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『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』完成までの新作ドキュメンタリー、英予告編が公開 ─ 『ロスト・イン・ラ・マンチャ』続編

https://www.youtube.com/watch?v=uJ7agw_QhE8

構想30年、企画頓挫9回。鬼才テリー・ギリアムが“映画史上最も呪われた企画”をついに実現した『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』(2018)の製作に密着したドキュメンタリー映画『He Dreams of Giants(原題)』の英予告編が公開された。かつて、この企画が頓挫した際に製作された『ロスト・イン・ラ・マンチャ』(2002)の続編という位置づけの一作だ。

『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』は、原題『The Man Who Killed Don Quixote』として1989年に構想開始、以来ギリアム監督が温めてきた企画だ。2000年にはジョニー・デップやジャン・ロシュフォールを出演者に迎えるも、出資者が離脱して製作費が減額。しかも撮影初日からセットの上空を戦闘機が飛び、爆音のために撮影中断を余儀なくされ、さらに2日目には豪雨でセットと機材が流失した。ヒロイン役ヴァネッサ・パラディの契約は結ばれず、ついにはロシュフォールが椎間板ヘルニアを患って降板したことで、撮影6日目にして製作中断が決定している。

撮影のみならず、資金繰りやキャスティング、権利問題など、アクシデントが次々に降りかかる中、製作陣が苦しみながら映画に挑み、しかし最後には企画が頓挫してしまう……。その一連の経緯を追ったものが『ロスト・イン・ラ・マンチャ』だったが、本作『He Dreams of Giants』は、ついにギリアムが作品を完成させるまでの記録だ。

公開された予告編は、「ドン・キホーテの物語はずっと持ち上がっては、ずっとダメになり続けている」というギリアムの言葉や、「約20年で7回の失敗を経て、ついにこの映画が動き出します」との声に続いて、アダム・ドライバーやジョナサン・プライスら出演者が集まる様子、脚本の読み合わせや撮影風景などが映し出されていく。「長い執着だった。準備は整ったし、みんな満足してる。ちょっとした年寄りたちの再会だ」。ギリアムは撮影の中で満足げに微笑むこともあれば、「ファック!」と悪態をつくこともある。

一方、ギリアムには健康の問題もつきまとっていた。「この映画を終えて死ぬのか、作り終わる前に死ぬのか」。創作意欲をたぎらせながらも、ギリアムは映画を完成させることで生まれるであろう喪失感にも怯えていた。「完成させるな、夢は夢のままで」「人生は厳しい、芸術も厳しい」「自分は世界を変えられたのか、新しいものを作れたのか」。ギリアムの言葉と視線の重みにも注目だ。監督は『ロスト・イン・ラ・マンチャ』に続き、キース・フルトン&ルイス・ペペが務めている。

映画『He Dreams of Giants(原題)』は2021年3月29日にイギリス&アイルランドにて劇場公開される。世界公開は未定。

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Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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