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マーベル解雇の元会長、ディズニーを猛批判 ─ 「彼らは興行収入の話しかしない」

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マーベル・エンターテインメントの元会長であるアイザック・パルムッター氏が、自身を解雇したウォルト・ディズニー・カンパニーを厳しく批判した。米The Wall Street Journalが報じている。

2009年にマーベルをディズニーに売却したパルムッター氏は、2023年3月末、ディズニーCEOのボブ・アイガー氏による事業再編計画のために解雇された。経営状態の悪化やストリーミング部門の不振を受け、アイガー氏は55億ドルのコスト削減を決定し、夏までに7,000人の従業員を段階的にレイオフ(解雇)すると発表していたのである。

もっともパルムッター氏は、自身の解雇は経営計画のためではないと強く主張している。

私が解雇されたのは、ビジネスの考え方がディズニーのリーダーと根本的に異なるからだと確信しています。なぜなら、私にとって大切なのは投資利益率だから。しかし、彼らが口にするのは興行収入のことばかり。私にとっては収益が大事で、どれだけヒットしたかはどうでもいい。ハリウッドの連中は興行収入の話しかしない。」

こうしたパルムッター氏の主張に対し、ディズニーの代理人は、“顧問弁護士のオラシオ・グティエレス氏がパルムッター氏に連絡を取り、コスト削減のための努力の一環として契約を終了する旨を説明しました”と回答。もっとも、パルムッター氏はこの説明があったことを記憶していない模様。「会社のやり方に異議を唱えてきた長年の幹部を排除するための、都合の良い言い訳にすぎない」と批判した。

ディズニー/マーベルを去ったパルムッター氏だが、現在もディズニーの主要な株主のひとり。関係者によると、およそ3,000万株(30億ドル相当)を保有しているとのこと。長年、パルムッター氏はディズニーに対し、“マーベル・スタジオのスーパーヒーロー映画の予算を削減すべきだ”と申し入れてきたという。製作に予算と時間がかかりすぎている、という考えのためだ。

とりわけ苛烈だったのは、マーベル・スタジオの社長であるケヴィン・ファイギとの対立である。アイガー氏の著書『ディズニーCEOが実践する10の原則』(早川書房)によれば、パルムッター氏はファイギ氏を「敵のように扱っていた」といい、希望の予算を認めないばかりか、あらゆることに反発。「脚本を読まず、ラフカットも見なかった。監督やプロデューサーや脚本家とアイデアを話し合うこともなかった。[中略]プレミアに参加したのはたった一度きり、最初の『アイアンマン』の公開時だけで、しかもあからさまにいやそうな顔をしていた」という。とうとうファイギ氏はストレスで体調を崩し、ディズニーに辞職を申し出ていたという。

2023年2月、アイガー氏は「2015年に彼(パルムッター)がファイギを解雇しようとしていた」と述べ、これを阻止したことを明かした。当時、ディズニーはマーベル・スタジオを自社直属にし、パルムッター氏が干渉できない状況を作り出したのである。この措置によって、アイガー氏とパルムッター氏の関係は悪化した。

もっとも今回、パルムッター氏は、当時の対立は映画の予算をめぐるものであり、ファイギ氏を解雇しようとしてはいなかったと反論。2021年まではマーベル・シネマティック・ユニバース作品の損益計算書も受け取っていたとも述べている。だからこそ、ディズニーに対して戦略の修正と予算の削減を求めていたのだ。さらに報道によると、2022年10月には、マーベル・スタジオに対し『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の決算情報などを要求していたという。

パルムッター氏いわく、当時ディズニーのCEOを務めていたボブ・チャペック氏がマーベル・スタジオ作品の予算をコントロールできていないことに懸念があったとのこと。「チャペック氏もそのことには同意していたが、事前に経営陣が決めたことなので計画は変更できないと言っていた」と述べている(チャペック氏本人はコメントを拒否した)。

映画製作を離れたのち、パルムッター氏はマーベル・エンターテインメントの会長として、コミックの出版やライセンス事業に取り組んでいた。3月末、ディズニーはパルムッター氏のほか、共同社長だったロブ・ステフェンズ氏、主任顧問だったジョン・トリツィン氏も解雇。マーベル・エンターテインメントはディズニーの他部門に吸収され、社長だったダン・バックリー氏は、今後ケヴィン・ファイギのもとで業務を継続することが決まっている。

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Source: The Wall Street Journal

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。