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【インタビュー】『キーパー ある兵士の奇跡』サッカーファンでなくとも「共感」できる理由とは ─ 主演デヴィッド・クロスが語る

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

捕虜兵から、平和の架け橋となる国民的ヒーロー選手に。驚くべき実話から生まれた映画キーパー ある兵士の奇跡が日本公開となった。

1945年、ナチスの兵士だったトラウトマンはイギリスの捕虜となる。収容所でサッカーをしていた時、地元チームの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされ、名門サッカークラブ「マンチェスター・シティFC」に入団。ユダヤ人が多く住む街で、想像を絶する誹謗中傷を浴びながらも、トラウトマンはゴールを守り抜いた。

やがて彼の活躍によって、世界で最も歴史ある大会でチームを優勝へ導き、トラウトマンは国民的英雄となる。だが、彼は誰にも打ち明けられない秘密の過去を抱えていた。そしてその秘密が、思わぬ運命を引き寄せてしまう──。

この感動作で主演を務めたバート・トラウトマン役のデヴィッド・クロスが、THE RIVERのインタビューに応じた。クロスは、スティーヴン・ダルドリー監督の『愛を読むひと』(2009)で、レイフ・ファインズ扮する主人公の青年時代を演じて高く評価され、ヨーロッパ映画賞にノミネートされる。スティーヴン・スピルバーグ監督の『戦火の馬』(2011)や 、『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016)、『バルーン 奇蹟の脱出飛行』(2018)、『ライジング・ハイ』(2020)にも出演する、今注目の俳優だ。

キーパー ある兵士の奇跡 デヴィッド・クロス
Photo by Jeanne Degraa

『キーパー ある兵士の奇跡』主演デヴィッド・クロス インタビュー

──私はあまりサッカーに詳しくないのですが、映画ではサッカーのテクニカルな描写はほとんどなく、楽しめました。サッカーに詳しくなくても、誰でもこの映画が楽しめるのは何故だと思いますか?

サッカーが好きじゃなくても、これは絶対楽しめると思います。なぜかと言うと、いろんな要素のある作品だからだと思います。ユーモアも悲劇もドラマチックな瞬間もあって、サッカーの試合のシーンもすごくワクワクするのは、ストーリーの一部として描かれているからだと思うんです。

困難があってもプレイし続ける、運良くそれを意思の力だけで乗り越えることができたんだけど、そのことも凄いし、サッカーのヒーローになっていくという物語も凄い。同時にラブストーリーでもあるから、その部分も皆さんに響くと思います。

マーガレットも、トラウトマンも、ふたりはトラウマを抱えているのですが、最初はそれがふたりを分け隔てる距離をつくっている。でも、お互いに少しずつつ心をオープンに開いていって、お互いを見つけることができて、恋に落ちて、彼らは家族をつくっていく。その物語にすごく共感できるからじゃないかなと思います。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

──満員の観客が入ったスタジアムでの試合のシーンは圧巻でした。撮影時にはどこまでが実際のものだったのでしょうか?完成版で試合シーンをはじめて観た時はどう思いましたか?

サッカーの試合はほとんどバイエルンで撮ったけど、ウェンブリー・スタジアムのシーンは、草地だけの場所だけがあって、あとは全部CGだったので、とにかく想像力を働かせました。ここが観客で満杯のスタジアムなんだと思って。数人はエキストラを入れて、ボールもCG なので、ボールの位置も観客にわかるように、どの瞬間ブーイングしたらいいのか、応援したらいいのか、というのを監督が頑張って盛り上げて、群衆のエネルギーみたいなものをつくっていました。それは、なるべくリアルなものを体験して欲しいから、という思いからきているのだと思います。

はじめてこのシーンを観たときも、本当にすごい!と思いました。ウェンブリーが本当に、観客でいっぱいの試合会場に見えたし、それを初めて映画でみたときはすごくクールだなと思いました。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

──デヴィッドさん自身はサッカーファン、あるいはサッカープレイヤーだったのでしょうか?

