なぜレイアはルークのジェダイ修行から離脱したのか ─ 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』

スター・ウォーズにおける主要人物のルーク・スカイウォーカーとレイア・オーガナは、父アナキン・スカイウォーカー(ダース・ベイダー)とパドメ・アミダラの間に生まれた双子の兄と妹である。最新シリーズ『スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)では、片や”伝説のジェダイ”、片や”レジスタンス”の創始者となったが、ではなぜレイアは、自らをルークの妹と知った後もジェダイの道を選ばなかったのか。

書籍『Star Wars:The Last Jedi:The Visual Dictionary』を参照すると、「スカイウォーカーの最初の生徒は、彼の妹であるレイアだった」と記されている。しかしながらレイアがジェダイの修行を終えなかった理由は、「彼女にとって銀河のために尽くす最善策が、隔絶を強いるジェダイ修行と相性が悪かった」ためだという。レイアが献身を決意したのはジェダイの道ではなく、政治の道だった。妹と意見を違わせたルークは、それより旅を始め、新たな訓練生らを集めたということである。


この記事では、レイアがジェダイの道を歩まなかったであろう理由を他にも推察したい。『スターウォーズ/フォースの覚醒』(2015)の数年前、新たな脅威となるファーストオーダーと、レイア率いるレジスタンス誕生までを描いた書籍『スター・ウォーズ ブラッドライン』(角川文庫)では、伝説的存在の兄ルークやフォースをめぐるレイアの複雑な思いを浮き彫りにしている。

注意

この記事には、書籍『スター・ウォーズ ブラッドライン』上下巻、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の内容が含まれています。

「軽い気持ちで話し合える話題ではない」

『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)エンドアの戦いにてダース・ベイダーは倒され、”最後のジェダイ”ルーク・スカイウォーカーの存在は銀河中が知るところになった。また、ルークとレイアが兄妹関係にあることも周知の事実となっていた。ただし、この二人が、恐るべきダース・ベイダーの子である事実は隠されていたのだ。『ブラッドライン』は、このレイア・オーガナ最大の秘密告発を描く政治サスペンス。この作中でレイアは、ジェダイやフォースに対する複雑な想いを明かしている。

作中でレイアは、古い言い伝えを重んじる惑星出身の人物から、兄同様に強いフォースの能力を持つ血を引きながら、なぜジェダイになろうとしないのかと尋ねられる。レイアは「わたしの義務は常にここにあった。よりより新政府を作ること、それがわたしの仕事だったの」と答えながらも、その胸中には「軽い気持ちで話し合える話題ではない」との繊細な想いがあった。

レイアにとってフォースやジェダイとは、常にその暗部──ダークサイドやシスの脅威と過去のトラウマを思い出させるものであったのだろう。レイアの中には、ダース・ベイダーに対する強い恐怖心と落胆が根強く残っていた。人々はルークやジェダイを英雄として明るく話すが、レイアにとってはそう単純な問題ではない。『ブラッドライン』によれば、ルークは彼らの父が迎えた最期を、次のようにレイアに伝えたという。

ルークは実の父親のこの話をするとき、ダース・ベイダーという言葉を使おうとしない。”父さんが母さんと恋に落ちたとき、彼はアナキン・スカイウォーカーだった”と、やさしくレイアの手を取って、ルークは言う。”そして死ぬ少し前にアナキン・スカイウォーカーに戻ったんだ。ダークサイドから戻ってきたんだよ、レイア。そんなことは不可能だと言われていたが、ぼくらの父さんはそれをやってのけた。ぼくたちへの愛が、父さんを光の側に戻したんだ”

 

レイアは兄ルークを心底信頼しているに違いないが、兄の告白にはそれでも安心できなかったという。確かにベイダーは善の心を取り戻し、ついに穏やかな素顔を息子に見せたが、あくまでもそれはルークのみに起こった出来事。レイアにとっては、極めて卑劣な拷問をし、故郷オルデランをレイアの眼前で破壊した帝国軍の、身の毛もよだつ怪人のままなのである。レイアは銀河元老院の議会の場で「真の意味で、わたしはまだその事実を受け入れられずにいます。その事実がもたらす苦しみはこれからも続くことでしょう」と打ち明ける。

「きみだよ レイア」──極めて強いフォース感応者であったレイア・オーガナは、──『最後のジェダイ』劇中でフォースの技による宇宙舞空術を見せたように──かつては兄ルーク・スカイウォーカーのもとでジェダイの修行を少なからず行っていた。しかし、政治家としての責務に邁進すべきと、修行の道を断念する。その決断の中には、決して純白ではないフォースの力を心の何処かで恐れている部分もあったのだろう。それだけに、息子ベン・ソロがスノークに奪われ、ダークサイドに寝返ったことは筆舌に尽くしがたい苦しみを感じたはずだ。

さらに書籍『ブラッドライン』は、ベン・ソロが自身の祖父の正体について知らされておらず、告発による報道で知ることになったという事実も明かされた。ベンのダークサイド転覆は、自身にかかる真実を両親からひた隠しにされ、不本意な形で知らされてしまったという失望も大いに影響したはずだ。ベンにとってもレイアにとっても、あまりにも皮肉で、悲劇である。

書籍『スター・ウォーズ ブラッドライン』は角川文庫より上下巻が発売中。

参考書籍:『Star Wars The Last Jedi The Visual Dictionary』Pablo Hidalgo、DK Children、2017
『スター・ウォーズ ブラッドライン』上下巻 クラウディア・グレイ(著),富永和子(訳)、角川文庫、2017

About the author

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

JOIN THE DISCUSSION

※承認されたコメントのみ掲載されます。