【インタビュー】『ロード・オブ・カオス』ロリー・カルキンとブラック・メタル ─ メイヘムの漆黒すぎる事件は「信じられない」

ブラック・メタル黎明期の伝説的バンド「メイヘム」の狂乱の青春を描いた映画『ロード・オブ・カオス』が日本公開となった。
ノルウェー・オスロに拠点を置き、初期ブラック・メタル・シーンの中核的な存在となったバンド「メイヘム(Mayhem)」。彼らは、サタニズム(悪魔崇拝主義)を標榜し、過激なライヴパフォーマンスとコープスペイント(死化粧)で世界のメタルシーンを席捲。同時に、バンドリーダーのユーロニモスは、“誰が一番邪悪か”を競い合うアンダーグラウンド集団「インナーサークル」を結成。活動は過激化し、教会連続放火、暴動、果ては複数の殺人事件まで引き起こし、社会問題に発展。
中でも衝撃的なのは、メンバーの「デッド』の死をめぐる不穏な事実だ。リーダーのユーロニモスは、ショットガンで脳天を撃ち即死したデッドの死体を発見すると、警察に通報するのではなく、その凄惨な現場の写真を撮影。写真は、なんと後にアルバム(ブート盤)のジャケット写真にそのまま使用されている(検索注意)。さらに、デッドの頭蓋骨の破片を拾い集めてネックレスにしたとも伝えられているのだ。
『ロード・オブ・カオス』で描かれるのは、こうしたメイヘムの凄まじいストーリー。ただバンドを組んだだけだったはずの彼らは、なぜ漆黒に塗りつぶされて暴走したのか?映画では、ユーロニモスたちを襲う衝撃的な最後までを、みずみずしく、切なく、そして血生臭く描く。
THE RIVERでは、この映画でユーロニモス役として主演を務めたロリー・カルキンに単独インタビュー。ロリーは、『ホーム・アローン』シリーズで知られるマコーレー・カルキンの弟でもある。涼しく、神秘的な雰囲気をまとったロリーは、映画や音楽、さらに趣味に関する様々な質問に気さくに答えてくれた。

ロリー・カルキンと『ロード・オブ・カオス』
──はじめまして。『ロード・オブ・カオス』とても気に入りました。メタルのファンとして、映画で描かれる世界観にも馴染み深い思いで鑑賞できました。ロリーさんはブラック・メタルやメタルには、もともと興味があったんですか?
ありがとうございます。ブラック・メタルはもちろん知ってはいましたけど、そこまでではなかったです。表面的なことしか。
──ブラック・メタルやメタルについて、どのようにリサーチされたんですか?
まず最初にジョナス・アカーランド監督の話を聴きました。彼はこのカルチャーで育っていますし、(映画に登場する)デッド本人ともちょっとした知り合いなんです。だから彼自身が大きな情報源でしたね。ドキュメンタリー作品や本もあたりました。それから、当時を知る人たちにも話を聞きました。
※本作の監督ジョナス・アカーランドは、ブラック・メタルの父ともいえるバンド「バソリー」のドラマーでもある。自殺するメイヘムのデッドとも知り合いだった。

──ジョナス監督はブラック・メタルの生き証人とも言える方ですが、どのようなことを教わったのですか?
映画が実際に製作されるまでに数年かかったんですけど、その間にたくさんディスカッションしました。僕が彼に最初に聞いてみたことは、「もしも僕が彼らのパーティーに行ったら、どんな対応をされるかな?」ということ。そしたら彼は、「たぶんフレンドリーだと思うよ」と教えてくれました。確かに見た目は物騒で威圧的だけど、ちゃんともてなしてくれるんじゃないかって。根はいい人たちだから(笑)。
──ブラック・メタルやメタルのカルチャーを調べていて、好きなバンドは見つかりましたか?
メタル全体だったらブラック・サバスが好きですね。ブラック・メタルだったら、やっぱりメイヘムです。自分で演じたからっていうのもありますけどね。
──ロリーさん自身はどんな音楽を聴いて育ったんですか?
クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングとかジェファーソン・エアプレインあたりですね。
──正式な出演オファーを得られる前から、髪を伸ばしたり、メタルの勉強をしたりと、役の準備をされていたそうです。なぜこの作品に惹かれていたんでしょうか?