【映画に登場するマニアックな格闘技番外編】現実にはありえない?銃と徒手格闘の融合『ガン・フー』

今回はフィリピンの『エスクリマ』を取り上げる予定でしたが、関連作品の分析が追い付かなかったので番外編として、『映画に登場するマニアックな格闘技』であることは間違いないけど、劇中の架空の世界だけで成立している、現実には存在しない格闘スタイル『ガン・フー』でお茶を濁したいと思います。

この『ガン・フー』、銃のGUNとKUNFU(功夫)を組み合わせた造語です。そもそもの成り立ちは、1980年代後半。今ではちょっと懐かしい名前となってしまったジョン・ウー監督『男たちの挽歌』から連なる香港ノワールアクションシリーズにて描かれていた、両手にハンドガンを持って至近距離から照準無視で撃ちまくるという、当時としては『現実にはありえないけど、なんだかとってもスタイリッシュ』なガンアクションスタイルが、海を渡ってハリウッドで受け、そのスタイルが香港産という意味合いを込めて『ガン・フー』と呼ばれたのが始まりです。


この『ガン・フー』は暫くの間、アクション映画を席捲しました。ジョン・ウー監督『フェイスオフ』や『M.I.2』は勿論、『マトリックス』なんかにもその影響を見てとることができます。ただこの初期の『ガン・フー』は、一部のアクション映画ファンからは不評でして、筆者もそうだったのですがやっぱり『そんな撃ち方で当たるわけがない』『無駄弾ばら撒き過ぎ』『弾倉四次元ポケットかい』という無数のツッコミを生んでしまう銃描写の『ゆるさ』や、様式化したアクションスタイルにかっこよさより『気恥ずかしさ』を覚えてしまうという点など、映画に何より大切なフィクション内リアリティーの成立を阻害してしまう、という大きな問題がありました。やがて映画界の趨勢は、一世を風靡した『ガン・フー』が代表する様式的な表現から、そのカウンターとして『リアル路線』への道を歩むことになります。

そんな時代の移り変わりに、徒花のように咲いたガンアクション映画が『リベリオン(02)』です。この映画が忘れがたいのは、そのストーリーよりも、劇中主人公が使う架空の格闘術『ガン=カタ』の存在でしょう。前述した初期のガンフーを、諦めるのではなく発展させ、『どうすれば両手に拳銃を持ったスタイルの戦闘にリアリティーを持たせられるか』という命題にバカ正直に取りくみ、ガンアクションと空手を融合させ、戦闘における様々なケースに対応したフォーム(型)の習得により、敵に弾丸を命中させることができるという答えを出してみせた愛すべき映画でした。

アクション映画として非常に尖ったことをしていたのですが、さすがに新しすぎたらしく公開当時は大コケして、興収も惨憺たる有様でした。ただ後にソフト化されてからクチコミでジワジワとファンを増やし、今では立派に『銃と武術の融合に初めて成功した映画』として映画史にその名を刻んでいます。

銃と武術の融合という点では、長らく『リベリオン』を超える映画はなかったのですが、2014年とうとうキアヌ・リーヴス主演『ジョン・ウィック』が、最先端の『ガン・フー』表現にチャレンジして、見事素晴らしい出来に仕上げました。

主人公ジョン・ウィックが使う体術、その名も『ガン・フー』は、『リベリオン』とは異なり、使う拳銃は一丁のみ。C.A.R(center axis relock stance)という実在の射撃技術に、ロシアのシステマを中心とした軍隊格闘を融合させた、バリバリの軍隊仕様。射撃も格闘も実在の軍隊戦闘術同士を融合させているので、その親和性は今までの比ではありません。

『リベリオン』までは観客も『実際にはありえないけど、かっこいい』と思って鑑賞していたのですが、『ジョン・ウィック』の『ガン・フー』は、『現実にこれの使い手がいたら凄く強いのでは?』というところまでフィクション内リアリティーを高めることに成功しています。

映画ならではの格闘表現として進化を続ける『ガン・フー』。もしかしたらそのうち、映画から現実への逆輸入なんてことが実際に起こるかもしれませんね。

About the author

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたい不惑。

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Comments

  • 00 2016年7月1日 at 7:24 PM

    元ネタはGUNGRAVEってゲームの停止した状態で銃を連射してると勝手に発動するバレットダンスって技なんだけどね

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