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『マトリックス』は「怒りと憎しみから生まれた」リリー・ウォシャウスキー監督、なぜ映画界を離れたのか

マトリックス リローデッド
© Warner Bros. 写真:ゼータ イメージ

キアヌ・リーブス主演『マトリックス』シリーズを手がけたウォシャウスキー姉妹は、現在それぞれの道を進んでいる。最新作『マトリックス4(仮題)』には姉のラナのみが復帰し、妹のリリーは登板しないのだ。Netflixドラマ「センス8」シーズン1を2015年に作り終えたのち、リリーはしばし業界を離れている。

The Hollywood Reporterにて、リリーは「業界への怒りがあるんです。自分の時間を消費してしまったように思えて」と述べている。1995年『暗殺者』でデビューしてから約25年が経過するが、「映画づくりはタイムマシンのよう。乗り込んで、なんとかやり遂げて、公開される時には1年半経っていることもありますから」。もっとも、業界への関心が薄れてしまったのは、ただ時間がかかるからという理由だけではないようだ。

「私が(業界に)入ったのは、映画が全盛期の頃でした。まだ、役員やマーケティングの人間が映画の世話をするようになる前のこと。結局、そういう人たちや組織が加わるようになりました。脚本を書く時も、撮影をする時も、編集をする時も。個人的にはそれがストレスになってきて、限界を迎え、去らなくてはいけなくなったんです。」

2016年、リリーはトランスジェンダーの女性であることを公表。その後は「自分の世界を作る」ことを大切に生活を続けてきた。その一方、自身のセクシャリティを公言したことが、自分の過去作にも影響を与えたことを学んだとも語っている。「私は、トランスの女性として年を重ねられるのだという例のひとつ。トランスの方々には、私がトランスであること、自分たちがトランスであることを通して映画を観てもらえる。それはとても嬉しいことです」。

代表作『マトリックス』シリーズについても、リリーは「ジェンダーの要素、トランスとしての経験がたくさん隠されています」と明かす。そもそも、資本主義や大企業、社会にあふれる抑圧に対する「怒りと憎しみから生まれた」映画だというのだ。「私自身が感じていた、抑圧への怒りが沸騰していました。だけど、それを隠しておかなければいけなかった」。あらためて映画を観れば、物語を超えて浮かび上がる“怒り”を感じられることだろう。

2019年、リリーはドラマシリーズ「Work in Progress(原題)」の脚本・製作総指揮として業界に復帰。トランスとしての実体験、メッセージを織り込んだ同作は非常に高い評価を受け、シーズン2の製作も決まっている。業界の性質ゆえ、リリーは完全復帰には消極的ながら、「より多くのクィア、トランスを作品に登場させていきます」と創作への意欲はたっぷり。「私たちにどういうことができて、私たちがいかに優れたアーティストであるかを示したい。諦められることではありません」。

Source: The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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