【インタビュー】『F1/エフワン』過酷撮影の裏「筋肉ガチガチ、Gで首がやられる」 ─ 製作ジェリー・ブラッカイマーに訊いた

ある女性がこう言ったんです。『正直に言うと、席に座って“F1®の映画です”って言われたとき、私はF1®にまったく興味がなかったし、何も知らなかったから帰ろうかと思った。でも、最後まで観て本当によかった。すごく気に入ったし、友達にも観るように勧めるつもりです』と。
つまり、F1®のことを何も知らなくても、レースに興味がなくても、ブラッド・ピット、ハビエル・バルデム、ダムソン・イドリス、ケリー・コンドンといった俳優たちが、“最高の体験”を観客に届けてくれるんです。
──『トップガン マーヴェリック』と異なり、F1®はスポーツなので、勝敗があります。また、『トップガン』よりもチームプレーの要素が強化されていました。スポーツの美しさはどのようなものだと思いますか?また、それを表現することの醍醐味を教えてください。
勝者はひとりだけ。たったひとり。でも、誰もがその“ひとり”になりたくて、みんなそのために努力する。ただし、チームワークがあれば、全員が“勝者”になれるんです。たとえ勝ったのがひとりでも、みんながその勝者を支えていて、みんなでその喜びや歓喜を分かち合えるんです。

──『トップガン マーヴェリック』と同様に、この映画も撮影手法の面で限界を押し広げているように感じます。あなたは先ほど、技術を開発したという話もされていましたが、もう少し詳しく教えていただけますか?
すべて断片的に撮影していったんです。ブラッド(・ピット)やダムソン(・イドリス)を実際に車に乗せて、同じシーンを何度も何度も繰り返し撮った。 彼らはF1®の実際のドライバーたちよりも多く運転していたと思います。というのも、レース自体はだいたい1時間半くらいですが、私たちのレースシーンの撮影では、彼らは合計で8〜10時間も車に乗っていたんです。
これはかなり過酷でした。俳優たちは身体を鍛えるだけでなく、筋肉をほぐすためのマッサージも欠かせなかった。体がガチガチになるんです。 運転していないときも、体力維持のためにトレーニングしていました。G(重力加速度)の影響で首がやられてしまうからです。
だから、この撮影プロセスは俳優にとって本当に大変でした。でも、高速で走りながら台詞を言うとなると、演技をしていることを忘れないようにしないといけない。
印象的な話があります。ジョー(監督)が話してくれたんですが、ベルギーのサーキットに『オー・ルージュ(Eau Rouge)』という急勾配のカーブがあるんです。ここは非常に危険なコースで、坂の先が見えないままカーブに入るんです。もし前方で車が止まっていたら、一巻の終わりです。
で、ブラッドが実際にその坂を運転して走り抜けたとき、あまりの達成感に笑顔になっていた。 でもジョー(コシンスキー監督)は、『ブラッド、このシーンでは笑っちゃダメ!この場面では不安そうじゃなきゃ』と注意していましたよ(笑)。そんな感じで、彼らは本当に楽しんでたんですよ、車を運転すること自体を。
素晴らしい質問をありがとう。よく準備してくれたね。

映画『F1®/エフワン』は大ヒット公開中。
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