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【ポンコツ映画同好会】例えるならば名探偵コナン実写化?『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』レビュー

2013年に公開され、日本ではまあまあのヒットとなった前作「グランド・イリュージョン」(原題Now you see me)。その続編となる今作「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」(原題Now you see me2)は、単独の映画としても続編映画としても、抱える問題が大きい、しかし見所がないわけではない、ポンコツ映画同好会からすると「ストライクゾーン」な映画でございました。

以下、結構この映画を論調的に皮肉ったりくさしたりします。今作を楽しみにしている方、また鑑賞済みで心から楽しんだ方は、これ以上お読みにならない方が心の平穏を保てるかと存じます。

【注意】

この記事は、映画『グランド・イリュージョン見破られたトリック』のほんのりネタバレ内容を含んでいます。

一作目の監督であった「トランスポーター」のルイ・ルテリエは降板。今作のメガホンをとったのは36歳と歳若い中国系アメリカ人監督のジョン・M・チュウ。彼のフィルモグラフィーで代表作は、というか日本で劇場公開された映画自体一本しかなく、そちらも、ヒット作の続編、2013年の「GIジョーバック2リベンジ」。覚えている方も多いと思いますが、この作品はあまり褒められるような出来ではなく、出演俳優と製作サイドとの契約不手際を否応なく想起せざるをえない、一作目の主要キャスト(というか主人公)のまさかの序盤での死亡や、誰に主軸を置いてるか良く解らない適当なストーリーテリングなど、今となっては断崖絶壁忍者アクション(これはかっこいい)しか記憶に残っていない、公開当時は前作ファンを激怒させてしまった作品でした。

そして今回の「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」ですが、思うに作劇のバランスも、抱える問題も、非常に「GIジョーバック2リベンジ」に似ている作品でした。 まず純粋に良い所から。前作のGIジョーも含めてこの監督作品のアクションは非常に見応えがあります。今作ではそのアクションもいわゆる殺陣、格闘シーンのことではなく、この映画は「マジック」がテーマの映画なので、自然「マジシャンがマジックを披露するところ」が、重要なアクションシーケンスとなるわけですが、映画を見ている観客にマジックを「披露」する際のカメラの視点誘導、あるときは劇中オーディエンスの視点、あるときは隣に立っている人間の視点、そしてあるときはそのマジックで用いられている小物の視点と、今何が起こっているのか混乱しないようマジシャンの動きに合わせてスピーディーに展開するカメラワークと編集は、後に述べるような問題点を差し引いてもお釣りがくるくらいの見事な的確さで、まるでマジックのショーを最前列一番良い席で眺めているかのような臨場感と高揚感の演出は成功しています。マジックの登場回数も、あんまり多すぎると飽きてしまうところ、多すぎず少なすぎず、ちょうどいいバランスでした。

また、手品を題材にした映画というと「幻影師アイゼンハイム」(2006)や「プレステージ」(2006)などが思い浮かびますが、CG技術がその粋を極めて久しい映画界において、「映画内での手品」は、映画の観客が「映画の中では視覚的に何でも起こり得る」ってことを知っている以上、手品のトリックそのもので観客を驚かせることは難しくなってしまっています。
「幻影師アイゼンハイム」や「プレステージ」では、それならばと、現実の世界では絶対に起こり得ない大仕掛けのイリュージョンを見せることにより、逆に観客の中のフィクションの境目を曖昧にしてしまい、「それはないな」と思わせて、現実の物理法則という確固たる土台の上でイリュージョンを見せるところがポイントである手品師を、登場させている意味をなくしてしまうという本末転倒な結果に終わっていました。

しかし、今作で扱われるマジックは、もちろん映像演出で「盛って」はいますが、現実に存在する、またはし得るものばかり。段取りとして、そううまくいくものか、というツッコミは入れたくなりますが、「節度」をきちんと守ったおかげで、前に挙げた二作の陥った罠にはまることはありませんでした。

