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『ジュラシック・ワールド/復活の大地』恐竜が死にゆく理由とミュータント恐竜の背景 ─ ギャレス・エドワーズ監督&脚本デヴィッド・コープ来日インタビュー

『ジュラシック・ワールド/復活の大地』ギャレス・エドワーズ監督、脚本デヴィッド・コープ 来日インタビュー

──Dレックスが登場する場面では、哀れな研究員の1人が扉に閉じ込められてしまいます。あの閉塞感、あの状況、そして赤く光る部屋……。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)のダース・ベイダーっぽいなと思ったことはありませんでしたか?(笑)

デヴィッド:そうだね、もうやめなきゃ(笑)。母親に、もし僕がショッピングモールかスーパーのガラス扉に閉じ込められて、センサーも反応しなかったらどうする?とよく聞いていました。この質問はよくされるんですけど、自分でもどうしてなのかわからない。

でも、いろんな映画に影響を受けていると思っていて。たとえば『スター・トレック2 カーンの逆襲』(1982)でのスポックの死亡シーン。あれは良かった。それから『アビス』(1989)も良いですね。扉が閉まっていって、どんどん水で満たされていって、1人が出られなくなるところ。すごく悲惨で、こういうシーンでは「あなたは死ぬ、私は助かる、ごめんなさい」とガラス越しに隔てられている。そこにはたくさんの感情が込もる。通常の扉ならそんなことはないけれど、ガラス扉だから、最期の瞬間を見届けることになる。その人の最期を見なくてはならないから、逃げ出すことができない。とても恐ろしいジレンマです。でも、もうやらないようにしよう(笑)

──『GODZILLA ゴジラ』(2014)にもありましたね。

ギャレス:うん、毎回やっていますね(笑)

デヴィッド:あの場面にはとても人間らしい瞬間がありますね。元々脚本にはなくて、彼のセリフは撮影当日に生まれたんです。“頼むからドアを開けてくれ”というね。とても切実な響きで。よくある映画みたいに“ドアを開けてくれ〜!”と叫ぶのではなく、落ち着いて“頼むからドアを開けてくれ……”と訴えるんです。

ギャレス:“ドアを開けてくれ”と、どこまで感情的に言うかどうかは、何度も話し合いましたね。そしてもう扉が開かないとわかったときに、どのようにギアを変えて人間性に訴えるか。そんな状況を見るのは辛いですよね。

キャラクターの背景を組み立てる会話はたくさんありますけど、僕は「コールド・オープン」が好きです。古典的なところでは『ジョーズ』。女の子が海に走っていて、ちょっと酔っ払っている男が追いかけていく。あの彼女はハイスコアを叩き出しています。彼女たちのことは何も知らないのに、すぐに気がかりになる。あのシチュエーションと共感性のためですね。まだ脅威となるもの(=鮫)は見えていないのに、彼女の演技のおかげで心配になる。あれが理想系です。観客の心を瞬時に掴み、ポップコーンを食べる手を止め、息を呑ませる。ずっとああいうことがやれればと思っていました。本能に訴えかけるものです。YouTubeの釣り動画もそうで、車がギリギリ事故を回避して生き延びるような動画。思わず見てしまう。野生のガゼルがライオンに襲われるのを見ているような。そういう映画がうまくいくのは、ついつい見ずにはいられないからですよね。どうしよう、もしも自分がこの状況だったらどうしよう、というやつ。

ジュラシック・ワールド/復活の大地
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ホラー映画だったら、こういう引き込みがやりやすいんだけど、他のジャンルでこれをやろうと思うと、相当頑張らないといけない。 だから、ホラー映画って“初監督作品”として向いているんですよ。あんまり良い脚本が求められないから(笑)。そして本作はピザのようなものだと思っていて、スライスごとにジャンルが違うんです。ホラーもあるし、アクションやアドベンチャーもある。僕にとっては、映画ジャンルの全部乗せって感じです。

──ギャレス、あなたが監督に就任して最初期のミーティングが、オモチャ会社のマテルとのものだったそうです。彼らは映画の公開時期に商品を発売するために、恐竜のデザインを見る必要があった。しかしその当時、あなたはまだ何のデザインもしていない状態だったそうですね。一体、どうやってミーティングを切り抜けたのですか?

ギャレス:そうなんです。最初にユニバーサルのオフィスを訪問したときに、「2週間後にマテルさんが来社されます」と言われて。なんでですかと聞いたら、デザインの確認に来ますと。何のデザインですか?と聞いたら、とにかくあるものをお見せしてくださいと(笑)。

だから、思いっきりバットシグナルを灯しました。それで僕はラッキーだった。すごく才能ある人たちと仕事したんです。みんなにZoomしましょうと伝えて、Zoom画面には多すぎる人がいた。全員に1~2日分の報酬を払うと伝えて、50人くらいの人たちを相手にまとめてブリーフィングしたんです。しかも全員が世界のトップ・デザイナー。そしたら、1日もしないうちにデザインが200案も上がってきた。まるでちょっとしたワールドカップでしたよ。それぞれにフィードバックを返して、また一日デザインしてくれた。そして1週間くらいで、完成版とそう遠くないデザインにたどり着いていました。

でも一番大変だったのは、デヴィッドが書いた生き物。それは動物というよりミュータントだった。あのデザインを作るのは難しかったですね。彼の説明は、タイプライター上で指で打ったものでしたからね。

デヴィッド:僕も頑張って書き表したんだよ!

ギャレス:それを受けて僕は、どうしようかなと。すごく難しいのがいて、マテルさんにはオモチャ化を遅らせられませんかと頼んだものです。9ヶ月くらいかかるから、クリスマス時期にしてくれと。

デヴィッド:ミュータドンだよね?結果、すごくいいものができたね。

デヴィッド:でも、デザインができてみると、どうして二日目くらいに思い付かなかったんだろうと思いました。翼竜と猛禽類を組み合わせたようなものでしたから。あの最終系にたどり着くまでにはかなり長い時間を要したんです。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から企画制作・執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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