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『ファースト・マン』未公開シーン解説 ─ アームストロング家を襲った火災とは

ファースト・マン
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人類史上最も過酷なミッションに挑んだ宇宙飛行士ニール・アームストロングを描く映画『ファースト・マン』が切り取るのは、1961年から1969年までの物語。その中でも、映画では描かれなかった重要なエピソードがあった。ニール・アームストロングの次男であるマークは、この出来事を是非本編に加えてほしかったと言う。THE RIVERに語った。

映画では描かれなかった火災

実はアームストロング家は、NASA訓練時代の1964年に自宅を火災で焼失している。火元は、湿気でたわんでめくれ上がった羽目板を業者が修理した際に、電線に打ち込んでしまっていた釘。これが原因でショートし、わずなか漏電が数ヶ月蓄積して引火した。

深夜3時の火災だったが、隣家のエド・ホワイト(映画ではジェイソン・クラークが演じた)がフェンスを飛び越えて消火に駆けつけた。生後10ヶ月の赤ん坊だったマークはニールに抱えられて脱出。続けてニールは、長男リックの救出のため燃え上がるわが家に突入した。地球からはるか384,400キロ、月への旅路を経験したニールさえ、「息子を助けるまでの25フィート(約7.6メートル)は人生の中で最も長い旅路だった」と語っている。マークは、本編には反映されなかったこのエピソードについてTHE RIVERに語った。

「あの時、私はまだ生後10ヶ月の赤ん坊でした。真夜中のことでした。家族の写真も、母ジャネットが残していたカレンの形見もほぼ全て焼失しました。私達にとって重大な出来事でしたから、その出来事は是非映画でも描いて欲しかったですね。」

ニールがとっさに取った勇敢な行動と、エド・ホワイトら近所の友人や住民たちの助けもあり、アームストロング家は飼い犬”スーパー”君も含め全員が無事だった。しかし残念ながら、カレンの姿も残った大切な家族写真などを失ってしまう。映画の原作となった伝記『ファースト・マン 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生』(河出文庫)によれば、ニールはこの火事で「少年時代に大事にしていた飛行機模型のコレクションを始め、飛行機の図面や設計の詳細をぎっしり書き込んだノートや、苦労してやっと手に入れたお金を持って、ブレイディングズ・ドラッグストアなどで毎号買い続けた航空雑誌も失った」という。

実はこのシーンは実際に撮影もされており、2018年6月に米公開された予告編映像(上動画)にも含まれていた。ライアン・ゴズリング演じるニールが燃え上がるわが家を前に絶叫し、妻ジャネットが幼い子ども二人を抱きかかえている姿を確認することができるが、本編からはカットされている。エド・ホワイトの妻パット役で本シーンの撮影にも加わったオリヴィア・ハミルトンは「良いシーンだった」が、「私だったとしても(本編に)入れていなかったと思う」と振り返っている

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Source:Digitalspy,『ファースト・マン 初めて月に降り立った男、ニール・アームストロングの人生(上)』河出文庫、ジェイムズ・R・ハンセン著、日暮雅通・水谷淳 訳

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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