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TVリブート版進行中!新・3大『ヘザース/ベロニカの熱い日』の熱すぎる魅力【カルト青春映画の古典】

1988年に公開された学園ブラックコメディ映画『ヘザース/ベロニカの熱い日』をご存じだろうか?

まだデビュー間もないウィノナ・ライダーが主演、危ない転校生役をクリスチャン・スレーターが演じている。学校を牛耳る3人の”ヘザー”にパシられ鬱屈した日々を送っているベロニカが、謎めいた転校生JDと知り合うことで体験するヤバい展開を描いた作品で、当時の若者たちの間でカルト的な熱狂を巻き起こし、今なお人気の高いシニカルな青春映画だ。

今まで何度かリブート版の製作が噂されてきた『ヘザース/ベロニカの熱い日』だが、2013年にはミュージカル化が実現、そして現在はテレビドラマシリーズが本格的に進行中だと報じられている。上映から30年近く経った現在でもこれほどまでに人々を惹きつけるのはなぜなのか?本作の魅力を検証する。

『ヘザース/ベロニカの熱い日』あらすじ

全員が”ヘザー”という名前のお嬢様3人組に牛耳られているハイスクール。スクールカースト下位の者には容赦せず、毎日やりたい放題に振る舞っている3人に対し、皆うんざりしながらも何も言えなかった。ベロニカ(ウィノナ・ライダー)もまた、彼女たち”ヘザース”たちにいいように使われて不満の募る毎日を送っていた。そんなある日、ぶっ飛んだところのある転校生JDと仲良くなったベロニカ。JDとベロニカは、ふざけて”ヘザース”討伐を計画するのだが……。

魅力①シニカルすぎるブラックユーモア

『ヘザース/ベロニカの熱い日』は軽いタッチのいわゆる学園ドラマなのだが、そのノリのまま人が死ぬ。それも、かなり早い段階で。「うっそ。マジで?」という感じに死んでいくので、予想もしていなかったスピード展開にまず驚かされる。「いやいやいや、展開が早すぎてついていけないんですけど」という感想は、そっくりそのままベロニカの気持ちであり、観客はベロニカの視点で高速展開に振り回されることになる。

この作品の根底にあるのは、バカらしくも厳然と存在するスクールカーストだ。弱者と強者。ベロニカは、弱者である”本当の自分”を完全には受け入れられないまま、”強者”に取り込まれっぱなしになっている少女で、そんな自分を心のどこかで許せないでいる。”人気者であること”が何よりも重視されるコミュニティで、スクールカーストの下位に沈むことは社会的な死を意味する。ベロニカは利用されて虐げられているだけにしか見えないが、スクールカーストの下位で誰にも相手にされないよりはマシなのだ。

しかし、リアルな”死”がコミュニティにもたらされたとき、”人気者であること”にもうひとつのルートが生じる。生前はあれほど文句をいってくせに、いざ死んでしまうと皆が賛辞を述べて涙を流すのだ。確実に人気者になる方法が”死”だとするならば、スクールカースト下位の者にも道は拓ける。こうして、ヘザースが君臨していたスクールカーストにひずみが生じていく。

ヘザースたちの浮世離れした横暴っぷりや、JDとベロニカによる偽装工作の内容など、基本的にブラックジョークのみで描かれていく『ヘザース/ベロニカの熱い日』。早い段階で”死”がぶち込まれてシャレにならない展開に突入するので、「笑えない」けれど「笑ってしまう」という不謹慎な快感が楽しめる。特に、ドン引きしていたベロニカが対抗に転じてから、エンディングにいたるまでの演出はクールそのもの。最後までブラックジョークに徹したアイロニーを目撃してもらいたい。

魅力②クリスチャン・スレーター演じるJD

『ヘザース/ベロニカの暑い日』で最も重要なキャラクターは、謎めいた転校生JDだ。遠巻きに観察している知的なタイプでありながら、絡まれると躊躇なく空砲で威嚇したりする。何を考えているのか全く分からないものの、どこか余裕を感じさせる雰囲気は、ベロニカを強烈に惹きつけた。

常に黒い服を着てニヤニヤしているJDは、痩せているし少し猫背だし、誰もが振り返るハンサムではない。ハッキリいって”不気味”という印象の方が先にくるだろう。それでも、この作品のJDは圧倒的に魅力的だ。ヤング・ジャック・ニコルソンと称されたクリスチャン・スレーターの鬼気迫る演技と、目の奥に皮肉と寂しさを湛えた眼差しは、JDを映画史に残るイット・ボーイのひとりにした。危険な香りがプンプンして、捨てられた子犬のようで放っておけず、悪魔みたいな男の子。クリスチャン・スレーターの魅力ここに極まれり!としかいいようのないJD役のオーラに抗うことなどできない。

魅力③バリバリの80年代ファッション

イカれたブラックユーモアだとはいえ、『ヘザース/ベロニカの熱い日』は学園モノ。80年代ファッションがこれでもかと登場する。ソバージュロングヘアのヘザーたち、アメフトかよとツッコミたくなるほどたくましい肩パッド、カラータイツにダブルのジャケット。次から次へと登場するやたらカラフルなファッションは、間違いなく本作の見どころのひとつだといえるだろう。

テレビドラマ化では大幅な設定変更が!

ミュージカル化の際は、ヘザースのうちの1人をアジア系女優が演じることもあったくらいで、そこまで大きな設定変更はなかった模様だが、現在計画が進められているテレビドラマ版では、大幅な設定変更が報じられている。

テレビドラマ版では舞台を現代に”リイマジネーション”した、アンソロジー形式の作品になるという。毎回、ヘザースと主人公との関係が中心に描かれるようだ。そして、映画版では白人で美人でお嬢様だったヘザースのメンバーは、ジェンダークィア、大柄、黒人のレズビアンの3人組になるらしい。根底からガラっと変えた感のあるこの設定変更がどう生きてくるのか、期待は高まる。すでに、主人公2人とヘザースたちのキャスティングは発表されている。あとは完成を待つばかりだ。

Writer

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umisodachi

ホラー以外はなんでも観る分析好きです。元イベントプロデューサー(ミュージカル・美術展など)。

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