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【ネタバレ無しレビュー】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は『エンドゲーム』飛び越える面白さ ─ 3つの主題、鮮やかにまとめ上げる

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
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『エンドゲーム』から地続きの面白さ

まず、『エンドゲーム』という怪物のような作品の直後にやってくる作品として、本作は全く文句の付け所がない。『エンドゲーム』は過去作全ての要素を織り交ぜながら、夢の共演を幾重にも重ねて見応えを作ったが、『ファー・フロム・ホーム』はそれに次ぐ、または匹敵するレベルの衝撃を「話や新設定、新キャラクターの面白さ」で生み出している。『エンドゲーム』と立て続けに観ても見劣りしないだろうか、そんな心配は全くの杞憂だ。


本作は、『指パッチン』の影響を初めて一般社会目線で解き明かす必要があった。大勢の人が突然灰になって消えるとは、日常生活から見てどういう感じなのか。5年後に突然戻ってきたとき、世の中にどういう影響が現れるのか。フェイズ3の「大トリ」としてMCU史上最大の事件の直後を描くことは、すなわちMCU史上最大のプレッシャーを抱えるということでもある。しかしジョン・ワッツ監督やケヴィン・ファイギは、これをMCU史上最大の利点に変えてみせたのだ。『ホームカミング』でも見せた爽やかなコメディの要素を取り入れながら。

一方で、シリアスな影を落とすのがトニー・スタークの死だ。プロデューサーのエリック・キャロルが本作の中に「彼(トニー・スターク)は確かに存在します」と説明していたのは全く正しい。だからこそ、「本当にトニーはいなくなってしまったんだ」というショッキングな事実が改めて胸に染みる。前作まではピーターに対して無愛想だったハッピーが、ピーターと(そして観客と)同じ目線でトニーを偲ぶ姿には、虚無感を思い知らされる。本作は、アイアンマン/トニー・スタークと、そのファンに捧げられた部分も大きい。

エレメンタルズとミステリオ、新たな脅威とヒーロー

新たな脅威エレメンタルズと、新ヒーローのミステリオを交えたアクションも大迫力。「前作ではスパイダーマンの愛すべき理由を忘れさせないため、意図的に小規模にしていた」「今作でも等身大のトーンは変えずに、アクションのレベルは派手に押し上げました」と自信を語っていたジョン・ワッツ監督には拍手を贈りたい。火水風土の主要元素からなるエレメンタルズの襲来は見どころ満載。その性質上、水や熱風が吹き出す体感型劇場との相性は抜群だろう。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
SPIDER-MAN: ™ FAR FROM HOME

ミステリオことクウェンティン・ベックは、自分の地球でエレメンタルズによって全てを奪われたことで、このクリーチャーたちの退治に強い責任を感じているヒーローだ。ジェイク・ギレンホールが演じたことで、知性と影のある奥深いキャラクターになっている。空を飛び回って、緑の光線を放つ頼もしい姿もスクリーンによく映える。マルチバースが開かれた今、こうした新たなヒーローが続々と登場できることを思うと胸躍らされるばかりだ。

ピーター・パーカーの成長、愛と青春

ピーターの成長劇と、ジョン・ワッツのセンスが光るドラマ部分も楽しい。『ファー・フロム・ホーム』のピーターは町内レベルの「親愛なる隣人」に留まっていたいと願っている。これはトニーにそう諭されたためというより、『インフィニティ・ウォー』『エンドゲーム』で未曾有の状況を目の当たりにして現実を知ったためだろう。ヒーローになりたがっていた前作『ホームカミング』の対比も興味深い。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

ヒーローとして世間から求められる立ち回りにもすっかり疲れたピーターは、スパイダーマンを休業して普通の高校生として夏休み旅行に出かけることになる。ここで本作は、青春ロードムービーとしてキラキラ輝き始める。ピーターは、謎めいた雰囲気が魅力的なMJ(ゼンデイヤ)にすっかり片思いしていて、この旅行でチャンスを掴もうとずっとソワソワしている。ド直球に甘酸っぱい青春劇は、ヨーロッパのあちこちを旅しながらドキドキの展開を迎えていく。トム・ホランド、ゼンデイヤ、そしてジェイコブ(親友ネッド役)は本作の最初からバッチリ息が合っていて、ティーン同士の微笑ましくてくすぐったい恋愛ドラマを絶妙なコンビネーションで紡ぐ。

そんな中、突如として「夏休みが、ニック・フューリーに支配される」のだ。アベンジャーズなき今、新たな脅威への対抗手段の確立に急ぐフューリーは、ピーターに「さあスーツを着ろ」と迫る。さらにハッピーからは、生前のトニーが直々に選んだ後継者が自分なのだと知らされる。抱えきれない”大いなる責任”に、ピーターはたじろぐ。普通の高校生であろうとする願いと、ヒーローとして求められる重い役割との間で揺れ動く姿が見どころだ。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム

スパイダーマン/ピーター・パーカーというキャラクターの本質的な面白さとは、常に「悩んでいる」というところにあって、本作のピーターも存分に悩んでいる。劇中ではその苦悩を克服していく様子が描かれるわけだが、これが『ホームカミング』よりも格段に味わい深く、悲哀と覚悟、そしてカタルシスに満ちている。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、『エンドゲーム』の「その後」を舞台に、異世界から現れたエレメンタルズやミステリオといった大きな新要素を加えながら、かつピーターの成長物語とヨーロッパをめぐるロードムービーという主軸を貫いて、見応えたっぷりにまとめ上げた作品だ。『ファー・フロム・ホーム』の作品としての価値をないがしろにするつもりはないが、「これを観なければ『エンドゲーム』とフェイズ3は真の完結を迎えない」といった性質も大きい。腰を抜かすようなサプライズもお楽しみに。『エンドゲーム』並にネタバレ厳禁の作品だ。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、2019年6月28日(金)世界最速公開。

映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』公式サイト:http://www.spiderman-movie.jp/

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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