映画『ジャングルブック』が日本でも間違いなく流行ると確信した3つの理由【ネタバレ無しレビュー】

ウォルト・ディズニーの遺作『ジャングル・ブック』の待望の実写映画がついに日本公開される。本作は既にアメリカをはじめとする海外諸国では2016年4月に公開されており、批評家からも高い評価を得ている。映画レビューサイトIMDbでは 7.8/10を記録しており、あの超辛口映画レビューサイトRotten Tomatoでも94%という高評価。(いずれも2016年7月24日時点)

日本では8月11日待望の公開となる今作。試写会でいち早く本作を鑑賞させて頂いたが、日本での人気を予感させられる素晴らしい内容であった。『ジャングル・ブック』は、間違いなく日本の観客にも『ズートピア』くらいの高評価で受け入れられるだろう。その理由を3つにまとめて説明したい。

なお、本感想レビューにはネタバレのないよう務めたが、かなりほんのり映画のストーリー概要をなぞっている。気になる方は、劇場公開後、鑑賞後にお読み頂ければと思う。

【1】まさかCGだとは理解が追いつかない、映像クオリティの最高到達点

鑑賞を終えても未だ信じられないのだが、本作は、主演のモーグリ少年役ニール・セディの演技以外、すべてがCGで描かれている。表情豊かな動物たちだけではない。風になびく木々やその間から差し込む太陽光、水しぶきを挙げる川、地上に無数に落ちた木の葉、動物の動きに合わせてモーグリにかかる影まで、何もかもがCGなのである。
昨今、動物の体毛一本一本までを圧倒的リアリティを持って再現したCG映像は珍しくなくなってきている。しかし、『ジャングル・ブック』で描かれる動物たちと自然は明らかに他の作品から群を抜いている。
動物たちの毛並みは、雨に濡れれば水したたり、モーグリが手で撫でればふわふわとやわらかな表情を見せる。観客は、これがCGで描かれているという事実をわかっていても、ついにはエンドロールが流れてもなお信じられないまま鑑賞を終えてしまうだろう。

http://www.comingsoon.net/movies/trailers/670855-jungle-book-clip-features-a-tearful-goodbye#/slide/1

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だが、『ジャングルブック』のCGが『観客の理解が追いつかない』レベルまで圧倒的なリアリティを持っている理由は、グラフィックや物理再現が美しいだけではない。動物たちの細かな動きが徹底的に再現されているのも大きな要因だ。CGアーティストは、膨大量の資料・映像から学び、動物園に通っては動物たちの動きを真似、専門家からもアドバイスを受けている。この映画のために、動物の筋肉、皮膚、毛を再現するプログラムを開発したというだけあって、動物たちからは確かな「命」を感じられる。たとえば、トラのシア・カーンの片耳が時々「ピクン!」と一瞬横を向いたりする事があるのだが、こういった細かな仕草は、動物たちを注意深く観察していなければ捉えられない動きだろう。

【2】「生きる道」と「自分らしさ」を描いた普遍的テーマ

『ジャングル・ブック』が素晴らしいのは映像だけではない。ストーリー・テリングも無駄がなく、かつ誰もが共感できるように描かれている。
人間の子ながらジャングルで狼たちに暖かく育てられるモーグリ。母親代わりのラクシャ、父親代わりのアキーラ、そして本作のナビゲーターでもあり、幼いモーグリを拾ってジャングルに迎え入れた黒豹のバギーラや、可愛さ溢れるちびオオカミの兄弟らに愛され、モーグリ自身も幸せを感じている。狼社会の規律の中、モーグリは不自由なく暮らしているが、他の動物達からの偏見の目は決して少なくない。
そんな中、ある理由でモーグリはジャングルを出て行かなくてはならなくなる。

モーグリの出発は、人生における様々なターニングポイントに置き換える事ができる。故郷を離れ都会に出て行く時、勤め先を退職して新たな道を歩み始める時…。ジャングル内のこれまで足を踏み入れたことがない未知の領域に立ち入っていくモーグリを迎えるのは『誘惑』と『新たな価値観を持った友』だ。

「悪いおねえさん」枠 魔性の女『カー』

© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

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見るものに催眠術をかけ、妖艶な声でモーグリを誘惑する巨大ニシキヘビのカー。(ちなみに本国版で声を務めるのは『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウ役などでお馴染みのスカーレット・ヨハンソン)これまで何処へ行くにも、「親の目の届く範囲」内で兄弟狼たちと行動してきたモーグリが、薄暗く不気味なジャングルに初めて迷い込む。そこにぬらりと現れるカーの姿と魔性っぷりは、言わば「都会の悪いおねえさん」枠である。

