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『グレイテスト・ショーマン』『アリー/ スター誕生』サントラ、2018年米国で最も売れたアルバムに ─ 劇場客はCD購買求める傾向

グレイテスト・ショーマン
(C)2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

これはサウンドトラック・チャートの話題ではない。米国におけるCDアルバムチャートの話題である。

映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)のオリジナル・サウンドトラックが、米国で2018年に一番売れたCDアルバムとなったことがわかった。米BuzzAngleの調査によると、同作のサウンドトラックは1年間で127万4,021枚という圧倒的な売上を記録し、年間チャートの第1位に輝いたという。

アルバム売上、映画サウンドトラックに軍配

思えば2018年は音楽映画がはっきりとした存在感を示した一年間だった。『グレイテスト・ショーマン』や『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)、そして『アリー/ スター誕生』(2018)などである。

BuzzAngleの年間アルバムチャートにおいて、『グレイテスト・ショーマン』に続く第2位は『アリー/ スター誕生』のサウンドトラックで、売上は52万5,736枚。枚数としては『グレイテスト・ショーマン』の半分以下だが、『グレイテスト・ショーマン』は2017年12月8日に、『アリー/ スター誕生』は2018年10月5日に米国にサウンドトラックがリリースされていることを踏まえると、約3ヶ月で驚くべき売上をみせたことがお分かりいただけることだろう。

アリー/スター誕生
© Warner Bros. 写真:ゼータイメージ

繰り返すが、これはアルバムチャートの話題ではない。第3位はジャスティン・ティンバーレイク「Man of the Woods」(2018年2月2日発売)、第4位はエミネム「Kamikaze」(2018年8月31日発売)で、売上枚数はともに37万枚台だ。

ここで、懐かしのレコード盤のアルバム年間チャートにも視線を転じてみよう。こちらの第1位は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)サウンドトラック「Awesome Mix Vol.1」で、年間の売上枚数は47,155枚。第2位はマイケル・ジャクソン「スリラー」の46,435枚だ。明らかに、アルバムの売上においては映画のサウンドトラックが大きな成果を収めているのである。

「ストリーミング時代に誰がアルバムを買っているのか」

Varietyは、この結果を報じるにあたって「ストリーミングサービスが市場を圧倒する音楽界で、誰がいまだにアルバムをわざわざ買っているのか? ひとつの答えは、映画のチケットを買う人々だ」と記した。それもそのはず、SpotifyやApple Musicといったストリーミングサービスを含めると、米国の年間チャートは大きな変動をみせる。

BuzzAngleによれば、ストリーミングでの再生回数やアルバム売上などを加味した総合年間チャートの第1位はドレイクの「Scorpion」。第2位にはポスト・マローンの「Beerbongs & Bentleys」、第3位には故XXXテンタシオンの「?」が続き、第4位に『グレイテスト・ショーマン』サウンドトラックが登場している。

総合第1位のドレイクはストリーミングの利用層から驚異的な人気を得ており、第2位のポスト・マローンに大差をつけて首位を獲得。アルバム「Scorpion」はストリーミングの年間チャートで第1位を射止め、楽曲「God’s Plan」は曲単位での売上のほか、ストリーミング&ビデオ・ストリーミングの成績でも第1位となった。

その一方、『グレイテスト・ショーマン』とともにアルバムチャートで高い成績をみせた『アリー/ スター誕生』は総合トップ25へのランクインを果たせず、ジャスティン・ティンバーレイク「Man of the Woods」は第24位、エミネム「Kamikaze」は第13位となった。ストリーミングのみを対象とするチャートの場合、『グレイテスト・ショーマン』ですらトップ25から姿を消してしまっている。“ストリーミング全盛期にアルバムを買っているのは映画館の観客だ”という論調にも頷けるというものだ。

Varietyはこの背景について、ストリーミングサービスのユーザーと映画館へ足を運ぶ観客が完全には被っていないこと、熱心な映画ファンは音楽のデータではなく“実物”を欲しがる傾向にあることを挙げている。映画を観て感動した帰り道、ストリーミングサービスでアルバムを検索する観客よりも、CDを探し求める観客の方がまだ圧倒的に多いということだろう。

とこで大ヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』のサウンドトラックは、意外にも総合年間チャート、アルバムチャート、サウンドトラックチャートのいずれでもトップ25までに入っていない。
しかしその一方で、クイーンは売上&ストリーミングを総合したアーティストランキングで第16位に、アルバム売上ではザ・ビートルズに次いで第8位にランクイン。ロック・アルバムの総合ランキングでは「Greatest Hits」が第1位、ロンク・ソングの総合ランキングでは「Bohemian Rhapsody」が第2位に入っている。映画のサウンドトラックだけでなく、過去のアルバムや楽曲単体が購入・聴取されたことで数字が分散した可能性がありそうだ。

2019年、音楽映画は前年と同じようなムーブメントを音楽界に巻き起こすこととなるか。巻き起こしたとして、それはストリーミングサービスのユーザーにはどう届くのか。ストリーミングサービスで日常的に音楽を聴いているユーザーは、どれくらい映画館へと足を運んでくれるのか。2020年初頭に発表される2019年のチャートも今から楽しみでならない。

Sources: BuzzAngle, Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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