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【考察】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』予告編、これはアーサーの妄想なのか?

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ
© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

映像が進んでいくと、アーサーとハーリーンが、ジョーカーとハーレイ・クインとして、テレビ番組に出演している様子が描かれている。前作で生放送中に番組ホストを射殺した事件が現実かどうかは不明だが、現実であれば、そんな男が再びテレビに出演できるわけがないだろう。

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

ミュージカル要素があるという本作だが、二人がドレスアップして踊るシーンや、テレビに出演して歌や踊りを披露するシーンは、アーサーの妄想や、その比喩である可能性がある。ここで、冒頭で聞こえる「音楽があれば 人間は狂わずにいられる」というセリフのことを考えてみよう。もともと音楽は好きな様子だったアーサーだが、精神病棟の中で音楽鑑賞を勧められ、そのうちにハーリーンと出会ってからは、辛い境遇の自分にいつも寄り添ってくれる楽曲たちを擬人化し、一方的にハーリーンに重ね合わせ、自分だけの現実を思い描いているのかもしれない。

あるいは、同じような状況にあるアーサーとハーリーンは共依存的な恋に落ち、二人で同じ夢を見ているという可能性も。本作の副題『フォリ・ア・ドゥ』とは、ひとりの妄想がもうひとりに伝染する「二人狂い」という意味である。

そのほか、映像内で気になる箇所をピックアップする。1:29で、ハーリーンがジョーカー信者たちに囲まれて階段(裁判所?)を上がる場面。群衆の持つプラカードには「FREE JOKER(ジョーカーを解放せよ)」とある。1:34になると、ジョーカーとハーレイによるダンスが、1作目の名場面を再現するような形で見られる。

ジョーカー
TM & © DC. Joker © 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

ここでのハーレイはお腹が膨らんでおり、妊娠しているように見える。もしかするとハーレイは、ジョーカーの子を孕ったのだろうか?あるいは、二人で幸せな家庭を築きたいという、彼らの妄想なのだろうか?映画『スーサイド・スクワッド』(2016)では、マーゴット・ロビー版のハーレイが、ジャレッド・レト版のジョーカーと子どもたちに囲まれた家庭生活を送る夢を見る場面があった。

現実的に考えられるのは、アーサーがまた事件を起こしてひとりだけ入獄される展開だ。「FREE JOKER」のプラカードや、映像の最後にハーリーンと面会をするシーンから推察することができる。アーサーは獄中生活で気が細っていき、外の世界にいるハーリーンを心の拠り所とするのだろう。世界が自分の解放を望んでおり、そのために恋人ハーリーンが尽くしてくれている……それは実際に起こっているのことなのだろうか?

アーサーは光に憧れた男だ。スポットライトを浴びることを夢見ながら、現実には社会の日陰にかろうじて生きる哀れな男として描かれた。とことん晴天が出てこないこの予告編映像内で、スポットライトや舞台照明、カメラのフラッシュが彼を照らす場面は、果たして現実なのだろうか?ポスタービジュアルで描かれる一筋の光も意味深である。

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ
© & TM DC © 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ところでジョーカーとハーレイは、これまで描かれてきた物語において、ジョーカーの方がリード役であり、ハーレイは彼の狂気に魅了され、ついていくという構図が主なものだった。しかし本作の映像では、どちらかといえばハーリーンの方がアーサーを導いているように見える。よく知られた“ジョカハレ”の物語に、本作ならではの逆転的なひねりが加えられているのかもしれない。

ハーリーンの存在によって、ジョーカーは強くなり、あるいは強くなれたと錯覚し、物語にさらなる混沌をもたらすことになりそうだ。社会や行政への怒りが動機として描かれた前作に対し、この続編では彼女との関係や共依存が最悪の事態に転じるきっかけになると見られる。ハーリーンは彼にとって、薬なのだろうか?毒なのだろうか?雨に打たれながら一人で笑い続けるアーサーは、一体何に“気付いてしまった”というのだろうか?

この世界は、ただの舞台。『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』は2024年10月11日、日本公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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