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デヴィッド・F・サンドバーグ監督『ライト/オフ』の原型となった短編映画に注目!カギを握るのは一人の女優

2016年8月に劇場公開されたホラー映画『ライト/オフ』(Lights Out)を、皆さんはもうご覧になっただろうか?

実はぼく自身はまだ未鑑賞なのだが……今回は、本作を監督したデヴィッド・F・サンドバーグを取り上げてみたい。ちなみにぼくが本作品を未鑑賞な理由は、最後まで読んでいただければわかるはずだと願いたい。

Lights Out
http://www.imdb.com/title/tt4786282/mediaviewer/rm747183872

サンドバーグは、元々フリーランスのアニメーターとして活動しており、ドキュメンタリー映画やショートフィルムの制作を生業としていた。2013年、まだまったくの無名だった彼は、英国に拠点を置く映画プロダクション“Bloody Cuts”の主催する短編ホラー映画チャレンジ企画「Who’s There Film Challenge」に、ひとつの短編映画を出品する。その作品『Lights Out』こそが、何を隠そう、長編デビュー作『ライト/オフ』(原題は同名)の原型なのである。

『Lights Out』は、当時インターネット上で公開されるや否や瞬く間に話題を呼び、ある人物の目に止まることとなった。『ソウ』や『インシディアス』、『死霊館』などで知られるホラー映画界の新星ジェームズ・ワンである。彼のプロデュースのもと、短編作品だった『Lights Out』は長編映画化されることになり、サンドバーグはその監督として起用されたのだ。つまり『Lights Out』は、無名だった彼がメジャーへと一気に駆け上がるきっかけとなった記念すべき作品なのである。本作は現在もオンラインで公開されているので、もしまだ未鑑賞の方はぜひご覧いただきたい。もちろん本作品は、「Who’s There Film Challenge」で最優秀監督賞を受賞している。

[vimeo 82920243 w=640 h=360]

『Lights Out』カギを握るのは主演女優

さて、ぼくが『Lights Out』を初めて鑑賞した際には、その日常的かつ瞬間的な恐怖と完成度にももちろん圧倒されたのだが、もうひとつ注目した点がある。本作品に登場する唯一の人物、つまり“主演”女優のロッタ・ロステンだ。サンドバーグは他にも短編ホラー映画をいくつも製作しているのだが、そのほとんどにはロステンしか登場しないといっていい。つまり彼女は、サンドバーグ作品に欠かせない女優、サンドバーグ作品になくてはならない人物ともいえるのである。

ロッタ・ロステンはスウェーデンで女優として活動しているほか、デザイナーかつフォトグラファーとしての顔も持っている。そして、実はサンドバーグ監督の妻なのである。まあ、いくつか作品を観ていると薄々気が付くけれどね……。

Lotta Losten
http://www.imdb.com/title/tt4786282/mediaviewer/rm1362957312 © 2016 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

そもそもサンドバーグが自分の妻を主演女優に短編を作ったのには、あるきっかけがある。2013年、大きな借金を抱えていたらしいサンドバーグは、拠点スウェーデンで奮起し、映画を製作するためスウェーデン映画協会の助成金を申請して資金を得ようとしていた。けれども映画協会側は、ホラー映画にまったく興味を示さず、申請は受け入れられずに資金調達は難航したのである。そこで彼は「もうどうにでもなれ!」という気持ちで、妻と二人で映画を作り出すことになる。自前のカメラと女優の妻だけで作品は作れるじゃないか!というわけである。

そして完成したのが、2013年に製作された初のホラー作品『Cam Closer』(カム・クローサー)だ。本作品もオンラインで公開されているので、興味のある方はご覧いただきたい。ちなみに本編とともに公開されているメイキングを観る限りでは、撮影に使用されているライトはイケアで購入されたもので、撮影機材なども二人による手製がほとんどのようである。

[vimeo 64762621 w=640 h=360]

サンドバーグによる短編作品をいくつか観ていると、そのクオリティや監督のセンスはもちろん、なによりも女優ロッタ・ロステンの存在感と演技に大きな魅力を感じる。彼女でなければ作品の恐怖は完成されなかっただろうと思わせるモノがそこには確かに存在するのだ。例えばそれは、夫婦という信頼関係、お互いへの理解から生み出される、劇中での彼女のリアルな日常感によるものかもしれないし、彼女の持つ“近所の顔見知りのおばさん”的な容姿によるものかもしれない。日常感に関して言えば、作品のほとんどが、おそらく二人が暮らす自宅で撮影されているだろうことも重要だと感じる。

Writer

Mujina
MujinaMujina Tsukishiro

普段はあまり摂取しないコーヒーとドーナツを、無駄に欲してしまう今日この頃。You know, this is - excuse me - a damn fine cup of coffee.

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