『6才のボクが、大人になるまで。』リチャード・リンクレイター監督、今度は20年かけてミュージカル映画を撮る

少年の成長を実際に12年かけて撮った『6歳のボクが、大人になるまで。』(2014)で多くの映画賞に輝いたリチャード・リンクレイター監督が、今度は20年かけてミュージカル映画を撮る。同名ミュージカル作品を映画化する、『メリリー・ウィー・ロール・アロング(原題:Merrily We Roll Along)』の製作が始動していることがわかった。
『メリリー・ウィー・ロール・アロング』は、才能あふれるブロードウェイの作曲家だったが、キャリアと友人を切り捨てて映画を撮るべくロサンゼルスへ渡った男、フランクリン・シェパードを主人公とする物語。成功を収めたシェパードだったが、彼はどこか寂しい気持ちを抱えていた。友人だった脚本家のチャーリー・クリンガス、批評家のメアリー・フリンは今、どこで何をしているのだろうか。在りし日の写真を見つめて、シェパードは現在の自分を形づくった青春の日々、過ぎ去った20年間を回想する。
映画版の原作となるのは、1934年の同名戯曲を基に、作詞家・作曲家のスティーヴン・ソンドハイムがミュージカル化し、1981年にブロードウェイで初演したもの。主人公フランクリン役は、リンクレイター監督作品『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(2016)でジェイク役を演じたブレイク・ジェンナー、友人メアリー役は『レディ・バード』(2017)のビーニー・フェルドスタインが演じる。そのほか、『ピッチ・パーフェクト』シリーズや、ブロードウェイの人気ミュージカル『ディアー・エヴァン・ハンセン(原題:Dear Evan Hansen)』で知られるベン・プラットも出演する。
報道によると、映画版の撮影は実際に20年かけて行われるが、物語の特性上、撮影は物語の展開とは逆の順序で進められるとのこと。すでに撮影の第1段階は終了しており、今後、断続的に撮影が進められていく。ちなみに映画が完成するころ、1960年生まれのリンクレイター監督はおよそ80歳になる見込みだ。
原作となるミュージカルを1980年代に観た際、その世界に惚れ込んだというリンクレイター監督は、映画化にあたって「ミュージカルの世界に今後20年以上を費やすこと以上に良い方法を想像できませんでした」と語っている。「これほどの複数年計画は気軽にやれるものではありません。けれども、この物語を正しく映画化するには、おそらく唯一にして最高の方法だと思うのです」。
なお、プロデューサーにはリンクレイター監督のほか、長年監督とタッグを組んできたジンジャー・スレッジ、『セッション』(2014)『ゲット・アウト』(2017)などホラー/スリラー映画で知られるブラムハウス・ピクチャーズのジェイソン・ブラム、劇作家のジョナサン・マーク・シャーマンが参加した。
思えば『バッド・チューニング』(1993)や『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(1995)といった初期作品を含め、キャリアを通じて「青春」「時間」を描き続け、また『スクール・オブ・ロック』(2003)で「音楽」に最接近したリンクレイター監督が、『6歳のボクが、大人になるまで。』の手法で挑む一大プロジェクトが本作といえる。これぞ、監督の集大成になることは間違いないだろう。完成した映画を観られるのが20年後になることだけが気がかりだが、みんな、絶対映画館で観ような。