それではこの映画のダメなところ、もとい「愛すべきポンコツなところ」。まずはGIジョーのときも感じましたが、続編なのに前作へのリスペクトが欠けるところです。前作の紅一点アイラ・フィッシャーがおめでた降板、代役としてリジー・キャプラン演じるルーラが加入、それはいいのですが、チームへのぶっこみ方がすごく雑なため、主人公たちが前作でやっとの思いで加入した正義の秘密結社アイの秘匿性だとかシリーズの根幹に関わる設定に緩みが生じてしまっています。冒頭からしてそんな感じですが、総じて出演キャラクター、味方、敵含めて前作からするとバージョンダウンというかIQダウンというか、やや間抜けにみえるような描き方になってしまっており、前作ファンからすると非常に不満な点になるでしょう。

また、シナリオ面では前作で決着がついた問題、それによって前作のカタルシスが生まれていた部分を、「実はあの人~でした」「実はあの出来事~でした」みたいに気軽にひっくり返してくるのですが、この映画を単体映画として観る観客にとっては何のことかわからず、そして前作を好きで今作を見ているファンにとっては「後付けサクサク感」が否めず興ざめするという事態を招いています。
また、俗にいうシナリオの「どんでん返し」といった大ネタは、一本の映画で、ここぞという場面で一回、使っても二回程度が限度だと思うのですが、今作では前述のように乱発するので観客にとって劇中、事実がどこにあるのか判らない、ひいてはどうせひっくり返されるかもしれないのでどうでもよくなるという悪循環になってしまっています。

細かいところでは、フォーホースメンのリーダー、ジェシー・アイゼンバーグ演じるアトラス、前作ではふんわりカールヘアーのベビーフェイスな切れ者といった容姿だったのに対して、今回はスキンヘッドが少し伸びたヘアスタイル、話し方も含めて、超話題作「バットマンVSスーパーマン」でのレックス・ルーサー役を否が応でも思い出してしまうので、アイラ・フィッシャーの件もそうですが、髪が伸びるまで撮影をもう少し待てなかったものかと。

それと今作の悪役ウォルター・メイブリー演じるダニエル・ラドクリフ、ここ数年ハリー・ポッターの影を拭い去ろうと必死で悪役やどうしようもない男の役を選んで演じているようですが、はっきり言ってまだ似合わないと思います。これは彼の演技力うんぬんの話ではなく、あまりにも有名な映画で、あまりにも長期間善玉を演じてしまった弊害なのですが、やっぱり彼が出てくると「うわっ」と思いますし、悪事をしても「でも、本当はそんなに悪い人じゃないでしょ?」的な印象を持ってしまいます。ダニエル・ラドクリフを俳優として好きな方はお怒りでしょうが、筆者としては、ダニエル・ラドクリフを出すのであれば、絶対に善玉、例えば主人公チームの新メンバー、例えば内気な凄腕マジシャンとして、とかだったら違和感なかったのかなと。急な脱皮をするのではなく、そうやってハリー・ポッターから遠くない、悪く言えば「代り映えしない」役を積み重ねて、ちょっとずつ役柄の幅を増やしていけばいいのになと、余計なお世話ですがそう考えます。

ただ、人によっては致命的な欠点となってしまうであろう以上のポンコツ感も、前にあげたようなマジック披露時のアガり方であったり、ケイパーもの(計画を立てて、難攻不落なところから何かを盗み出すジャンル映画)の、そもそもこういう映画を嫌いな人が少ないという特性だったりが後押しするおかげで、凡作以上のものに見える仕上がりにはなっています。
鑑賞しながら、「なんで話はこんなムチャクチャなのに、眠くならないんだろう」とずっと考えておりましたが、この映画を例えるなら、何作も作られて、名作凡作並ぶ劇場版名探偵コナン、もしくは劇場版ルパン三世でもいいですが、そういった類の作品の中で「うまくいった回」を鑑賞したときと、印象が似ています。トリックを成立させるためであったら、もう細かい齟齬なんてなんのその、「強引すぎる」とか「ご都合主義だ」なんてのは、言うほうが野暮、そういうジャンルの映画である、ってことを踏まえればお金を払う価値は十分にある、楽しい映画であることは間違いありません。

Eyecatch Image:https://trakt.tv/movies/now-you-see-me-2-2016

Writer

アクトンボーイ
アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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