自由気ままなクマ『バルー』

http://forum.blu-ray.com/showthread.php?p=12161065

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そしてモーグリに新たな人生観を提示し、最大の友となるのがヒグマのバルー。初めのうちは陽気で脳天気、ちょっと自分本位な怠け者といった印象が強いが、次第にモーグリに心惹かれ、『バルー流の生き方』を提示していく。
モーグリは、暮らしてきた規律ある狼社会とは真逆に、バルーの自由気ままなライフスタイルにカルチャーショックを受ける。そこで彼は初めて、「自分らしく生きる」という人生の核心を知ってしまうのだ。

モーグリが育った狼社会では、常に「狼らしくあれ」と厳しく育てられてきた。とは言うものの、モーグリはそもそも狼ではない。遠吠えのマネはできても、姿形から動物的習性まで親兄弟とは異なる、異質の存在なのだ。モーグリだけが持つ人間ならではの特技は周囲から「狼らしくない」との理由で徹底的に禁じられる。そしてこの作品が巧いと思ったのは、モーグリがその『環境の押し付け』をあまり息苦しく思っていないように見られる点だ。モーグリはまだ幼く、人格が未形成である。周囲の大人たちが「これはダメだ」と決めつける事に対して、「でもだって」を言わない。「そういうものなのか」と、大人たちの言うとおりにありのままに受け入れる。

僕はジャングルブックを鑑賞して、こんな事に気付かされた。

道を提示するのは大人
道を決めるのは運命
道を歩むのは自分

まだ幼いモーグリの可能性は無限だ。ジャングルで生き続ける事も、人間社会に還る事も、幾通りもの可能性が広がっている。だが、それらの道を提示してやるのはやはり周囲の環境であり大人たちなのである。そしてモーグリは、大人たちが提示した道を疑うという事をまだ知らないのだ。

まずモーグリには、「ジャングルで、狼として生きる」という人生が、ジャングルの家族仲間らによって差し出された。
次に、ある事件をきっかけに大人たちは「人間の村で、人間として生きる」という選択肢を提示する。
そして、「ジャングルで、自分らしく生きる」という新たな可能性を提示するのがヒグマのバリーだ。

バリーは日々のすべてを自分の裁量で暮らしている自由人。予定は未定なタイプだ。彼の目からすれば、モーグリが何に長けていて、人生にどう活かしていけばいいかはすぐにわかる。そこで「君には君の生き方があるんじゃないのか」と提示する。バリーは優しいので、あくまで提示するだけだ。押し付けてはいない。

これから、どうするか。それはモーグリの自由なのだ。人生とは、日々の生き方とは、選ぶことができるものなのである。モーグリははじめて『選択』という概念を知るのだ。

だが、物語はそう平和には進まない。モーグリを執拗に追う獰猛なトラ、シア・カーンの存在によって、モーグリの目の前の『生きる道』はかき乱される。大人たちが教えてくれた道、どれを歩むのかは案外、本人の意志を超越した運命によって定められるものなのだろう。

そして物語は完結しモーグリは自らの道を歩む。運命が決めた道を一歩づつ歩んでいくのは、結局は自分のほかならない。心強い大人たちと共に難事を乗り越え、モーグリはひとつ、たくましく成長するのだ。

【3】魅力が溢れかえる動物たちにケモナー要素大いにあり

最後はやや違った角度から感じた魅力だが、この動物は『ズートピア』に続いて、また腐女子さん方々に間違いなく受けるであろう個性的なキャラクターが数多く登場する。そして、彼らの魅力は、今作では日本語吹き替え版の方が上手に引き出せていると思った。

クールで強い、ハンサム&ダンディな守護人、黒豹バギーラ

http://www.disney.co.jp/movie/junglebook/voice_cast.html

© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.http://www.disney.co.jp/movie/junglebook/voice_cast.html

黒豹のバギーラは、家なき子となったモーグリを拾い、ジャングルに受け入れた本人である。彼は一匹狼ならぬ『一匹黒豹』で、常に狼の群れで育つモーグリの存在を近すぎず遠すぎない位置からひっそりと見守っている。勇敢かつ理性的な性格で、命に代えてモーグリをお守りする事を役目としている。モーグリのピンチになると体を張って戦ってくれる姿にときめく観客は多そうだ。
英語版の声優は『アイアンマン3』のマンダリン役でもおなじみのベン・キングズレーだが、少しオジ様要素が強くなりすぎる気がする。吹き替えの松本幸四郎さんの声は、深みと威厳、優しさがありながら年齢を感じさせない。バギーラのカッコいいセリフの一つ一つに磨きをかけてくれている。

