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マーベル社長の語る「映画館がなくならない理由」 ─ 「アメフトもテレビ観戦できるのに、雨が降ってもみんなスタジアムに行くだろう」

Kevin Feige / ケヴィン・ファイギ
Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kevin_Feige_(28556369381).jpg

映画業界は2020年の新型コロナウイルス感染拡大で最も大きな影響を受けた業界のひとつだ。劇場の興行収入成績も随分回復してきた感覚があるが、調査によると北米での2022年公開作品すべての累計興収は、コロナ前(2019年)対比で未だ33%減となっている。

2020年当時、業界にはもっと悲壮感が漂っていた。ステイホームのお供として動画ストリーミングサービスの普及が加速し、「このまま劇場文化は潰えてしまうのではないか」という焦燥感があった。飛ぶ鳥を落とす勢いのマーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギも、そう危惧した一人だったようだ。米Podcast番組で、こんなことを語っている。

「名前は言いませんけど、ある方たちとZoomで話をしていたときに、“この状況はなくなるんだろうか?映画ビジネスはなくなってしまうんだろうか?”と相談したことがあったんです。

すると、とても賢い方がこう言ったんです。“そんなことはない。でも(元どおりになるのに)数年はかかるだろう”と。その方は、3年はかかるっていうんですね。で、この話をしてから、実際にもうすぐ3年が経ちます。状況が良くなるまで3年かかるって言われて、私は“それはひどいな。半年くらいで良くなってほしい”と思ったものですが、全くあの賢い方の言う通りだったってことですね。」

新型コロナの世界的な感染拡大が始まってから間もなく3年が経つ。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』コロナ禍以降初めての累計興収20億ドル達成が象徴するように、映画興行はようやく本格的に再生を始めている。ファイギが話した賢人の予見した通りだ。

「それから、その方はこんなことも言っていました」とファイギは続ける。

「僕はスポーツ愛好家ではないですけれど、その方は“フットボールの試合なんて誰でもテレビで観戦できるはずのに、何百、何千、何万という人が、たとえ凍えるように寒くても、雨が降ろうとも、いまだに毎週末スタジアムに詰めかけるだろう。たくさんの人たちが、車を運転して、駐車場に止めて、ビールやホットドッグにお金を使いすぎてさ。なぜなら、その共有体験っていうのが、人間には必要なものだからだよ”とも言いました。

そういうわけで、私の今後への見通しはとても明るいです。もちろん、たくさんの変化や混乱はあると思います。それでも、人は映画館にいたいし、泣きたいし、歓声を送りたいし、みんなで笑いたい。このホリデーシーズンにはそういうものが見られましたし、新年も、それがどんどん続いて、大きくなっていけばいいなと思います。信じられないことに、“劇場の凋落”についての評論を見たことがあって、“ハイハイ、またこんなこと言ってるのか”と思ったんですが、よく見たら1928年7月のVariety誌の記事でしたよ」。

パンデミックによる世界的な自粛期間中、多くの映画人が劇場の必要性を唱えた。例えばスティーブン・スピルバーグは次のように語っている

「映画館では、人生の中で大切な人たちと映画を観る一方で、知らない人たちとも観ます。これこそ、私たちが映画や演劇、コンサート、コメディを観に行く時に経験する魔法なのです。周りに座っている人とは知り合いではありません。けれど、笑ったり泣いたり、喜んだりじっくり考えたりして、それから明かりが点いて席を立つ時、現実の世界へ共に向かう人々はもはや完全に知らない人ではないのです。心と精神が繋がったような、何であれ数時間の力強い経験を共有したような、1つのコミュニティとなるのです。」

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Source:The Movie Business Podcast

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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