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【レビュー】そのカッター使いの少女、最強。『グリーン・ルーム』密室サバイバル、パンク精神で生き残れ!

2月11日に公開された映画、『グリーン・ルーム』。グリーン・ルームとは決して、あの陽気な雰囲気で音楽とビールが楽しめる横浜の野外フェスのことではない。あのフェスの名前の由来が同じ意味を持っているかもしれないが、グリーン・ルーム(Green Room)とは、楽屋の事を意味している。

そんな楽屋を舞台とした、理不尽・不条理・袋小路の三拍子が揃うサバイバル・スリラーが、今作『グリーン・ルーム』である。

【注意】

この記事には、『グリーン・ルーム』に関する微ネタバレ内容が含まれていますが、映画の結末には触れていません。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=elMRAZytfzI]

楽屋戻ってたら、人が死んでた

http://www.quartertothree.com/fp/2016/04/16/best-thing-youll-see-week-green-room/
http://www.quartertothree.com/fp/2016/04/16/best-thing-youll-see-week-green-room/

今作の主人公らは4人組のパンクバンド「Ain’t Right(エイント・ライツ)」だ。メンバーはしっかりもののパット、ちょっぴりオバカなタイガー、力持ちのリース、紅一点のサム。彼らはドマイナー中のドマイナーバンドであり、ギャラも鬼安い。多くの箱で演奏しているわけでもないので、わざわざオレゴンという田舎の中の更にまた僻地にあるライブハウスにようやく出演が決まって向かう事に。

しかし、そのライブハウスはネオナチ軍団がたむろする殺気溢れる箱だったのだ。さっさと演奏して帰ろう……とメンバーたちが思っていたところで、どっかのアホが「俺やりたい曲ある!」と言い出す。それがなんと、「ネオナチ、ファックオフ!」みたいな曲なのだ。

案の定、観客はブーイングの嵐(というか殺気に満ちあふれ)瓶ビールをステージに投げたりする。「ここでやられるのか……!」と息を呑む。しかし、彼らは演奏をやめるどころか他の曲まで全てやりきるのだ!ここで、バンドメンバーが以外と肝っ玉座ってることが証明される。

では一体どうしてネオナチを怒らせて命まで狙われるはめになったのか……演奏が終わり、ライブハウスをメンバーが出ようとした瞬間、紅一点のサムが叫んだのだ。

「携帯ない!忘れた!」

仕方ないな、とパットが代わりに楽屋にとりに行く。楽屋には厳ついネオナチ風な男女がいた。ビビリながらも携帯をとって出ようとした彼は、見てしまったのだ。床に倒れた、頭にナイフがブッ刺さった女性を。

携帯取りに戻ったら、死体があった……不運すぎる!

パンクバンド(4名) VS ネオナチ(軍団)

http://www.filmcomment.com/article/review-green-room-jeremy-saulnier/
http://www.filmcomment.com/article/review-green-room-jeremy-saulnier/

パンクキッズであれば、この「パンクスvsネオナチ」がアツい設定だと感じるかもしれない。

実は、映画の前半でお分かりいただけるのだが、実際はネオナチがサクサクとパンクスを血祭りに挙げるサバイバルスリラーなのである。

こうして殺人現場に居合わせてしまったパットは携帯で警察を呼ぶ。しかし、ライブハウス側の人間に携帯を取り上げられ、メンバーは皆揃って殺人現場と化した楽屋に軟禁されることに。

バンドメンバーは気が動転し、事件の時から部屋にいた一人の少女、アンバーと逆に立てこもることにする。ライブハウス側は、オーナー(パトリック・スチュワートa.k.aプロフェッサーX)を呼んで事の収拾をつける、つまり目撃者を消すためにネオナチ軍団を集めるのだ。

http://www.nobloggingforoldmen.com/2016/04/green-room-review.html
http://www.nobloggingforoldmen.com/2016/04/green-room-review.html

あのX-MENのプロフェッサーXが、冷静沈着な殺人司令塔、ネオナチのリーダーなのだ。怖くないわけがない。

http://www.indiewire.com/2016/04/how-green-room-director-jeremy-saulnier-and-dp-sean-porter-created-the-films-gritty-look-289694/
http://www.indiewire.com/2016/04/how-green-room-director-jeremy-saulnier-and-dp-sean-porter-created-the-films-gritty-look-289694/

この時、殺人を殺人を以てもみ消すという事で彼らが慌てる事なく、着実に準備をしていく様子が普通に怖い。というかほら、ルックスだけで既に怖いじゃんもう。

オーナーは立てこもった彼らが銃を所持している事を知り、交渉にでる。「何もしないから〜、大丈夫だから〜」というサイコスリラーの常套句をいけしゃあしゃあと言う。パットが彼の交渉をのもうと、少し開けた楽屋の隙間から武器を捨てようとした……その瞬間!潜んでいたネオナチによる襲撃によって、彼らの死闘の幕が切られた

