【インタビュー】『キーパー ある兵士の奇跡』サッカーファンでなくとも「共感」できる理由とは ─ 主演デヴィッド・クロスが語る

捕虜兵から、平和の架け橋となる国民的ヒーロー選手に。驚くべき実話から生まれた映画『キーパー ある兵士の奇跡』が日本公開となった。
1945年、ナチスの兵士だったトラウトマンはイギリスの捕虜となる。収容所でサッカーをしていた時、地元チームの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされ、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」に入団。ユダヤ人が多く住む街で、想像を絶する誹謗中傷を浴びながらも、トラウトマンはゴールを守り抜いた。
やがて彼の活躍によって、世界で最も歴史ある大会でチームを優勝へ導き、トラウトマンは国民的英雄となる。だが、彼は誰にも打ち明けられない秘密の過去を抱えていた。そしてその秘密が、思わぬ運命を引き寄せてしまう──。
この感動作で主演を務めたバート・トラウトマン役のデヴィッド・クロスが、THE RIVERのインタビューに応じた。クロスは、スティーヴン・ダルドリー監督の『愛を読むひと』(2009)で、レイフ・ファインズ扮する主人公の青年時代を演じて高く評価され、ヨーロッパ映画賞にノミネートされる。スティーヴン・スピルバーグ監督の『戦火の馬』(2011)や 、『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016)、『バルーン 奇蹟の脱出飛行』(2018)、『ライジング・ハイ』(2020)にも出演する、今注目の俳優だ。

『キーパー ある兵士の奇跡』主演デヴィッド・クロス インタビュー
──私はあまりサッカーに詳しくないのですが、映画ではサッカーのテクニカルな描写はほとんどなく、楽しめました。サッカーに詳しくなくても、誰でもこの映画が楽しめるのは何故だと思いますか?
サッカーが好きじゃなくても、これは絶対楽しめると思います。なぜかと言うと、いろんな要素のある作品だからだと思います。ユーモアも悲劇もドラマチックな瞬間もあって、サッカーの試合のシーンもすごくワクワクするのは、ストーリーの一部として描かれているからだと思うんです。
困難があってもプレイし続ける、運良くそれを意思の力だけで乗り越えることができたんだけど、そのことも凄いし、サッカーのヒーローになっていくという物語も凄い。同時にラブストーリーでもあるから、その部分も皆さんに響くと思います。
マーガレットも、トラウトマンも、ふたりはトラウマを抱えているのですが、最初はそれがふたりを分け隔てる距離をつくっている。でも、お互いに少しずつつ心をオープンに開いていって、お互いを見つけることができて、恋に落ちて、彼らは家族をつくっていく。その物語にすごく共感できるからじゃないかなと思います。

──満員の観客が入ったスタジアムでの試合のシーンは圧巻でした。撮影時にはどこまでが実際のものだったのでしょうか?完成版で試合シーンをはじめて観た時はどう思いましたか?
サッカーの試合はほとんどバイエルンで撮ったけど、ウェンブリー・スタジアムのシーンは、草地だけの場所だけがあって、あとは全部CGだったので、とにかく想像力を働かせました。ここが観客で満杯のスタジアムなんだと思って。数人はエキストラを入れて、ボールもCG なので、ボールの位置も観客にわかるように、どの瞬間ブーイングしたらいいのか、応援したらいいのか、というのを監督が頑張って盛り上げて、群衆のエネルギーみたいなものをつくっていました。それは、なるべくリアルなものを体験して欲しいから、という思いからきているのだと思います。
はじめてこのシーンを観たときも、本当にすごい!と思いました。ウェンブリーが本当に、観客でいっぱいの試合会場に見えたし、それを初めて映画でみたときはすごくクールだなと思いました。

──デヴィッドさん自身はサッカーファン、あるいはサッカープレイヤーだったのでしょうか?