Menu
(0)

Search

【ネタバレ特集】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ミステリオ、監督&脚本家が完全解説 ─ ジェイク・ギレンホールはいかに演じたか

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
© 2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: © & ™ 2019 MARVEL.

この記事には、映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のネタバレが含まれています。すでに作品を鑑賞された方向けの内容となりますのでご注意下さい。なお、このページをSNSにてシェア頂く際は、記事内容に触れないようお願い致します。


いかに脚本家は「どんでん返し」を構築したか

それにしても、イメージ先行で選ばれたとはとても思えないほど、クエンティン・ベック/ミステリオの物語はよく練られている。ピーター&ベックの共闘から変貌、仕掛けられた罠によって虚実の境目が曖昧になっていく後半の展開、「人は何かを信じたいんだ」という台詞などでメッセージをあぶり出していくクライマックスまで、ミステリオの抱える“真実と嘘”というテーマが全編を貫いているのだ。コミックでは“映画業界で働く特殊効果のスペシャリスト”という設定のベックを、巧みに現代にアップデートしてみせた工夫にも驚かされるだろう。

脚本家のクリス・マッケナ&エリック・ソマーズは、米ComicBook.comにて、ミステリオをめぐるストーリーの開発秘話をたっぷりと明かしている。しかしコミックの設定は、やはりそう簡単に翻案できるものではなかったようだ。ソマーズは「スタントマンからいきなりマジシャンになる、そんなキャラクターをどう扱えばいいのか…」と苦悩を語り、マッケナも「怖かったですよ、全力を尽くしました」と述べた。ポイントになったのは、キャラクターの本質をきちんと見定めることだったという。

マッケナ「あれこれ試してみて、結局はコミックのミステリオに近いところに戻したんです。詐欺師であり、最後にはスパイダーマンを悪党に仕立て上げようとする、ということですね。そこを頼りにしながら、できるかぎり現実的に描き、MCUの過去も使わせてもらいました。」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
SPIDER-MAN: ™ FAR FROM HOME

特殊効果のスペシャリストから、最新テクノロジーを駆使する“ヒーロー”へ。ホログラムとドローンを駆使してフェイクを具現化するというアイデアは、「できるかぎり現実的に」というリアリティの観点でいえばギリギリのラインを攻めているようにも思えるが、ワッツ監督は米Entertainment Weeklyにてこう語っている。

ワッツ「(ミステリオの技術は)ARやホログラフィック・プロジェクター、ディープフェイク(人工知能による画像合成技術)といった現代のものに明らかに通じますよね。ミステリオのやったことすら可能にも思えるところまで、すでに私たちは来ているんです。そこに強く惹かれました。」

ともかく、こうしてミステリオというキャラクターの軸足は定まった。マッケナは「ミステリオが詐欺をすると決まったら、次は、“ベックはピーターから何をだまし取るのか”でした」と話す。ベックの目的は、自分が新たなヒーローとして君臨すること。そのために彼が求めたのは、トニーの技術の粋を集めたイーディス・システムだ。ネットワークにアクセスしてあらゆる通信を傍受し、敵を容易に殺害できるほどのパワーを持つそのシステムを、トニーは後継者に託していた。

マッケナ「イーディス・システムをサングラスに搭載するのは監督のアイデア。つまり、サングラスを一種の王冠のように扱うわけです。しかもそのサングラスはピーターには合っていない。その事実を知っている詐欺師は、ピーターに王冠を脱いでもらう、つまりサングラスを外してもらわなくてはいけません。そして、ピーターは自分からサングラスを手渡すことになる。古典的な詐欺の手法ですよ。なるべく早く詐欺を成功させるには、恋愛あるいはブロマンスがいいんです。」

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

ベックはピーターの葛藤に寄り添い、高校生としての日常に浸りたい感情にも理解を示す。二人はエレメンタルズとの戦いを通じて絆を深めていった。炎のエレメンタルズ、モルテンマンとの戦いで自分の身を差し出したベックを見て、そしてバーにて言葉を交わして、ピーターは“後継者”にふさわしいのは自分ではなくベックだと確信するのだ。それがベックの芝居であることを、その時のピーターはまだ知らない。ファイギ社長はこう語る

ファイギ「(兄弟のような関係は)“ミステリオは絶対に悪役だ、コミックでも悪いヤツだから”という単純なところに持っていかないため、そして、さらにつらい展開にするためです。どんな展開になるのかをある程度知っていたとしても、二人が良い関係だと思うほど、後からつらくなりますよね。」

ピーターからサングラスを譲り受けた途端、ベックは豹変する。二人が訪れていたバーでさえも、実はベックがホログラムによって作り出した虚構だったのだ。ベックは協力者であるチームのメンバーに賛辞を述べ、正体と目的を自らつまびらかにしていく。

マッケナ「バーのシーンで映画の方向が変わることは分かっていました。執筆しながらバーのシーンを思いついたんです。モルテンマンとの戦いの後、ベックがピーターを誘い出すのがいいなと思っていました。そして、すべてが明らかになる。あの場面に向けて、あらかじめ用意しておいた要素を、すべて自然な形に織り上げていきました。」

ソマーズ「脚本の構造的にも同じです。秘密が明かされ、想定外の事実がわかる。そうしたら、できるだけ速やかに観客を巻き込んでいかなくてはいけません。この男は本当は何者なのか、本当の目的は何なのか。バーのシーンは、すべて効率的かつ面白い内容に思えましたね。」

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。国内舞台作品の執筆・創作にも携わっています。ビリー・アイリッシュのライブに行きたい。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Comment

Ranking

Daily

Weekly

Monthly