俳優陣にも注目

今作の主演であるパット。彼を演じたのはアントン・イェルチェン。彼は昨年6月、27歳という若さで不慮の事故によりこの世を去ってしまった。『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』の主演や、『スター・トレック』のパヴェル・チェコフとして親しまれている。彼の遺作は、この『グリーン・ルーム』の次に出演した、昨年日本公開の『スター・トレック BEYOND』となってしまった。(※『グリーン・ルーム』は全米2016年6月公開)

そして、『X-メン』シリーズのプロフェッサーXでお馴染みのベテラン俳優パトリック・スチュワートは勿論、『ローラー・ガールズ・ダイアリー』、『ランナウェイズ』、『ルビー・スパークス』とインディーズ映画シーンで存在感のある女優アリア・ショウカットもお忘れなく。

なによりアンバー役として出演したイモージェン・プーツは現在注目株の新人女優である。『Vフォー・ヴェンデッタ』でデビューを果たし、『マイ・ファニー・レディ』のヒロインに抜擢された彼女の今後の出演作に期待したい。

サクサクとやられていくメンバー

さて、パットはネオナチによって、扉から出していた左手を負傷。これがまたグロい。あなたがウオッと劇場で声を出してしまってしまっても、私は責めない。改めて楽屋に閉じこもるメンバーであったが、このままでも殺られてしまうため、戦って逃げる事にする。我々からすれば、明らかに死亡フラグが立っているのは、既に怪我を負っているパットだ。

皆が勢いよく楽屋に扉を開けると、誰もいない。あれ?とか思って、恐る恐るステージのあるメインルームに向かい、出口にたどり着こうとした。その時、ネオナチが登場!猛犬が放たれ、タイガーがやられる。アンバーも襲われかけるのだが、パットがハウリングするマイクを拡声器に当てて厭な音を出し、犬を怖がらせて退散させる。パット、やるじゃん!

そのカッター使いの少女、最強。

http://www.vox.com/2016/4/16/11439406/green-room-review-movie-patrick-stewart
http://www.vox.com/2016/4/16/11439406/green-room-review-movie-patrick-stewart

そもそも謎なのが殺人が起きた時部屋にいた少女アンバーの存在。彼女は先述のエイント・ライツのライブを見ていた。その時の動作などが伏線として描かれているのだが、彼女はそもそもネオナチサイドの人間だったのだ。そして、ある理由から彼女の友人が殺され、どうやら彼女もバンドメンバーと同じく“口止め”をされる末路にある。

しかし、元はといえば奴ら側の人間なので、ライブハウスの構造や襲ってくる奴らの事を熟知しているのだ。何より、軽くイッちゃってて戦闘能力が遥かに高い

自分たちを軟禁していたライブハウスに務める大男の腹を何のためらいもなく、スーッと切ったり(描写がこれまたちょっとキツい)、小型でありながらも切れ味抜群のカッターを手に、前方を睨みながら進んで行く。しかも、ショットガンなどの銃器も使いこなしながら戦略をたてていく姿は、もはや少女版ランボーである。

https://bryeager.wordpress.com/2016/05/05/review-green-room/
https://bryeager.wordpress.com/2016/05/05/review-green-room/

この娘の存在が、メンバーが生還するうえで非常に重要なのだ。

定番死亡フラグを覆す、パンクスの底力を見よ!

http://cineparade.eklablog.com/green-room-a126328780
http://cineparade.eklablog.com/green-room-a126328780

さて、先ほどこの映画ではパンクスがサクサクと血も涙もないネオナチ集団に殺られていくと述べたが、実は後半からが見所

なんと後半に残ったのは、最初に大傷を負い、出血多量で死ぬんじゃないかと心配してしまいそうなパットと、アンバーの2名。

何度も「お前さん、死ぬんじゃないか」と観客を心配させていた彼が、後半ついにキレる!ライブ中から一人だけビビっていて、手首さえとれかかっているあのパットが、最後に反骨精神を奮い立たせ、覚醒する。

なんとか、ライブハウスを脱出できても彼らはすぐに逃げない。

そう、ここからが本当の「パンクスVSネオナチ」なのだ。無惨にも殺されていった仲間の遺念を背負ったパットとアンバーは果敢にもネオナチに向かっていく。(私なら助かったら安心したいから一目散に逃げるけどね)

その闘志が吉とでるか、凶とでるか。

彼らの死闘の結末を映画館で目撃せよ。そして観賞後に、あなたはこう思うだろう。

「パンクス、なめんなよ!」

Green Room:© Broad Green Pictures

Writer

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ANAIS

ライター/編集者/Ellegirlオフィシャルキュレーター、たまにモデル。ヌーヴェルヴァーグと恐竜をこよなく愛するナード系ハーフです。

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