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『アナと雪の女王2』新名曲「イントゥ・ジ・アンノウン」は「自分自身に問いかける歌」 ─ 制作チームが誕生秘話明かす

アナと雪の女王2
(C)2020 Disney.

『アナと雪の女王』(2013)の大ヒットを支えたのは、耳に残る劇中歌「レット・イット・ゴー(Let It Go)」だった。その続編である『アナと雪の女王2』で、その役目を担う新たな代表曲が「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに(Into the Unknown)」だ。前作に続いてエルサ役のイディナ・メンゼル(吹替版は松たか子)が圧倒的な歌唱力で魅せるこの曲は、いったいどのように生まれたのか。

「イントゥ・ジ・アンノウン(Into the Unknown)」

『アナと雪の女王2』の大きなテーマである“変化”を象徴する一曲が、エルサの歌う「イントゥ・ジ・アンノウン」だ。前作に続いて劇中歌を手がけたロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペスは、米Vanity Fairにて、歌に託された役割を率直に明かした。

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

クリステン「『イントゥ・ジ・アンノウン』という曲は、エルサが自分自身に大きな問いを投げかける歌です。自分は何者なのか、真の居場所はどこなのか。この曲は映画で非常に重要な役目を担っています。変化のきっかけなんですよ。」

ロバート「エルサは初めて、歌の中で自分の求めていることを言えるようになります。そして隠喩的にも、実際にも、より大きい世界への第一歩を踏み出す。彼女の成長や、責任を引き受けることを象徴する曲なのです。」

FreshFiction.tvにて、音楽プロデューサーのトム・マクドゥーガルは、「イントゥ・ジ・アンノウン」の制作プロセスそのものが特別だったと述べている。まずはジェニファー・リー(脚本・監督)とクリス・バック(監督)をはじめとする脚本家チームがストーリーを固め、場面の要素がきちんと明らかになってから、それらを音楽に起こしていく作業に入ったというのだ。

劇中歌を作るにあたって、ロバート&クリステンは監督たちと毎日のように電話で話し合っていたという。米Colliderの取材では、ロバートが「考えていたのはいつもストーリーのこと」と言えば、クリステンは「見事な脚本と魅力的なストーリーなくして曲は作れませんでした」と言い切る。

「“電話を切って曲を作ってもいいですか? 1~2日のうちにまた連絡します”と言えるのが一番良いことなんです。続編のプレッシャーも感じましたが、すごく楽しかったのはストーリーが刺激的だったからだし、それが私たちをピアノに向かわせて、ストーリーの核をどうやってつかむかを考えさせてくれたんです。」

アニメーションが語る「イントゥ・ジ・アンノウン」

『アナと雪の女王2』のストーリー部門を統括したノーマンド・ルメイ氏は、エルサが「イントゥ・ジ・アンノウン」を歌い上げるシーンについて、その特徴をこう語る。

「何かがエルサを苦しめる。彼女を呼ぶちょっと不気味な声は、ほかの誰にも聞こえないんです。それがエルサを悩ませるし、彼女は何度もその声を聞くことになります。多くのミュージカルアニメなら、メインキャラクターが“私はこうしたい”と歌うのを聴けるところです。けれどもエルサはそうじゃなくて、むしろ逆のことをやる。彼女は(自分の思いを)解放しないようにと努めるし、本当の気持ちを、深いところにある疑問を遠ざけているんです。」

もちろん、エルサの内面を語るのは楽曲だけではない。エルサが「イントゥ・ジ・アンノウン」を歌う場面では、スクリーンに何が映っているのか、そして“何にエルサが映っているのか”がポイントだ。ルメイ氏の解説を聞いてみよう。

聞こえる声は、エルサの思いを解放させようとしています。だから鏡や水面など、自分の姿が映るビジュアルをたくさん使用しました。すると声の存在が、つまり“見えない目”が見えてくる。見えないキャラクターを登場させて、エルサと繋げるのは難しかったのですが、“見えない目”が彼女を見ているのを示すことで実現できたと思います。」

ちなみにルメイ氏は、このシーンを作り上げるにあたって、自分自身の経験をアニメーションに活かしたことを明かしている。米ComingSoon.netにて、ルメイ氏は「自分自身を注ぎ込めないものには、誰も何も感じられません」と語っているのだ。

「何かのせいで夜も眠れなかった経験はなかったかな、と思ったんです。疑問にせよ、気持ちにせよ、欲望にせよ、家族にせよ話せなかったことはなかったかと。それで、21歳から24歳のころを思い出したんですよ。当時はアートスクールを出たころで、自分の道が正しいのかどうか、これで成功できるのかが分からなかった。結果的にその道を進んだんですが、うまくやれるのかどうか分からなかったんです。それがストレスだったし、心配だった。(そういう気持ちは)どこかに消えてほしいと願っていたし、うまくいくと信じるしかなくて。」

「イントゥ・ジ・アンノウン」ひとつとっても、脚本家や監督たちがストーリーに込めたもの、音楽チームの織り上げた楽曲、そしてアニメーターの仕事など、あらゆる才能による創造性が詰まっていることがわかるだろう。そして忘れてはならないのは、エルサの声を担当したイディナ・メンゼルの存在だ。楽曲を手がけたクリステンは、かつてミュージカル女優を目指していたといい、以前からメンゼルの声をよく知っていたという。

「イディナの声を聴くと、あたたかく抱きしめてもらっている感じがします。温かさと脆さ、静かさがある。それから、高ぶれば高ぶるほど力強くなるし、パワフルにもなる。壮大な曲を歌うと、私たちの魂に届くんです。彼女に曲を書くことができて、私たちは本当に幸せだと思います。イディナの存在なくして、『レット・イット・ゴー』や『イントゥ・ジ・アンノウン』を作れたかどうか。彼女はこれらの曲を書かせてくれた、私たちのミューズなんですよ。」

映画『アナと雪の女王2』は2019年11月22日(金)より全国公開中

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Sources: Vanity Fair, Collider, FreshFiction.tv, ComingSoon.net

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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