【インタビュー】『F1/エフワン』実際のサーキットで「夜中に15分だけ撮影許された」 ─ 「この映画を楽しむのにF1知識は不要」ジョセフ・コシンスキー監督に訊いた

──この映画を通じて、F1®ファンには何を伝えたいですか?そして、F1®を知らない観客にはどんな入り口を用意したと思いますか?
伝えたかったのは、セカンドチャンスや友情、贖罪、チームワークといった、誰もが共感できるエモーショナルな物語。だから、F1®ファンには映画を分析するだけでなく、ただ楽しんで、体験して欲しいです。この映画はドキュメンタリーではなく、物語ですから。それから、F1®のファンでない人たちにも理解してもらえたら嬉しい。この映画を楽しむのに、F1®のことを知っておく必要はありません。私も何も知りませんでした。技術的なことを学ぶことはできるけど、それよりも大切なのは、弱小チームが団結して世界最強チームに挑んでいくというストーリーに夢中になってもらうことです。観た人の人生に響くような刺激のある映画になっていれば嬉しいです。

──本作を鑑賞した本物のF1®レーサーたちからの賛辞の言葉を聞いて、どう思いましたか?
すごく安心しました。ドライバーの皆さんはとても優しくて、彼らの仕事にお邪魔させていただくことに非常に寛容でした。だから、彼らには完成した映画を是非とも気に入っていただきたかった。そして、少なくとも彼らの頭にあるものを正しく表現できたこと、スピードをとらえることができたこと、車に乗っている感覚をとらえることができたこと、そして彼らの生きる世界の一端を見せることができたことを、とても嬉しく思いました。

──本作では本物のF1®レースの現場で撮影されました。映像演出において、リアリズムと映画的ダイナミズムのバランスはどのように取ったのでしょうか?
とても難しかった。通常であれば、一つのシーンを撮影するのに数時間や数日を使うことができる。でも今回は、数分しか撮影が許されなかった。だから、キャストもクルーも万全の準備を整える必要があって、もはや舞台のようでした。非常に短い時間で、一発で成功させなければいけませんからね。だから、今までにないような挑戦でした。だからこそ、あのライブ感がスクリーンでも感じられると思います。観客も本物、車も本物、本当にF1®を観戦しているようなエネルギーに満ちています。
──ブラッド・ピットら役者たちがF1®の操縦を覚えていくプロセスはどのようなものでしたか?『トップガン マーヴェリック』での学びが応用できたことや、また初めての挑戦があれば教えてください。
『トップガン』の時同様、トレーニングには何ヶ月もかかるとわかっていましたから、今回は4ヶ月のトレーニング期間を組みました。ブラッドとダムソンはまずスポーツカーから始めて、最終的に映画で運転する車へと辿り着いていった。非常に早くてパワフルなレースカーです。それに彼らは、運転しながら撮影もこなさなければいけない。車載カメラシステムによって視界も遮られるから、ほとんど目を瞑ったまま運転できるようになるまで、コースについても覚える必要があった。正直、彼らがやってのけたことには驚愕しますよ。

映画『F1®/エフワン』は大ヒット公開中。