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【インタビュー】『F1/エフワン』実際のサーキットで「夜中に15分だけ撮影許された」 ─ 「この映画を楽しむのにF1知識は不要」ジョセフ・コシンスキー監督に訊いた

F1/エフワン
© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

『トップガン マーヴェリック』のジョセフ・コシンスキー監督とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが再タッグを組み、今度は舞台を空から地上のサーキットに移した白熱の映画『F1®/エフワン』が公開中だ。『トップガン』と同じように、ブラッド・ピットら役者たちが本物のF1®レースカーの操縦を学び、車体やコックピットにカメラを取り付けて実際の走行シーンを撮影した。

ブラッド・ピットが演じる主人公は、かつて“天才”と呼ばれた伝説の F1®レーサー、ソニー。誰よりもレースの過酷さを知る男が現役復帰を果たしたのは、どん底の最弱チーム。しかし、型にとらわれないソニーの振る舞いに、自信家のルーキードライバー・ジョシュア(ダムソン・イドリス)やチームメイトたちは困惑し、度々衝突を繰り返す。バラバラのチーム、そして、最強のライバルたち。敗北が濃厚となる中、ソニーの“常識破りの作戦”が最弱チームを導いていく。

本物のF1®レースの合間に撮影を敢行したという驚きのエピソードや、『トップガン マーヴェリック』から発展させたこと、新たなる挑戦。THE RIVERでは、ジョセフ・コシンスキー監督とジェリー・ブラッカイマーにそれぞれ単独インタビューを行い、この驚愕すべき作品の背景を詳しく聞いた。

この記事では、ジョセフ・コシンスキー監督へのインタビューをお届けする。

映画『F1®/エフワン』ジョセフ・コシンスキー監督 単独インタビュー

──監督が手がけた前作『トップガン マーヴェリック』同様、対立していた二つの世代が信念を共有することで絆で結ばれる物語が描かれました。トム・クルーズとマイルス・テラーのように、ブラッド・ピットとダムソン・イドリスを主体にしたのはなぜですか?

『トップガン マーヴェリック』はどちらかというと親子関係で、本作は、世代こそ違えど、二人のライバル関係を描いています。映画冒頭で、二人はかなり対立しています。F1®の魅力は、チームメイトがしばしば最大のライバルになり得る唯一のスポーツということです。そこがこのドラマの素晴らしい出発点であり、彼らが歩み寄って、最終的にはチームの勝利のために協力し合う方法を見つけ出す姿が描かれます。

F1/エフワン
配給:ワーナー・ブラザース映画

──F1®という実在の競技とのコラボレーションには、ロジスティック面も含めて多くの困難があったと思います。F1®界との交渉や協力体制で特に印象的だった出来事は?

一番難しかった撮影はラスベガスですね。ストリートトラックではなく、一時的なものだったから、コースが数日しか存在しなかった。だからブラッドもダムソンも、練習ができなかったんです。唯一おこなった練習はシミュレーターだけ。あのシーンで撮影が許されたのは、真夜中の15分間だけでした。とても寒く、タイヤのグリップも弱まり、非常にスリップしやすい環境だった。壁もギリギリのところにある。おそらく、本作で最も危険なシーンでした。それを15分だけでやり遂げた。だから、あのシーンはとても誇りに思っています。短い時間でやり切りました。

──F1®は非常に速いスポーツですが、その「速さ」を観客に“体感”させることは簡単ではありません。映像設計において、スピードをどう見せるかという点で特にこだわった演出はありますか?

まず、ブラッドとダムソンが実際に操縦する本物の車を使っているということ。映画用の車両、撮影用の小道具ではありません。F1®のメルセデス・チームと共に開発した、本物のレースカーです。それから、ソニーが本作のためだけに全く新しいカメラシステムをプロトタイプ開発してくれました。非常に小型で高機能なカメラを車体のあちこちにマウントし、ブラッドやダムソンが運転している間ずっと撮影しています。そのおかげで、まるで一緒に車に乗り込んでいるような感覚が得られるのです。

F1/エフワン
© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

──近年、『フォードvsフェラーリ』(2019)や『グランツーリスモ』(2023)といった本格的なレース映画が登場しました。これらとの違いや、参考にした部分、意図的に避けた要素について教えてください。

本作は現代的なF1®映画です。その2作はF1®が題材という訳ではありません。私はF1®がこのスポーツの最高峰だと思います。そして本作では、世界中を旅しながら本物のレースを撮っています。あるトラックを別のトラックとして作り直すことをしていません。シルバーストーンからハンガリー、モンツァ、ラスベガス、そしてアブダビへと、実際に旅をしています。この仕事を毎日こなしている本物のドライバーたちやチームの代表者たちが自分自身の役で登場しているというのは、本作ならではです。

──『トップガン』と違い、F1®はスポーツであり、そこには勝者と敗者があります。そして、本作ではチームの絆がより重要に描かれています。スポーツの美しさや、その表現について最も楽しかった部分について教えてください。

そうですね、チームとして力を合わせれば、不可能なことも成し遂げられるということ。本作ではそんな物語が描かれています。そこがスポーツの美点でもある。本作の撮影でも、そのことを感じました。僕たちは、まるで世界を旅するF1®チームでした。フィクションと現実の境界線が、面白い形で曖昧になっていきました。劇中のチームのように、本作を完成させることで、不可能を可能にできたような気持ちです。

F1/エフワン
© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

──レーサーたちがレースに挑む過程や、レース中の精神状態、その表現方法について、どのようなものを求めましたか?

ルイス・ハミルトンから非常に重要なことを教わりました。彼は、レース前の準備がどのようなものであるか、どれだけ重要なものかを見せたかった。F1®には心理的な要素もある。彼らはオリンピック選手のようにトレーニングします。車が身体にどれだけ大きな負担やストレスを与えるかについては、あまり気付かれていない。彼はそこを伝えたかったのです。それからメンタルでの準備についても。ブラッドのキャラクターが、レースの前に本を読んで、非常に複雑なステアリングホイールにおけるタイヤ戦略や、コースコンディションを勉強していますが、そういった姿を見せるのはルイスのこだわりです。彼は、一つのレースにどれだけの労力が費やされ、ドライバーたちを支えるために裏でどれだけたくさんの人が動いているのかを示したかったのです。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から企画制作・執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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