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『アナと雪の女王』のCG技術、「死の山」ディアトロフ峠事件の研究に役立てられていた

アナと雪の女王2
Supplied by LMK / ©Walt Disney Studios / 写真:ゼータ イメージ

1959年にソビエト連邦の雪山で起こった謎の怪死事件、通称「ディアトロフ峠事件」の真相に迫った研究に、ディズニー映画アナと雪の女王(2013)の映像技術が役立てられていたことがわかった。米National Geographicが伝えている。

「ディアトロフ峠事件」とは、1959年2月2日にソ連・ウラル山脈を登山中の男女9名が謎の死を遂げた事件。“死の山”を意味するホラート・シャフイル山で発見された遺体は、テントから遠く離れた場所で、マイナス30度という極寒の中、衣服をほぼ身に着けておらず、裸足で発見された。9人中2人は頭蓋骨を骨折、1人は舌を失い、遺された衣服からは高濃度の放射性物質が検出されている。生存者ゼロ、謎めいた条件が重なりすぎたゆえに、この事件はいまだ真相が明かされていない。

もっともロシア連邦は、2020年、本件について「雪崩が原因だった」との見解を発表。2021年1月には、Communications Earth and Environmentにて「小さな雪崩が原因だった」との論文が掲載されている。この研究に『アナと雪の女王』(2013)の映像技術が役立てられたのだ。

論文の著者は、スイス連邦工科大学チューリヒ校のアレクサンダー・プズリン氏と、スイス連邦工科大学ローザンヌ校で雪崩のシミュレーション研究を主導するジョアン・ゴウム氏。二人は分析モデルとシミュレーションから事件当時の再現に挑んだが、その過程で『アナと雪の女王』に注目したという。

調査から遡ること数年、ゴウム氏は『アナと雪の女王』で雪の動きが見事に表現されていたことに衝撃を受け、いかにして雪を描いたのかをアニメーターに取材しようと決意。雪の描写に携わった専門家に会うべくハリウッドを訪れたのち、『アナと雪の女王』のアニメーション技術にシミュレーション用の調整を加え、雪崩が人体にいかなる衝撃をもたらすのかを分析した。

『アナと雪の女王』の技術と、米ゼネラル・モーターズ社による1970年代の実験を基にして、プズリン氏&ゴウム氏はひとつの結論に至っている。事件当時の条件であれば、わずか5メートルぶんの雪で人間の肋骨と頭蓋骨が折れてしまうことが証明されたのだ。もちろん、説明のつかない点はいくつも残されている。なぜ9人はテントを離れたのか、なぜ衣服を着ていなかったのか、放射性物質の真相は……。

ゴウム氏は、この研究は事件のすべてを明らかにするものではなく、ディアトロフ峠事件が真に解明されることはないだろうと見ている。この研究は、現実に起きたことを合理的に解説しようとしたものなのだ。宇宙人の攻撃、ソ連による陰謀という珍説さえある本件については、2018年にルポルタージュ『死に山:世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』(河出書房新社)も邦訳されて話題となったほか、数々のフィクション/ノンフィクション作品に取り上げられている。

Source: National Geographic

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。外部寄稿に『TENET テネット』『ジョーカー』『シャザム!』『ポラロイド』劇場用プログラム寄稿など。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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