おとぼけ者だけど心優しく、しかも戦闘モードになると誰より男前なヒグマ、バルー

© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html

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バルー役の西田敏行さんは大ハマリ役だ。ふだんは暖かく、とかく大らかでまったりしたバルーだが、心預けたモーグリのためなら何だってやる。時には機転を利かせてモーグリを救ってくれる超善人だ。
ところがいざ戦闘モードになると、さっきまでのオトボケがウソのように、ハルクよろしく咆哮し大きな身体で暴れまくる。すべてはモーグリのためだ!このギャップがたまらなく魅力的なのである。

おまけに、バギーラとバルーは、それこそマイティ・ソーとハルクのような絶妙なコンビプレーを見せてくれる。性格はたぶん合わないけれど、だからこそハマリ合う部分も大きい二人の掛け合いや連携プレーは、きっと腐女子さんたちの想像力を刺激してくれるだろう。

とかく邪悪だが根底のイケメンっぷりとネコ科っぷりが憎い、シア・カーン

© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. http://www.disney.co.jp/movie/junglebook.html

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人間に敵対心をむき出しにし、周囲に容赦を与えない今作のヴィランは、独眼のトラ、シア・カーン。こいつがもう徹底的にワルなのである。登場シーンのだいたいが怒った顔をしているが、広い眉間にグワワっとシワを寄せて、白い片目と共にこちらを睨みつける顔は迫力満点だ。役回り含め、きっと『ライオン・キング』のスカーを思い出すだろう。
そんなシア・カーンなのだが、悲しいかなネコ科という事で座り方が可愛い。顔はとにかく怖いのに、三毛猫みたいにちょこんと座った瞬間、思わず「あ、座り方かわゆす…」とほころんでしまうだろう。
英語版の声優は、『マイティ・ソー』などでもお馴染みのイドリス・エルバだが、この声はなんというか、『無難』である。だが日本語吹き替え版の伊勢谷友介さんの声では、ギラリと光るナイフを首元にツツーと当てられているかのような『悪の説得力』が感じ取られる。そして声からもイケメンぷりが伝わってくる、「カッコいい悪役」という印象。この配役も決して悪くはないと思った。

 

ほか、無償の母性愛でモーグリを包むラクシャも魅力的だ。吹き替えの宮沢りえさんの声も、優しさと芯の強さを兼ねており見事だった。
それから、ジャングルの裏社会に通ずる巨大なサル、キング・ルーイ。ムチャクチャな理論でモーグリに迫るが、とにかくデカいし絶対怒ったらヤバい。おまけに子分たちもヤバい。マフィアのボスそのものだ。

彼ら一人一人…もとい、一匹一匹は気持ちがいいくらいにキャラが立っている。きっと『ズートピア』公開時にジュディとニックの二次創作イラストが大流行したかのように、『ジャングル・ブック』の動物たちの擬人化イラストも制作も間違いなく流行る気がする。今から言っておきたいけど、#ジャングルブックはいいぞ

 

以上、ジャングル・ブックの魅力を書き綴った。ほぼフルCGで描かれた圧倒的な映像美と個性豊かで愛すべき動物たちが描く、モーグリという少年の人生の選択。この夏、『生きる力』に気づかせてくれる感動大作となる事は間違いない。普通に自信を持ってオススメできる傑作だ。IMAXで観直したい。

ちなみに今作、ぜひ家族で観ていただきたい作品なのは間違いないのだが、小さなお子さんには少々怖いシーンも含まれている。トラのシア・カーン、ヘビのカー、巨大猿のキング・ルーイらは割と本気でモーグリの命を狙ってくるので、10歳以下くらいのお子さんはちょっと怖がっちゃうかもしれない。大人が観ても若干ビクっとするよ。

 

最後にもう一つ、どうしても言いたい事があるのでこれを言って今日は帰らせてもらう事にする。

 

jungle-book モーグリ

モーグリの赤ちゃん期かわいすぎ泣いた

 

ディズニー最新作『ジャングル・ブック』は8月11日(木・祝)ロードショー。

© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

About the author

インド旅行中、たまたま現地新聞に写真を撮られて掲載されるというミラクルを起こしました。持ってる男。THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。

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Comments

  • だすてぃ 2016年8月15日 at 11:00 AM

    ズートピアに続きケモナー大歓喜というのは同意。
    しかし吹き替えがこれだけタレント陣で埋め尽くされている状況で声優ありきの人も多い腐女子が歓喜するというのはちょっと違うような。
    CGとはいえ、実写のようなクオリティのケモノキャラの掛け合いで萌える腐女子というのは相当な猛者でしょうね…。

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