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【ネタバレ】『アベンジャーズ/エンドゲーム』ラストシーン解説 ─ ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯の◯◯に込められた思い

アベンジャーズ/エンドゲーム
MARVEL/PLANET PHOTOS 写真:ゼータイメージ

ダンスとキャプテン・アメリカの盾

アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストにおいて、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカは、サノスとの激闘を終え、残された任務に着手する。過去から集めてきた6つのインフィニティ・ストーンを元々あるべき場所へ返すため、一人で量子の世界へと入っていくのだ。バッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーやサム・ウィルソン/ファルコンと言葉を交わし、キャプテン・アメリカは過去へと消えていく。しかしブルース・バナー/ハルクが呼び戻しても、マシンの上に姿は現れなかった。

3人が湖のほとりに目をやると、ベンチには痩せた老人が一人で座っていた。バッキーがサムに目配せすると、サムは老人のもとへ歩いていく。そこには年老いたスティーブ・ロジャースの姿があり、その薬指には指輪が光っていた。「自分の人生を生きるのもいいかなと思ったんだ、トニーが言ってくれていたように」。戦いを終えたキャプテン・アメリカは、最後の任務を終えたあと、かつての時間で年を重ね、再び戻ってきたのだ。スティーブの隣には、サノスに破壊されたはずのキャプテン・アメリカの盾。サムが盾を手に「他人のものみたいだ」と口にすると、スティーブは「君のものだよ」と一言。結婚生活を尋ねられるも、スティーブは「それは言わないでおこう」と微笑んだ。

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1940年代のものと思しき車が道路を駆け、一軒の家からは音楽が聴こえてくる。家の中では、スティーブ・ロジャースとペギー・カーターが静かにダンスをしていた。流れているのは、1945年に発表されたハリー・ジェームズの楽曲「It’s Been A Long, Long Time」。戦争から帰ってきた恋人や夫に、ひとりの女性が語りかける歌だ。

キャプテン・アメリカの結末、最初から決まっていた

『アベンジャーズ/エンドゲーム』を手がけたアンソニー&ジョー・ルッソ監督、そして脚本家のクリストファー・マルクス&スティーブン・マクフィーリーにとって、スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカというキャラクターは特に重要な存在だった。ルッソ兄弟は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)でマーベル・シネマティック・ユニバースに参入し、マルクス&マクフィーリーも『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』(2011)以来、キャップの物語を書き続けてきたのである。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(c)2018 MARVEL

脚本家のマクフィーリーは、米New York Timesにおいて、この結末を当初から決めていたことを明かしている。「一番最初にあらすじを書いた時から、スティーブにはダンスをしてもらおうと思っていたんです」。当時の彼は、キャラクターへの思い入れが深すぎるゆえ、それが脚本家としてふさわしい判断なのか、ただのファンサービスにすぎないのかが分からなくなりつつあったそうだ。

「もちろんキャラクターにとって良いことだと思ってはいましたが、みなさんの見たいものを見せているだけかもしれない。良いことだったのかは分かりません。だけど、僕はすごく満足しているんです。スティーブは自分の使命を果たすために、自分の人生を先送りにしてきた。だから僕は、(『エンドゲーム』で)彼を死なせるつもりなんて全くありませんでした。それは彼の物語の結末じゃない。ついに彼が自分の盾を置けるようになる、それが彼の結末なんです。」

前作『インフィニティ・ウォー』(2018)の結末で人々が仲間や家族を失ったあと、スティーブはグループセラピーにおいて、“先へ進もう”と人々に訴えかけていた。しかし本人がナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウに打ち明けていたように、スティーブ自身は全く先へ進めていなかったのだ。キャプテン・アメリカとしての務めと、スティーブ・ロジャースとしての思いが必ずしも一致しなかったのは、思えば『インフィニティ・ウォー』以来だけではなかっただろう。それでもスティーブは、長年にわたって、ひたすらキャプテン・アメリカというヒーローとして生きてきたのである。

トニー・スターク/アイアンマンがすべてを投げうってサノスとの戦いを終わらせたあと、彼は残された仕事に取り組み、ついにスティーブ・ロジャースとしての人生に目を向ける。ようやく彼も、先へ進めるようになったのである。

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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