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「ファンサービスは毒」『ミッション:インポッシブル』マッカリー監督 ─ 「とても強いスパイスのようなもの」

ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング 記者会見

「ファンサービスは毒だ」と、『ミッション:インポッシブル』シリーズのクリストファー・マッカリー監督はいう。トム・クルーズ主演、長年の大ファンを世界中にもつ人気シリーズを手がけながら、あえてそう断言する背景には、独立したストーリーテリングへのこだわりがあった。

ポッドキャスト「The Filmmaker’s Podcast」に登場したマッカリーは、「観客が過去作を観ていることは想定しないし、また観ておくようにも求めません。それを当然のことだとは思わない。ファンであることを前提にはしないのです」と語った。

「ファンサービスは命取りになりえます。とても強いスパイスのようなもので、うまく使うぶんには素晴らしい。たまたま別の映画を観ていたならいいけれど、それを当てにはしません。(ファンサービスは)観客に、現在の物語から離れて別の物語を思い出し、そしてまた戻ってくるよう求めるもの。とても危険なことです。」

ここでマッカリーが問題にしているのは、別の映画や物語との間につながりを作ることのリスクだ。そこで参照している“別の物語”を観ていたとしても、その観客は目の前で展開している物語を一時的に離れてしまう。もしも観たことがない観客なら、自分の知らないことがあるのだと映画の途中でいきなり気づかされることになる。

マッカリーは、「どちらの場合でも物語は混乱し、つながりが断ち切られてしまいます。映画の最初のフレームから作り上げてきた、意識の流れが途切れてしまうことは避けられません」という。

ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
©2024 PARAMOUNT PICTURES.

クルーズから大きな信頼を受けるマッカリーは、『トップガン マーヴェリック』(2022)にも共同脚本・製作として参加した。同作が成功を収めた要因について、「(物語の)つながりがほんの些細にしか途切れるず、ほとんど一瞬で物語に引き戻されるから」ではないかと分析した。

「観客は映画の世界に引き込まれ、何が起きているのかを考えなくてもいい。考えてほしくないのではなく、考えるのは映画が終わってからでいいのです。私は観客に、映画を観るために作業をしてほしくないのです。映画を観ながら作り手の意図を感じたり、理解したりすることもありますが、それは必ずしも“感じて”いるのではなく、頭の中で組み立てているだけ。“うまくつながっていないけど、言いたいことはわかるよ”と。

それを自分がしてしまったら、想像力の欠如だと思います。自分を無理やり通すようなことをしてはいけない。観客に作業をしてもらい、しかもその経験にお金を払わせるわけだから。映画を見ているときは、ただ感じてほしい。“映画を見る”という努力をしてもらわないで済むように、私たちは懸命に仕事をしているんです。唯一努力してほしいのは、映画を観ながら呼吸を忘れないようにすることだけです。」

奇しくもマッカリーの最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』はシリーズの集大成ともいうべきストーリー。果たしてマッカリーは、自分自身の掲げたハードルを乗り越えられたのか──その答えは劇場で確かめてほしい。

映画『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は5月17日(土)〜22日(木)先行上映、23日(金)公開。

Source: The Filmmaker’s Podcast

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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