【インタビュー】『F1/エフワン』過酷撮影の裏「筋肉ガチガチ、Gで首がやられる」 ─ 製作ジェリー・ブラッカイマーに訊いた

──近年、『フォードvsフェラーリ』(2019)や『グランツーリスモ』(2023)といった本格的なレース映画が登場しました。これらとの違いや、参考にした部分、意図的に避けた要素について教えてください。
意図的に避けたもので言うと、加工されたものですかね。『フォード vs フェラーリ』も本物志向だったと思いますが。本作は全てが本物です。ダムソンとブラッドは本物の車に乗り込み、時速180マイルで走っています。過酷な撮影でした。
──世界各地で行われるレースの一つ一つを通じて物語が展開されます。場面が切り替わるごとに物語が断絶されないようにするのは難しかったですか?
そうですね。本作にはソニーの旅を通じた、一貫したテーマがあります。若い頃に過ちを犯し、あまりにも大胆だった男が、どのように贖罪を果たすのか、どのようにこの世界に戻ってくるのか。彼の復帰は望まれていませんでした。
ハビエル・バルデムが演じるキャラクターは、若い頃に彼と走った男であり、今では自分のチームを所有している。最下位のチームで、勝たなければチームを失う。そしてレースはあと9回ある。さて、どうする?それが本作のドラマです。
ブラッドは世界中どんなレースであっても、走りを愛している。常にチームを向上させてくれる。だからハビエル・バルデムは彼を招き入れた。さて、どうなるのか?映画を観て確かめてください。

──前作『トップガン マーヴェリック』同様、対立していた二つの世代が信念を共有することで絆で結ばれる物語が描かれました。トム・クルーズとマイルス・テラーのように、ブラッド・ピットとダムソン・イドリスを主体にしたのはなぜですか?
異なる関係性が描かれています。今作での二人は競争相手です。それがF1®というもの。チームメンバーであっても競い合うのです。そこにドラマがあり、スポーツの精神があります。
──ブラッド・ピットら役者たちがF1®の操縦を覚えていくプロセスはどのようなものでしたか?『トップガン マーヴェリック』での学びが応用できたことや、また初めての挑戦があれば教えてください。
全てが新しいチャレンジでしたが、確かに技術面では応用が効きました。本作では新しいテクノロジーを開発していて、例えばカメラをリモートでパンできる技術。これによって、顔のアップから走り去る車へと移動できるようになりました。これは『トップガン』の時にはなかったものです。そのために、トラックの周辺にアンテナを設置しました。
こうした新技術に加えて、ソニーが本作のために特別なカメラを開発してくれました。そして、本作にはAppleの協賛も入っています。彼らもiPhoneカメラを改良し、2台のレースカーのために提供してくれました。本編では、実際にルイスやマックスが運転する映像も使われていますが、その視点は時速200マイルで走行しています。
──この映画を通じて、F1®ファンには何を伝えたいですか?そして、F1®を知らない観客にはどんな入り口を用意したと思いますか?
私たちがやろうとしたのは、普遍的な贖罪とチームワークの物語を取り入れて、それを作品全体に織り込むことだったと思います。そして、それこそがF1®なんです。F1®というのは、ものすごいチームワークで成り立っているんです。
レースを見ていても、あなたがF1®についてあまり知らなかったり、かつての私のように関心がなかったとしても、ピットクルーやモニターを見ている人たちは目に入りますよね。でも実は、その背後にはイタリアなどに1,000人もの人たちがいて、彼らがこの車を支えているんです。
彼らは車を“自分たちで”作っています。エンジンだって自作で、しかも毎週のように改良を重ねている。つまり24時間体制で、この車をレースに間に合わせているんです。
だから今回の作品では、そういう舞台裏に目を向けてみたかったんです。私は以前から、“自分が普段は立ち入ることのない世界の内部”を見せる作品を作るのが好きだと言ってきました。それがどう動いているのかを見せることに意味があると思っている。
それは、戦闘機パイロットを扱った作品でも同じでしたし、『CSI:科学捜査班』をやったときもそうでした。観客は、実際の捜査官たちが何をしているのかを見ることができた。今回も同じです。観客をその世界に引き込んで、感情のこもった物語と、ユーモアや印象的な瞬間を届けることができればと思っています。

私たちは『ブラインド・プレビュー』という形式の試写を行っています。観客には何の映画を観るか一切知らせずに来てもらうんです。上映後、20人ほどのフォーカスグループで意見を聞きます。
最初の質問は、『F1®のレースについて事前に知っていた人はいますか?』というものでした。手を挙げたのは、たった1人だけ。次に、『F1®に興味がありますか?レースに行きたいと思いますか?』と聞いたところ、全員が手を挙げました。
ある女性がこう言ったんです。『正直に言うと、席に座って“F1®の映画です”って言われたとき、私はF1®にまったく興味がなかったし、何も知らなかったから帰ろうかと思った。でも、……