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ヒース・レジャー、映画監督デビューの企画進んでいた ─ Netflix「クイーンズ・ギャンビット」原作小説をエレン・ペイジ主演で

ヒース・レジャー エレン・ペイジ
Howie Berlin https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Heath_Ledger.jpg | lukeford.net https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ellen_Page.jpg | Remixed by THE RIVER

Netflixドラマ「クイーンズ・ギャンビット」(2020)が世界中で人気を博している。作家ウォルター・テヴィスの同名小説に基づく本作は、主人公の天才少女ベス・ハーモンが、1950年代後半、薬物依存を患いながらもチェスの世界チャンピオンへとのし上がっていく物語だ。

この作品のヒットを受けて、過去のとあるエピソードが注目を集めている。『ダークナイト』(2008)のジョーカー役で知られる故ヒース・レジャーが、この小説を自らの監督デビュー作として映画化しようとしていたのだ。主演を務める予定だったのは、『JUNO/ジュノ』(2007)『インセプション』(2010)のエレン・ペイジだった。

主人公と同じく薬物依存に苦しんでいたヒースは、映画を形にすることなく、2008年1月にこの世を去った。同年3月、英The Independentにて脚本家のアラン・スコット氏が、ヒースとの企画が進んでいたことを明かしていたのである。

「ヒースが処方薬を使っていたこと、若いころに依存症の問題があったことは誰もが知っていました。個人的にとても悲しいことですし、友人を失うことはいつでも悲しいものです。けれど、それ以上に、映画界が本物の才能を失ってしまったことが悲しい。彼は素晴らしい監督になっていただろうと思います。」

1992年にテヴィスの小説の権利を取得したスコット氏は、映画の脚本を書き上げたのち、二人の監督に接触している。ひとりは『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』(1999)のマイケル・アプテッド、もうひとりは『ラストエンペラー』(1987)などのベルナルド・ベルトルッチ。しかし、どちらも実現には至らなかった。その後、2007年の春ごろに、ヒースから映画化を希望する電話を受けたという。

「ヒースと仕事をしてみたいと思いました。情熱的で、激しく、興味深い男で、すぐに惹きつけられましたね。電話で何度も話し合って、去年(2007年)の末に、ようやく会う時間ができたんです。それからの3ヶ月間も、彼との作業には長い時間を費やしました。いくつも草稿を書いて、意見をもらって、何度も会って、エレン(・ペイジ)に脚本を送って。ヒースには他のキャストのアイデアもたくさんありました。主に役者の友人たちでしたね。2008年の終わりに撮るという計画だったんです。」

完成していた脚本は、『ビューティフル・マインド』(2001)のような、ひとりの孤独な天才をめぐる、繊細かつ楽しい物語になっていたそう。ヒースとスコット氏は、すでに音楽についても話し合いを進めていたそうだ。

それから13年を経て誕生したドラマ版「クイーンズ・ギャンビット」は、主人公のベス・ハーモン役に『ミスター・ガラス』(2019)などのアニャ・テイラー=ジョイを起用。スコット氏は脚本・製作総指揮として名を連ねており、脚本・監督・製作総指揮には『LOGAN/ローガン』(2017)『アウト・オブ・サイト』(1998)などのスコット・フランクが起用された。全8話構成の物語は、米Rotten Tomatoesにて批評家スコア100%・観客スコア97%(2020年11月5日時点)を記録。その出来栄えにも絶賛の声が寄せられている。

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Source: The Independent

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。