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『オッペンハイマー』は「アルゴリズムには理解できない映画」だとエミリー・ブラント ─ 「大嫌いな言葉です」

オッペンハイマー
© Universal Pictures. All Rights Reserved.

『オッペンハイマー』はアルゴリズムには理解できない映画」──。同作で“原爆の父”と呼ばれた理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーの妻キャサリンを演じたエミリー・ブラントが、現在のハリウッドにおけるアルゴリズムによる意思決定を批判した。

新作映画『フォールガイ』(8月16日公開)のプロモーションで、ブラントは主演のライアン・ゴズリングとともに伊Vanity Fairに登場。ともに長いキャリアを有するふたりが、自らの実感する業界の変化について尋ねられた際、ブラントは「新しいものには苛立つこともありますよ。たとえばアルゴリズムとか」と答えたのである。

「大嫌いな言葉です。どうして(アルゴリズムを)芸術やコンテンツに結びつけられるのか、成功するかしないかを任せてしまえるのか。例を出して説明すれば、私はひとりの物理学者を描いた3時間の映画に出演し、その作品にはインパクトがあったわけですが、それはおそらくアルゴリズムには理解できないと思います」

クリストファー・ノーラン監督『オッペンハイマー』は、たしかに近年の映画界でも異例のケースだった。R指定かつ上映時間3時間の伝記映画が、全世界興行収入9億7,000万ドル以上の大ヒットを記録したのである。まさかこれほどのビジネス的成果を残し、しかも数々の映画賞に輝くとは、製作・配給のユニバーサル・ピクチャーズも当初想定していなかっただろう。

オッペンハイマー
© Universal Pictures. All Rights Reserved.

ブラントは「私の望みは、『オッペンハイマー』のようなプロジェクトが(アルゴリズムによって)異常と判断されないこと。クリエイティブな経験を図式化するのをやめることです」と語った。その言葉の裏側には、映画スタジオが確実なヒットを求めるばかりに、ビジネス面での賭けになかなか出ようとしない現状を危惧する思いがあるのだろう。

また、ゴズリングは「アルゴリズムには誰も勝てない、そのことが逆に自分を人間らしくさせ、“手づくり”のプロジェクトを選ばせるんです」と述べている。『フォールガイ』もまた、自分が惹かれた“手づくり”の企画なのだと。「個人的な経験や、自分たちの方法と物語に基づくプロジェクト。僕たちが役柄に力を尽くしたプロジェクトです」

Source: Vanity Fair, Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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