【考察】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』サノスの「月落とし」を科学的に検証する

この記事では、マーベル映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で、ヒーローらを襲った「サノスの必殺技」を詳しく分析・検証していく。
この記事には、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の内容が含まれています。

サノスが見せた「月落とし」を検証する
本稿で扱う「サノスの必殺技」とは、サノスがタイタンにてアイアンマン相手に披露した、インフィニティ・ストーンのパワーで空に浮かぶ星を遠隔破壊し、大量に発生したその破片群を隕石として敵の上に投げ落とすという規格外の大技のことである。劇中のトニー・スタークの発言から「月落とし」、もしくは「サノス流星拳」とでも呼称すべきこのスペシャルムーヴを繰り出すために必要なエネルギーはいかほどか。サノスの技のレパートリーの中でも最大の攻撃力を持つと思しきこの技をできるだけ詳細に分析することにより、2019年5月に予定されているはずの『アベンジャーズ』第4作でのサノスとの再戦への備えとするとともに、技の源となるインフィニティ・ストーン、その力の深淵を覗き込もうとするものである。
言うまでもないがネタ記事であると共に、拙稿を著すは生涯において一度も物理学など専攻したことがないタダの文系映画好きである。あらかじめ文中の科学的齟齬や誤りをお詫びするとともに、読者諸兄におかれては、本稿で題材とするマーベルユニバースのようにどこまでも広大な心で以降をお読みいただけるようお願い申し上げる。
落とされた天体は何だったのか
この大技を出すために必要なエネルギーを検証するにあたっては、兎にも角にも劇中破壊されたあの天体は何かを知らなければならない。自然、あのシーンの舞台となったタイタンはそもそもどこにあるのか、という疑問になる。それでなくとも、マーベル・シネマティック・ユニバースには、惑星サカールやら、コントラクシアやら、ザンダーやら、現在までの人類には発見できていない天体が数多く登場する。サノスの故郷タイタンもそういった星の一つであれば、今回の調査は早くも暗礁に乗り上げることになる。焦る思いで手に取ったガイドブック『マーベル 宇宙の歩き方』(講談社、2017年刊行)に、マーベル世界におけるタイタンについて書かれた章があった。その一行目にこうある。
土星の最も大きい衛星であるタイタンにはかつて、才能のある優れた人々が住む都市があった
ご存知の通り、われわれの地球でも、土星最大の衛星は「タイタン」と命名されている。才能のある優れた人たちの有無までは明らかになっていないが、マーベル世界のタイタンと我々にとってのタイタンは同じ、という仮定のもと検証を進めてよさそうだ。アイアンマンらが、サノスからガントレットを奪うべく激戦を繰り広げたあの星が、地球の天文学でいうタイタンだとすると、それでは「月落とし」に使用されたあの天体は何か。タイタンが実在の星である以上、あの天体も観測上存在を確認されている星とするのが自然である。
そしてサノスの心理として、忙しい戦闘中、相手に手ごろな星を投げつけようと思い立ったら、とりあえず手元から近い星を使うはずである。もし読者諸兄が突然暴漢に襲われたとして、その時自らが取る行動を想像して頂ければあながち強引な論理とも言えないはずだ。その観点から候補を探すと、タイタンから至近で「月」と呼べる天体は2つあることが判る。土星側にレア、太陽側にヒペリオン、どちらもタイタンと同じ土星の衛星だが、小生はこのうちヒペリオンこそが、サノスの「月落とし」に使われたのではないかと推測する。理由は以下に述べる。