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庵野監督のキャリアはこのために?『シン・ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』の共通点を探る

『シン・ゴジラ』のスタッフロールを眺めると、庵野秀明総監督と長きに渡ってさまざまな作品を手がけてきたスタッフの名前があることに気づくだろう。例えば、D班監督の摩砂雪はアニメ作品『トップをねらえ!』(’89)以来、庵野作品に右腕として参加してきたクリエイターである。

そして、庵野に加え、『シン・ゴジラ』監督(庵野は総監督)の樋口真嗣、コンセプトデザインの前田真宏が勢揃いし、『シン・ゴジラ』の雛形とでも言うべき作品が過去、存在していた。それはTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』である。特に第八話『アスカ、来日』および第九話『瞬間、心重ねて』で庵野は監督と脚本、樋口は絵コンテ、前田は使徒(作中に登場する人類を攻撃する巨大生物)のデザインを手がけていた。

『アスカ、来日』&『瞬間、心重ねて』と『シン・ゴジラ』の共通点 

前田のモンスターデザインの特長は、そのソリッドさと生理的不快感に至るギリギリのラインを狙ったグロテスクさである。『シン・ゴジラ』のデザインにもそれは活かされているが、本編に登場する第六使徒ガギエルは、そんなゴジラの第一形態にもっとも近い。魚類と爬虫類をミックスしたようなその形状は、水中生物としての機能性まで計算されているのが心憎い。

『シン・ゴジラ』とのストーリー上での共通点としては、海上自衛隊が登場すること、海中から巨大生物が出現することが挙げられる。また、エヴァのストーリー上でも、エヴァンゲリオン弐号機が初登場する重要な回。戦艦から戦艦へ飛び移りながら戦う様子はエキサイティングだが、後にこの海軍側の損失はしっかりと請求されていたことが判明する(第十四話『ゼーレ、魂の座』より)。こうしたリアリズムも庵野脚本の特色だといえる。

『瞬間、心重ねて』に移ろう。エヴァンゲリオン史上屈指の名シーンに挙げられるクライマックスの戦闘の絵コンテを手がけたのが樋口だ。平成ガメラシリーズにもいえることだが、現在の日本で巨大生物を動かすことにかけては、アニメ、実写問わず樋口の右に出る者はいない。

やはり、ここでも海上の戦闘シーンがあることも注目したい。そこからの作戦失敗、作戦の再立案、最後の挑戦という流れは『シン・ゴジラ』にも受け継がれている。というより、この物語パターンは怪獣ものの定番なので、むしろエヴァが怪獣ものを意識していたということなのだろう。

その他、エヴァと『シン・ゴジラ』の共通点

  • 『シン・ゴジラ』のクライマスックスに展開されるヤシオリ作戦の概要は、第六話『決戦!第三新東京市』のヤシマ作戦に酷似。また、劇伴もヤシマ作戦のBGMを引用している(『シン・ゴジラ』音楽監督もエヴァと同じく鷺巣詩郎)。
  • さかんに登場人物が口にする「まさに~」という節回しは庵野脚本の特徴であり、エヴァにも多数登場する。
  • 『シン・ゴジラ』において、ゴジラは「この世で最も進化した生物」、「神の化身」と形容されるが、これはエヴァンゲリオンの概念と同じ。
  • ゴジラをめぐって先進国が鍔迫り合いを展開する。これもエヴァンゲリオンをめぐる先進国の態度と酷似。
  • ワンカットだけ映る政府のスーパーコンピューター室は劇場版の第二十五話『Air』に登場するNERVのそれに酷似。

つまり、これらのポイントを総合すると、特撮と怪獣を愛する庵野秀明監督のキャリアは『シン・ゴジラ』に向って歩み続けてきた、と考えられないだろうか?その集大成をどう見るか、ぜひとも劇場で確かめてほしい。

Writer

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石塚 就一就一 石塚

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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