映画『ファイト・クラブ』が「インセル」から神格視されたのは「私の責任ではない」とデヴィッド・フィンチャー監督

反社会的な思想を抱く若者たちを描いた映画『ファイト・クラブ』は、そのマスキュリニティを助長するような内容から、“インセル(Incel)”(異性との恋愛経験の欠如や、意に反した禁欲を女性のせいと考える過激派の男性たち)から絶大な支持を得た。英The Guardianでは、作品を手がけたデヴィッド・フィンチャー監督が本件について言及し、「私の責任ではない」と語っている。
1999年公開の『ファイト・クラブ』は、不眠症に苛まれながら空虚な生活を送っていたエリートの青年(エドワード・ノートン)が、タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)という男らしさ溢れ出る謎の男と出会ったことから、生活を一変させていく物語。公開直後の興行成績は良くなかったものの、DVDリリースを皮切りにカルト的支持を得ていった。
『ファイト・クラブ』は先述の通り、製作陣の意図しない解釈や影響を右寄りの人間たちにも与えてきた。2023年9月には、カナダのメディアVICEが、白人至上主義を謳う男たちが世界各地で出現し、“アクティブ・クラブ”なる組織を立ち上げているという記事を掲載。記事内では、『ファイト・クラブ』の男たちを彷彿とさせるような、筋骨隆々の男たちがネオナチの旗を掲げている写真が確認できる。
フィンチャー監督は、主人公に過激思想を植え付けていったタイラーに触発された人々に対し、「彼ら自身を定義する上で基準の一つになっているのでは」としながら、「私たちは彼らのために作ったわけではないです」とコメント。一方、「人はノーマン・ロックウェルの絵画や(ピカソの)ゲルニカに、自分たちが見るものを見ます」とも続けている。
「私には、タイラー・ダーデンがネガティブな影響を与える存在だということを理解できない人がいるなんて想像できません。理解できない人々にどう対応し、どう救うことができるのかはわかりません。」
反対の姿勢を一貫して見せるフィンチャー監督。The Guardianによれば本件について尋ねられた際、「わずかに腹を立てた様子だった」という。「人がどう解釈するのか、私には責任がない」とも述べ、距離を置いてはいるようだが、思いがけない影響を快く思っていないのは確かだ。
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Source:The Guradian,VICE