【最速レビュー】『Ghost of Tsushima』黒澤明作品を彷彿とさせる圧倒的オープンワールド、手に汗握る一騎打ち

従って、黒澤明監督に捧げられたかのような世界観には、確かな魅力を堪能することが出来るだろう。とはいえ、本作の物語については気になるところもある。それは、主人公への感情移入が難しかったことだ。正々堂々と戦うことを心得る武士にも関わらず、非道とも言える方法で戦う冥人に堕ちていく仁の葛藤が細部まで描き切れていないとでも言うべきか。
一騎討ちか、それとも闇討ちか

武士たる者、正々堂々と一騎討ちしようではないか。時代劇で繰り広げられる真剣勝負といえば、静寂の中で武士同士が向かい合い、間合いを測り、息を呑む瞬間が欠かせない。本作にも一騎討ちという要素がある。互いにどちらが先制攻撃を仕掛けるのかという手に汗握る状況の中、その一瞬を制することが出来れば、敵を一太刀で葬ることが出来るのだ。
一方で、判断を誤ると、逆に一撃にして瀕死状態に追い込まれてしまう。また、一騎打ちを仕掛けるということは周囲に気付かれてしまうということだ。従って、勝利しても、否応なく敵陣との戦闘が開始されてしまう。一騎打ちを申し込むか否かは慎重に判断しなければならない。
というのも、本作では必ずしも正々堂々と戦わなければいけない訳ではない。それこそ、誇り高き武士とは異なる、闇に堕ちた冥人としての戦い方があるのだ。爆竹の音や煙玉など様々な道具を駆使して、隠密行動の中で敵を闇討ちしていく。敵に発見されてもクナイで素早く相手を封じ、鉤縄(かぎなわ)で壁を登ったり裂け目を飛び越したりして、敵の攻撃をやり過ごすことも出来る。武士たる者、正々堂々と戦うべきと論じたばかりだが、時には止むを得ない状況もあるという訳だ。
風が導くままに対馬を駆け巡れ

本作ではプレイヤーの没入感を極限まで高めるために、他のオープンワールドゲームとは差別化された斬新な工夫が施されている。最も特徴的な要素は、従来のオープンワールドゲームでは必須と言えるミニマップやHUDが画面上に存在しないこと。その代わりに目的地まで導いてくれるのは“風”だ。
とはいえ、風の動きを見極めるには多少の慣れが必要であり、それまでは目的地の正確な位置が掴めなくなることもある。そこで役に立つのが、自分自身で風を起こすことで方向を確かめたり、目的地までの距離から居場所を正確に掴んだりという補助要素だ。もちろん、別途マップも開くことも出来る。従って、決して敷居の高いものではないので、そこまで心配する必要もないだろう。
これらの要素を組み合わせることで、プレイヤーは圧倒的な臨場感を味わうことが出来るのだ。登場人物が作品内の世界観に溶け込み、画面に風景以外の表示物がほぼ登場しないことによって、類まれなる没入体験をもたらす、今までにはなかったオープンワールドゲームに仕上がっている。武士たる者も、そうでない者も、この作品をプレイしない手はない……。
PlayStation®4用ソフトウェア『Ghost of Tsushima』
タイトル | Ghost of Tsushima |
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ジャンル | オープンワールド時代劇アクションアドベンチャー |
対応機種 | PlayStation®4、PlayStation®4 Pro |
発売予定日 | 2020年7月17日(金) |
価格 | ■通常版
パッケージ希望小売価格: 6,900 円+税 ダウンロード販売価格: 7,590 円(税込) ■デジタルデラックスエディション 販売価格: 8,690 円(税込) |
CERO | Z (18才以上のみ対象) |