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ニフラー飼いたいな。クリーチャー好き必見!ハリポタ新ユニバース第一弾『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』大満足レビュー

作り込みが徹底された、あの世界に迷い込む映像体験

今作の時代背景は、ハリー・ポッターたちが活躍した年代、われわれが生きる現代ではなく、1920年代の『狂騒のニューヨーク』。時系列は前シリーズのプリクエルということになります。大戦が終わり、新たな時代へ世界全体が活動的に蠢きはじめている、そんなかびすましいアメリカを舞台に、風来坊の魔法使いと、夢見る青年と、そして過去を抱えたヒロインが、暗躍する闇の力と合いまみえるお話です。今作もまた、前段で並べたクリーチャーの他にも、衣装や建造物など、世界観の構築に余念がなく、このシリーズの最大の魅力である『異世界に入り込んでしまった』という映像体験を十二分に楽しむことができます。

『ファンタスティック・ビースト』の暗黒演出について

今作の監督は、ハリー・ポッターシリーズの後期4本のメガホンを執ったデヴィッド・イェーツ。脚本はJ.K.ローリング自らが書き下ろしで手掛けています。ちょっと苦言を言わせて頂くと、ハリー・ポッターシリーズの特に後期、ちょうどデヴィッド・イェーツさんが監督した4作のあたり、作品のトーンがとにかくダークになっていき、もちろん原作の内容に準じてのことなので、ローリング女史の作家性とも言えますが、人間の悪意の描き方が、子供も鑑賞する作品としてちょっとどうかと思うレベルへ達してしまっていました。触れる側にビビッドに伝わってしまう映像メディアゆえに、そこは監督の腕でうまいこと中和すべきではなかったかと思うのですが、今作にもちょっと、納得がいかない暗黒演出が2箇所ほどありました。

ネタばれになるので詳しくは書きませんが、一つは主人公とヒロインが、逮捕され、命の窮地に陥る場面、あの部屋に入ってから、ピケットが活路を作り出すまでの演出はいただけません。死の恐怖を紛らわすための、偽りの善意はひどく禍々しく映り、あまり子供に触れてほしいものではないと思います。

もう一つは、物語の鍵となった不幸な人物の末路です。あの人物を救ってこそ、魔法動物を愛し救って世界中を旅している風変わりな主人公の『ヒーローとしての立ち位置』が確立したのではと、思います。あと、もうちょっとバトルで魔法動物たちならではの能力を活かした演出してほしかったな。あれだけ前半で振り回されたニフラーが、その金ぴかの物を好むという性質を活かして敵から急所となる大事なアイテムを盗む!みたいな場面があったらさらに良かったのに、とまあこれは完全に余計な事ですかね。

なんでもこのファンタスティックビースト、三部作の予定でしたが、ローリング女史の筆が乗るのか5部作に変更と、女史本人が明言しています。結局ああだこうだ言ってしまいましたが、新たなハリー・ポッター・ユニバース、その幕開けとして、素晴らしいスタートを切ったと言えるのではないでしょうか。アメコミ映画の隆盛におされて、ちょっと大人しくなっていたファンタジー映画ジャンル、その大河シリーズが始まったという点でも非常に好ましい快作だと思います。

Writer

アクトンボーイ
アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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