【ネタバレ】『ファンタビ』最新作、ダンブルドアからのアノ伝言は『007』オマージュなのか? ─ ジュード・ロウに訊いてみた

この記事には、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』のネタバレが含まれています。

ドイツ行きの列車途上にて
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』では、シリーズ前2作から雰囲気を変え、まるで世界を股にかけて繰り広げられるスパイ映画のような、スピード感ある群像劇が展開されていく。「より大きな善のために」という危険思想を掲げるグリンデルバルドを倒すべく中心となるのが、主人公ニュートがダンブルドア先生と結成したデコボコチームだ。
チームが各自の役割のために離散する前、ダンブルドアから任務を託されたニュートは列車でメンバー一人ひとりに個人的な指示を与える。『007』シリーズを彷彿とさせるようなセリフをニュートが口にしたのは、彼の助手・バンティに対する指示を与えたとき。指示内容が記された手紙を渡しながら、ニュートはこう言うのだ。「君しか見てはいけない」と。字幕版では、「ユア・アイズ・オンリー」という表現が用いられていた。
『007』ファンであればきっと思い浮かべるであろう、「ユア・アイズ・オンリー」といえば、1981年に公開されたロジャー・ムーア主演の映画『007/ユア・アイズ・オンリー』を彷彿とさせる。この映画の原作となったイアン・フレミングの短編集『バラと拳銃』に収録されている一編『読後焼却すべし(For Your Eyes Only)』では、上司のMから内密に非公式任務を依頼されたジェームズ・ボンドがミッションに乗り出すという、やや特殊な物語が描かれた。
Mをダンブルドア、ボンドをバンティに置き換えると、その後の展開は『ユア・アイズ・オンリー』のプロットと見事に重なるわけだが、果たしてこれは意図的なオマージュだったのか。それとも偶然の産物だったのか。以下が、ジュード・ロウの回答だ。
「日付(訳註:そのセリフが言われた)を見ると、彼の方が最初にそれを言ったんだよね(笑)。つまり、実際のところアルバス・ダンブルドアが『007』をインスパイアしたってことだ(笑)。」
察しの通り、華麗にスルーされてしまった。もっとも、あくまでフィクションの世界に留まれば、ジュード・ロウの言っていることは正論となる。『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』の舞台は1930年代前後なので、ダンブルドア先生が「ユア・アイズ・オンリー」というメッセージをニュートに託した時、原作者のイアン・フレミングはまだ『007』を生み出す前なのだ。もう少し想像力を働かせると、偶然同じ列車に乗り合わせていたフレミングがニュートの言葉を聞いて、小説の参考にしたという世界線になるだろうか。
魔法界で絶大な影響力を持つダンブルドア先生、まさかスパイ小説の金字塔である『007』にも影響を与えていたとは、と思いたいところだが、これはあくまでジュードのジョーク。思えば、『007』の「ユア・アイズ・オンリー」というタイトル自体、実際の現場で用いられる隠語から着想を得たものであるから、本当に単なる偶然の産物なのかもしれない。
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は公開中。