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【レビュー】『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』はインフィニティ・サーガ真の完結作、ジェームズ・ガン節にまた涙

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
© 2023 MARVEL

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)最新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は、シリーズの完結作でありながら、MCUにおける前サーガ、「インフィニティ・サーガ」を真の意味で終わらせる作品でもあった。

物語は『アベンジャーズ/エンドゲーム』後、より直近作では「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー ホリデー・スペシャル」の後のガーディアンズの生活が描かれる(「ホリデー・スペシャル」を未見の方は事前鑑賞推奨)。惑星ノーウェアに新しい拠点を構えたガーディアンズだったが、スター・ロード/ピーター・クイルは愛するバージョンのガモーラを失ったショックで未だ失意の底にあり、酒浸りの日々を送っている。そこにとある脅威が到来し、ロケットがピンチとなったことで、ガーディアンズは最凶の敵に立ち向かうこととなる。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
(c) Marvel Studios 2023

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズに求めていたあらゆる要素が詰まった、絶妙なバランスの上に成り立つ巧みな完結作だ。

特に重要となるのがロケット。本作では、なぜ普通のアライグマだった彼が二足歩行で歩いて喋って高度な頭脳を持つようになったのかの背景が明かされるのだが、その語り方が絶妙だ。本編の進行に合わせて一枚ずつベールが剥がされていき、芯にたどり着く頃にはすっかり心掴まれている。

その寓話的なオリジン・ストーリーには、本作のヴィランであるハイ・エボリューショナリーが絡んでいる。動物を高度進化させる実験を繰り返し、欠陥のない文明を築こうとする「完璧主義者」である彼は、サイコパスのマッド・サイエンティストで、最悪のスティーブ・ジョブズのようなヴィラン。演じるチャック・イウジの迫力が凄まじく、単独作ヴィランとしてはMCU屈指のインパクトを放っている。イウジはガン監督作「ピースメイカー」にも出演しており、熱血的な演技を見せていたが、これを狂気に転用したガン監督のキャスティングセンスが面白い。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
(c) Marvel Studios 2023

他にもガン監督は、(良い意味での)悪趣味的なセンスを存分に活かしている。トロマ映画時代へのオマージュとしか思えない悪魔的で毒々しいクリーチャーやデザインも何食わぬ様子で登場し、作品に独自のオフビートな魅力を与えている。ギャグセンスも抜群で、フェーズ4以降最も笑えるMCU映画のひとつに仕上がった。もちろん、シリーズお馴染みの軽快なポップソングもたっぷり流れる。

しかし特に強調したいのが、全ての主要キャラクターに鮮やかでエモーショナルなキャラクターアークが与えられていること。彼らは映画の起点から終点に向けて確かな道のりが用意されており、その過程でそれぞれに見せ場がある(個人的にはガモーラ役ゾーイ・サルダナに拍手)。アクションはもちろんのこと、各々が各々の視点や立場から説得力のある意志をもって行動する。ちょっとした所作やリアクションへの演出もきめ細やかだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』1作目で登場したこの奇妙なならず者たちに、よくぞここまでの愛着を抱かせたものだと、ただただ感嘆するほかない。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
(c) Marvel Studios 2023

新たに登場するアダム・ウォーロックにも適切な登場時間と役割が与えられている。「インフィニティ・ガントレット」などコミックで読んだ印象とは少々異なるものの、観客は誰もがウィル・ポールターの演技に魅了されるだろう。

この映画には、ハッとさせられるメッセージがいくつも散りばめられている。ジェームズ・ガンだからこそ訴えかけることのできる、とても優しくてインクルーシブな想いだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を愛するファン一人一人を、真心と共に肯定しており、まるで観客を抱きしめるようにして完結に向かっていく。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は、新サーガに移ったMCUの最後のレガシータイトルの一つで、その歴史はフェーズ2から続いた。同時期にデビューした『アントマン』が最新作『クアントマニア』で新フェーズの紹介役に徹していた一方で、本作『VOLUME 3』は、思いきり前サーガの名残を味わうことのできる一作だ。征服者カーンやマルチバースといった最新のMCUトレンドには乗っておらず、もはや“クラシック”とでも呼ぶべき原点的なストーリーテリングに集中している。

もしかすると「『エンドゲーム』が終わってから、イマイチ以前のようにMCUに夢中になれない」と感じている方もいるかもしれない。それでは『VOLUME 3』をぜひご覧いただきたい。インフィニティ・サーガから今まで、銀河の彼方でそのまま残っていた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の物語が、今ようやく完結するのだから。

また、ジェームズ・ガンに胸を打たれた。大好きだったし、大好きだ。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は、2023年5月2日より公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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