを見せていることから、英雄的なキャラクターとして描かれることが期待できる。
緊迫感を生む時計の針の音
『ダンケルク』予告編は、とにかく観るもの全員に恐怖と不安を感じさせる緊張感溢れる映像になっているが、その演出に大きく貢献しているのは背後に流れる時計の針の音だろう。
ノーラン作品と時計の針の音といえば、『インターステラー』(2014)にて、『ダンケルク』の印象同様に水平線の彼方まで海が一面に広がる”ミラーの星”の場面でも象徴的に使用されていたことを思い出す人も多いのではないだろうか。重力の影響を受ける”ミラーの星”では時間の進み方が異なり、1時間が地球の7年に相当する。針の音は”ミラーの星”でのタイムリミット付の緊迫感を演出するのに一役買っていた。
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