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『キングスマン:ファースト・エージェント』なぜ新テイストの前日譚に? マシュー・ヴォーン監督が狙いを明かす

キングスマン:ファースト・エージェント
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『キングスマン:ファースト・エージェント』は、『キングスマン』シリーズの過去2作とはまるで異なるストーリー展開とアプローチがポイントの野心作だ。コリン・ファース&タロン・エジャトンが破天荒なスパイ・アクションを見せた『キングスマン』(2014)『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017)の流れからは一転、物語の舞台は第一次世界大戦を控えたイギリスに。本作では諜報機関・キングスマンの“はじまり”が描かれる。

監督・脚本のマシュー・ヴォーンは、なぜ『キングスマン』シリーズを新たな方向性に進めることを決意したのか? 米/Filmでは、ストーリーテラーとしてのこだわりがじっくりと語られている。ヴォーンは「目的地から旅を始めることはできません。別の場所から始めないといけない。出発点なくして旅はありえないのです」と述べた。

「(本作を手がけるにあたり)面白いと思ったのは、“いかにしてキングスマンは生まれたのか、最初のキングスマンはどんな人だったのか?”ということ。それからだんだん興味が増していったんです。(今までとは)異なる映画ですが、それが良いとも思いました。」

ヴォーン自身、本作のテイストが今までと大きく異なることは十分に自覚していた。事実、監督は「ファンの方が“観る映画を間違えたかな?”と思うような場面もいくつかある」と認めている。しかし、そうした場面を用意することこそがヴォーンの狙いだったようだ。ベトナム戦争を描いた名作映画『ディア・ハンター』(1978)を挙げつつ、『キングスマン:ファースト・エージェント』のポイントをこのように強調している。

「『ディア・ハンター』には結婚式のシーンが1時間あります。だから、しばらく観ていると、“どういうこと? 戦争映画の傑作だって聞いていたけど…”と思うわけです。けれども結婚式のシーンがあって、ベトナムのシーンすべてが力強いものにある。結婚式のシーンがなければ、あれほど強力な作品にはなりえなかったでしょう。この映画もそういうことで、違うところから始めるし、新しいものにしなければいけなかった。それでも、ラスト25分間は『キングスマン』ですから。」

ちなみに『キングスマン』シリーズは、今後、コリン・ファース&タロン・エジャトン主演によるシリーズ第3作が製作予定で、以前の報道によれば2022年9月にも撮影が開始される予定。こちらはひとまずの3部作が完結する物語になるとみられており、ヴォーンは今回も「これまでの『キングスマン』シリーズの核心をきちんと描く」と語っている。異色の輝きをまとっている本作を含めて、「これが僕なりの過去の遊び方」なのだと。

映画『キングスマン:ファースト・エージェント』は、2021年12月24日(金)より公開中。

Source: /Film

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。