敵がブッ飛びすぎている『キングスマン:ゴールデン・サークル』悪の手口とは ─ マシュー・ヴォーン監督に直接訊いた

映画『キングスマン』シリーズの面白味は多岐にわたる。隙の無いほど冴え渡ったテーラーメイドのスーツに身を包んだクールでユニークなキャラクターらが、古き良きスパイ映画を彷彿とさせる秘密のガジェットを駆使して恐ろしき陰謀に立ち向かう。スピーディーでキレのあるアクションが観る者の目を奪ったかと思いきや、描く題材は妙にリアルで毒気が刺すほどコントロバーシャルだ。

2018年1月5日、待望の日本公開となる『キングスマン:ゴールデン・サークル』でも、一作目同様のユニークなヴィランが登場する。良いストーリーには、良いヴィラン。本記事では、『ゴールデン・サークル』で暗躍するサイコな女ヴィラン、ポピーについて、第一作目のヴィランと対比しながらご紹介しよう。なお、本記事作成にあたって、『キングスマン:ゴールデン・サークル』監督のマシュー・ヴォーンご本人へ、電話にて直接の取材を行っている。監督によるここだけのコメントと共にお楽しみ頂きたい。

キングスマン:ゴールデン・サークル

マシュー・ヴォーン監督 © 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

ヴァレンタインからポピーへ ─『キングスマン』悪のイズム


既に『キングスマン』第一作目(日本公開 2015)をご覧になった方なら、本シリーズがえぐり出す人間の毒気がいかに生々しいものであるか、充分にご理解頂けるだろう。第一作目でサミュエル・L・ジャクソンが演じた狂気のヴィラン、ヴァレンタインは、ラッセル・シモンズめいた強いアティチュードのファッションが印象的だが、その悪事はコミック・ヴィラン版スティーブ・ジョブズ、またはマーク・ザッカーバーグといった具合だった。

例によって『キングスマン』のヴァレンタインも、人類存亡に関わる重大な陰謀を巡らせる。当時のオバマ大統領(劇中での明示はないが、ホワイトハウスの一室に登場した男性の後ろ姿は、明らかに米国前大統領を彷彿とさせる)にさえ親しく話すこの強力なIT実業家は、全世界を対象に無料のSIMカードを配布、通話とネット接続を永久的に無料にすると宣言した。このSIMカードからは特殊な信号が発せられ、人間を凶暴化させ殺し合いをさせるという恐るべき仕掛けが隠されていた。

ヴァレンタインによれば、これは人口が増えすぎた地球を思いやってのショック療法だった。極めてイビツな選民思想と環境保全主義に駆られたヴァレンタインは、過大人口は地球にとって除去すべきウイルスと考え、ニュー・ワールド・オーダー的な人口削減計画の実行を企てたのである。キングスマンのハリーとエグジーらは、この狂気的な計画を阻止すべく戦った。

「最近のスパイ映画は少々シリアスが過ぎる」「古いスパイ映画は、幼いころ私の憧れでね」──ヴァレンタインとハリーが『キングスマン』劇中で語ったように、本シリーズのポップでキャッチーな印象は、アンチ・シリアスへのカンフル剤とも言える。その主張は、『キングスマン:ゴールデン・サークル』にも引き継がれている。最新作でヴィランとなるポピー・アダムズは、世界中の麻薬使用者を人質にした驚愕の陰謀を始動させていた。携帯電話が人を殺すという第一作目の脅威は、「スマホ依存」が身近な我々の生活をチクリと刺すものであったが、『ゴールデン・サークル』ポピーの陰謀は更に議論性も増している。THE RIVERとの電話の向こうで、マシュー・ヴォーン監督はこう説明する。

「ヴァレンタイン同様、本当に起こりうるような話題。人々の議論を起こすような、論理的な観点から描いています。」

『ゴールデン・サークル』でポピーが企てた恐るべき計画の全貌は、ぜひ劇場でご覧いただきたい。前作のヴァレンタイン同様、もしくはそれ以上のクレイジーさに驚くはずだ。記憶に残る魅力的なヴィランの多くがそうであるように、ポピーのサイコ・プランもまた、彼女なりの観念に基づいたソリューションである。マシュー監督は「ただ、そのソリューションがとんでもないから、止めなくちゃならないわけです」と続ける。

キングスマン:ゴールデン・サークル

© 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

マシュー監督が『ゴールデン・サークル』ヴィランに選んだポピーというキャラクターは、現代社会の脆弱性をハックする存在だ。ヴァレンタインは世界中に広く普及するスマートフォンを悪用したが、ポピーが汚染するのは、タブーではありながら、世界に蔓延するもの。マシュー監督はポピーの手口について「世界中の人々を人質に取れるような状況を最も作り出せますよね。ポピーの悪事は、誰もチェックができないんです。世界中の人々が感染する恐れがありながらも、政府は手が出せない」と解説する。『ゴールデン・サークル』ヴィラン側の振りかざす主張には、コミック・ムービーらしい痛快性を表向きとしながら、一方で「この主張、どこかで聞いたことがある」と思わせる皮肉も込められている。念のために現アメリカ大統領の影響について聞いてみると、監督は「いやぁ、制作当時の彼はまだテレビ番組のホストでしたからね」と笑った。

 

『ゴールデン・サークル』では、シンプルながら英国流ウィットに富んだストーリーはもちろん、前作以上にパワーアップした超スタイリッシュ・アクションも劇場でたっぷり楽しみたい。最後にこれだけは監督に尋ねておきたかったことがある。Go Proといったアクションカメラが一般流通し、ダイナミックな映像も手近なものになった昨今、革新的な映像を作るキーポイントは何だろうか。

「全てのアクションをストーリーと紐付けて、どんどん展開させていくことがキーポイントです。画面の中で何が起こっているのか、(アクションの中での)キャラクター心情がわかりやすい、という点が重要ですね。」

映画『キングスマン:ゴールデン・サークル』は2018年1月5日(金)TOHOシネマズ日劇他全国ロードショー。なお監督はこの度の取材にて、本作より初登場のチャニング・テイタムが演じるアメリカン・スパイ「テキーラ」のスピンオフ映画を構想中であると、世界では初めてTHE RIVERに明かしている

(取材、文:Naoto Nakatani)

配給:20世紀FOX映画

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