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【全私が震撼した】罪の意識を問う、実在する犯罪一家を描いた『エル・クラン』全然シャレにならなかった解説レビュー

母親:エピファニア:会計学の教師

長男:アレハンドロ:ラグビーインターナショナルチーム所属

次男:マギラ:元羊飼い、外国にいたものの途中で帰国する

三男:ギジェルモ:学生、気弱だけど思い切った事をする

長女:シルビア:美術教師

次女:アドリアナ:学生、ある理由でヘッドフォンが手放せない

 

誘拐一家と名付けられているが、実際に犯行を行っていたのは父親、長男、次男であり、他の家族は事件に直接関与しているわけではない。

しかし、母親と長女は「家族のため」と黙認、人が運ばれていく様子を見てしまった三男は気が動転して海外に逃げ、家族との縁を絶った。次女のアドリアナは、何かが起きていると薄々気づきつつ、やはり事の実態は分からず、時折聞こえる叫び声に怯えきって常に耳にヘッドフォンをつけていた。 

映画は彼らの家に警察が押し入り、逮捕する場面から始まる。次女や長女は泣き叫び、長男は呆然としていた。

さて、今作で我々はこの家族全員の“罪の意識”について考えさせられる事となる。

不思議なカメラワークが表すものとは

父親アルキメデス、長男アレハンドロの2人の目線で描かれるこの映画の特徴のひとつとして挙げられるのが、カメラワークだ。酷く揺れたり、ぐるぐると回ったり、ズームインアウトが激しいかと思ったら、ひどくぼやけたピントで写ったり……少し酔ってしまいそうになるほど不安定なカメラワーク。これは、長男の心情を表している

チームメイトが殺されたと聞いた彼が、最後の一人となってロッカールームを去るシーンは、まるで彼の気が遠くなって行く事を表すかのように、ぼやけていく。

新しく出来たガールフレンドとのセックスシーンは、父親が犯罪をする様子と交差して描かれていて、まるで脳裏にある犯罪意識を払拭するかのように激しく画面が動く。

http://wyborcza.pl/
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しかし一方アルキメデスの目線で物事が映されているときは、カメラワークが非常に安定している。これは、アレハンドロと違い、彼が犯罪行為を行っている際に落ち着いていることを表していると言えるのではないだろうか。

追い詰められた長男の精神崩壊を目の当たりにする

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事件は、長男アレハンドロがラグビーのチームメイトの友人に家まで送ってもらっていた際に銃を持った男達に襲われた事ではじまる。チームメイトはトランクに押し込められ、自分は助手席に放り込まれたアレハンドロ。そこで、その誘拐犯が父親だった事を知る。

身代金を目的とし、金を受け取った後は無事に友人を送り届けると言う事だったので黙っていた彼は、後にその友人が射殺体で発見された事を聞いてショックを受ける。父親は彼に、「あの男の子はお前が事件に関与していると薄々気づいていた、だから仕方なく仲間が撃ったんだ」とあくまで自分が撃ったわけではないと説明。そしてその後、アレハンドロは父親の仕事を手伝う羽目になってしまう。

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そんな中、自身で開店したサーファーショップで、可愛い女の子モニカと出会い恋人になる。彼女と接する裏では父の仕事を手伝い、彼の中で善悪の戸惑い、罪悪感がふくれあがっていく

そんな彼の精神崩壊が印象的に描かれているシーンがある。深夜に一人、自身の店で商品の検品をしている際に酸素ボンベをおもむろに取り出し、激しく吸い始める。まるで、ようやく酸素を得て呼吸が出来たかのように。

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彼が三男のように逃げ出す事が出来ず、犯罪に加担する事をすぐにやめられなかったのは何故なのか。

 家庭内で独裁政治を続行、恐怖の父親アルキメデス

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軍事独裁政権を信じていたアルキメデスが、政権が転覆した事に不満を持っていた事は明らかだ。だからこそ、軍事政権が傾きはじめた頃に、身を案じて資産家の誘拐をはじめた。しかも、身代金を要求する際家族には、被害者が無事だと話している裏で、さっさと殺害している。冷酷非道極まりない男なのだ。

Writer

ANAIS
ANAIS

ライター/編集者/Ellegirlオフィシャルキュレーター、たまにモデル。ヌーヴェルヴァーグと恐竜をこよなく愛するナード系ハーフです。

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