どうして『ハリー・ポッター』は全面リブートしなくちゃいけないのか?まだ人気なのに?

『ハリー・ポッター』リブートの原動力には、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの焦燥があるように思われる。同社は2022年4月に企業合併によって誕生した会社で、新たに就任したCEOのデヴィッド・ザスラフは自社IPコンテンツについて時に鬼となって取捨選択判断を下す。
中でも『ハリー・ポッター』シリーズは重要なアセットだ。同氏は、『ハリー・ポッター』、DCコミックス、『ロード・オブ・ザ・リング』といったIP(知的財産)を「十分に活用できていない」という課題感を口にしていたことがある。2016年からは新シリーズ『ファンタスティック・ビースト』を展開したが、『ハリー・ポッター』ほどの成績を上げられず、続編は未定。興収の面では行き止まりに等しい状況にある。
魔法ワールド 映画作品 世界興行収入の推移
実のところ『ハリー・ポッター』映画シリーズの興収は、最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011)を除いてほぼ横ばいだった。シリーズ拡大を目指した『ファンタスティック・ビースト』は思ったような成績をあげられておらず、明らかな衰退を示す結果となっている。
映画興収が全てだと言いたいわけではない。魔法ワールドはグッズ販売やゲーム、舞台劇などを総合すると330億ドル超の収益を上げており、これは紛れもなく世界最大級のIPフランチャイズの一つである。しかし、こうした企画や商品の成功は、映像作品の人気が大きな源になっているのだ。
仮にワーナーが魔法ワールドに何ら刷新を加えないまま今後の年月を流したとする。2030年代に入れば、映画シリーズは「30年前のコンテンツ」となり、新しい少年少女のファン獲得が次第に難しくなっていく。
また、魔法ワールド・ブランドは原作者J・K・ローリングによって強力に保護されており(『ファンタビ』シリーズもローリングが執筆している)、スタジオ主導で新たな物語を作れるわけでもない。『スター・ウォーズ』やマーベル・シネマティック・ユニバースのように、幅広い観客が共感できるようなキャラクターや物語を時代に合わせて柔軟に用意することが難しいのである。
長い目で見て、魔法ワールドというレガシーを次世代の少年少女に継承するにあたって、このタイミングでリブートをするというのは悪いアイデアではない。2020〜30年代にリブート版ドラマを展開しておけば、これらを観て育った子どもたちが大人になり、経済力をつける2040〜2050年頃になっても、まだ生命力を保ってIP展開ができるはずだ。
今回の『ハリー・ポッター』ドラマリブートは、現在の観客に新たな価値を提供するというよりも、次世代への継承を見越した一大企画なのだと見ている(DCリブートにも同じことが言えるだろう)。映像作品というのは、小説作品よりもずっと早く、そして目に見える形で古めかしくなっていくものである。
ワーナー・ブラザースにとって、コンテンツのリブートは珍しいことではない。DCコミックのヒーロー バットマンは過去20年の間に3人の俳優(クリスチャン・ベール、ベン・アフレック、ロバート・パティンソン)によって実写で表現されているのに加えて、これからまた新たにリブートされることになっている。
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