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『トイ・ストーリー』にも影響、サンフランシスコの老舗玩具店が閉店 ─ 治安悪化とコロナ禍のため

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ディズニー&ピクサー映画『トイ・ストーリー』シリーズにインスピレーションを与えた、サンフランシスコで最も古い老舗玩具店「ジェフリーズ・トイズ(Jeffrey’s Toys)」が2024年2月に閉店することが決まった。

2024年1月24日、ジェフリーズ・トイズのFacebookには「すべてのものには終わりが来る。(あと数週間で)ゴールを迎えるにあたり、ジェフリーズ・ファミリーの一員になってくれた全ての方々に感謝いたします」とのメッセージが投稿された。閉店までの期間中、全商品が30%オフになるという。

ジェフリーズ・トイズは1938年に創業され、家族4世代にわたって経営されてきた。現在の主な経営者であるマシュー・ルーン氏は、父のマーク・ルーン氏と義母のロージー・コロナド=ルーン氏とともにオーナーを務めているが、以前はピクサーで20年間にわたりアニメーター・脚本家・ストーリーディレクターとして活躍。『トイ・ストーリー』(1995)でもアニメーターを務めていた。当時は父のマーク氏が経営を仕切っていたという。

SFGATEの取材にて、マシュー氏は「『トイ・ストーリー』の製作中、僕たちは父からアイデアをもらっていました」と語る。「ほとんど全ての『トイ・ストーリー』でジェフリーズ・トイズを参考にしていますし、いつも店に足を運びました。父は店を閉めると、“とにかく遊んで、楽しんでください。必要なものがあれば言って“と言ってくれていたのです」

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のちにマシュー氏はピクサーを離れ、ジェフリーズ・トイズの跡継ぎとして現在に至る。最盛期は7店舗を経営していたものの、現在はカーニーストリートにある店舗が最後のひとつだ。

閉店の大きな要因は、コロナ禍によってサンフランシスコの職場を離れたオフィスワーカーが戻ってきていないこと。経営不振に陥った小売店が次々に閉店し、街から人が消えたことに伴って治安は悪化。万引きや強盗、ドラッグといった犯罪行為が横行し、ジェフリーズ・トイズでも女性従業員が何者かに刺されそうになる(のちに従業員は退職)、店内で万引きが平然と行われるといった事態も発生したという。

2023年9月、NHKは「サンフランシスコが陥った負の“スパイラル”」として、大型デパートを含む小売店などの撤退が相次いでいること、治安が悪化していることとともに、「営業している小売店が2019年に203店舗だったのに対し、2023年5月の時点ではほぼ半数の107店舗に」減少したことを報じている。

同年12月中旬には、前出のSFGATEが、ジェフリーズ・トイズが存続の危機にあることを報じていた。マシュー氏は、クリスマス商戦でさえ苦戦しており、賃料の2万ドルを支払い続けられる経営状態にはないと述べていたのだ。「クリスマスまでの数日間に店に来ていただかなければいけないのです。オンラインで注文しても予定通りには届きませんが、当店は在庫がいっぱいで、クリスマスに需要がありそうなものはすべて揃っています。ただ、店に入ってきてもらいたい」と。

それから約1ヶ月が経過して、ジェフリーズ・トイズはやむなく閉店を決定した。サンフランシスコの状況が好転しないかぎり、小売店の流出は止まりそうにない。

Source: San Fransisco Chronicle, SFGATE, Deadline, NHK

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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