僕自身サッカーファンで5歳からサッカーはしていました。ポジションはフォワードで、ゴールキーパーはやったことがありませんでした。若いときに、将来の夢を聞かれ、本にそれを書かないといけなくて、そこに書いた夢はサッカー選手か役者だったんです。サッカー選手にはなれなかったけど、この作品を通して両方の愛を組み合わせることができ、サッカー選手を演じることができる素晴らしいチャンスでした。

ただ、ゴールキーパーをやったことがなかったので、トレーニングは結構大変でした。ジムも1日おきに撮影中も通っていて、身体をつくらなければいけなかったんです。何と言っても、トラウトマンは当時最も素晴らしいゴールキーパーのひとりだったので、フィットネスも見合ったものにしなければいけなかったし、どんなふうに立つのか、あるいはどんなふうに動くのか、ベルリンのFCの、ゴールキーパーのコーチに来てもらって、常にボールを見ていなければいけないということを学んで取り入れました。子供の頃の夢が叶いましたよ。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

──トラウトマンのことはどれくらい知っていたのでしょうか?

驚くべきことに、僕はトラウトマンについて何も知らなかったんです。サッカーファンですが、それでも彼については名前すら知りませんでした。だから、とても驚きました。監督と会った時に、彼の物語を聞いて、えっ、それ、作り話しじゃないの?というくらい信じられないような物語でしたし、だからこそ、映画にすごくぴったりだなぁという風に思いました。

彼は実在人物な訳で、起きたこと、それをみんなに思い出して欲しい、あるいは知って欲しい、という風に思いましたし、ある種、彼は平和の大使のような役割も果たしているんですよね。もともと、ナチス・ドイツで若い頃を過ごして、ヒトラーユーゲントに入り、そういったイデオロギーというものを刻み付けられて、兵士になった。でも、自分が犯罪を起こす政権の一部なんだということに気づいていき、そのことと向き合っていく訳です。

戦争捕虜になって、そしてイギリスで新しい家、新しい家族というものを見つけていく。その中でもずっと罪悪感というものとは向き合っていき、最終的にはマンチェスターのラビが映画で描かれている通り、一国の罪を人に背負わせてはいけないと言うまでそれは続いた訳ですが、56年のFAカップの決勝で首を骨折してプレイし続け、最終的に彼はサッカーのヒーローとなっていくのですよね。無意識だったとは思うけど、2つの国をつなぐ、そういう役目を果たした人物だと思いました。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

──この作品のドイツでの評判はいかがでしたか?またドイツに限らず、観客からのフィードバックで、嬉しかった言葉はありますか?

ドイツで公開された時、何箇所か都市を巡りましたが、多くの人はトラウトマンの話は初耳で、彼の物語を知って感動し、驚いていました。その中でも、トラウトマンの出身地であるブレーメンに行った時、彼の姪の方が上映に来てくれて、彼の本質を見事に掴んでいたと言ってくれたのがすごく嬉しい言葉でした。ドキュメンタリーではないので、ちゃんと物語も伝えなければいけない。でも、彼が誰であったかという本質も捉えなければいけないというバランスをすごく気を遣って演じたつもりだったので、そういうふうに言ってもらえたことはすごく嬉しかった。

あとは、息子さんがイギリスに住んでいるらしいのですが、イギリスのプレミアに来てくれて、正確に彼を再現してくれているというようなことを言ってくれて、それも本当に嬉しかったです。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

──なぜ人々はトラウトマンの物語に共感できるのでしょうか?彼の精神から何を学ぶべきですか?

まず、スポーツというものには凄い力がある。インテグレーション(=いろんな国をひとつにする、統合・融合)する力もあるということを学べると思います。これは、チームのキャプテンの控え室での「ここには戦争はない」という言葉からも伝わってくると思う。チームスピリットの方が大事だという風に、キャプテンは言っているし、色々と抗議を受けたけれども、スポーツを通してみんな1つになるんだ、なり続けるんだ、ということが、政治的な違いを乗り越える、そういう強さに繋がっていく、スポーツはそういう力を持っている、そこが学べることのひとつだと思います。

また、人を見たときに、その人個人と向き合うこと。お互いに分け隔てようとする人がいるかもしれないけれども、そういったものに引っ張られずに、しっかりと個人を見つめること、偏見を持って人を見ないことも、学べることなのではないかと思います。

キーパー ある兵士の奇跡
ⓒ2018 Lieblingsfilm & Zephyr Films Trautmann

映画『キーパー ある兵士の奇跡』は2020年10月23日(金)新宿ピカデリーほか全国公開。

Writer

THE RIVER編集部
THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

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