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【インタビュー】『ロード・オブ・カオス』ロリー・カルキンとブラック・メタル ─ メイヘムの漆黒すぎる事件は「信じられない」

ロード・オブ・カオス
© 2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

ブラック・メタル黎明期の伝説的バンド「メイヘム」の狂乱の青春を描いた映画『ロード・オブ・カオス』が日本公開となった。

ノルウェー・オスロに拠点を置き、初期ブラック・メタル・シーンの中核的な存在となったバンド「メイヘム(Mayhem)」。彼らは、サタニズム(悪魔崇拝主義)を標榜し、過激なライヴパフォーマンスとコープスペイント(死化粧)で世界のメタルシーンを席捲。同時に、バンドリーダーのユーロニモスは、“誰が一番邪悪か”を競い合うアンダーグラウンド集団「インナーサークル」を結成。活動は過激化し、教会連続放火暴動、果ては複数の殺人事件まで引き起こし、社会問題に発展。

中でも衝撃的なのは、メンバーの「デッド』の死をめぐる不穏な事実だ。リーダーのユーロニモスは、ショットガンで脳天を撃ち即死したデッドの死体を発見すると、警察に通報するのではなく、その凄惨な現場の写真を撮影。写真は、なんと後にアルバム(ブート盤)のジャケット写真にそのまま使用されている(検索注意)。さらに、デッドの頭蓋骨の破片を拾い集めてネックレスにしたとも伝えられているのだ。

『ロード・オブ・カオス』で描かれるのは、こうしたメイヘムの凄まじいストーリー。ただバンドを組んだだけだったはずの彼らは、なぜ漆黒に塗りつぶされて暴走したのか?映画では、ユーロニモスたちを襲う衝撃的な最後までを、みずみずしく、切なく、そして血生臭く描く。

THE RIVERでは、この映画でユーロニモス役として主演を務めたロリー・カルキンに単独インタビュー。ロリーは、『ホーム・アローン』シリーズで知られるマコーレー・カルキンの弟でもある。涼しく、神秘的な雰囲気をまとったロリーは、映画や音楽、さらに趣味に関する様々な質問に気さくに答えてくれた。

ロード・オブ・カオス
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ロリー・カルキンと『ロード・オブ・カオス』

──はじめまして。『ロード・オブ・カオス』とても気に入りました。メタルのファンとして、映画で描かれる世界観にも馴染み深い思いで鑑賞できました。ロリーさんはブラック・メタルやメタルには、もともと興味があったんですか?

ありがとうございます。ブラック・メタルはもちろん知ってはいましたけど、そこまでではなかったです。表面的なことしか。

──ブラック・メタルやメタルについて、どのようにリサーチされたんですか?

まず最初にジョナス・アカーランド監督の話を聴きました。彼はこのカルチャーで育っていますし、(映画に登場する)デッド本人ともちょっとした知り合いなんです。だから彼自身が大きな情報源でしたね。ドキュメンタリー作品や本もあたりました。それから、当時を知る人たちにも話を聞きました。

※本作の監督ジョナス・アカーランドは、ブラック・メタルの父ともいえるバンド「バソリー」のドラマーでもある。自殺するメイヘムのデッドとも知り合いだった。

ロード・オブ・カオス
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──ジョナス監督はブラック・メタルの生き証人とも言える方ですが、どのようなことを教わったのですか?

映画が実際に製作されるまでに数年かかったんですけど、その間にたくさんディスカッションしました。僕が彼に最初に聞いてみたことは、「もしも僕が彼らのパーティーに行ったら、どんな対応をされるかな?」ということ。そしたら彼は、「たぶんフレンドリーだと思うよ」と教えてくれました。確かに見た目は物騒で威圧的だけど、ちゃんともてなしてくれるんじゃないかって。根はいい人たちだから(笑)。

──ブラック・メタルやメタルのカルチャーを調べていて、好きなバンドは見つかりましたか?

メタル全体だったらブラック・サバスが好きですね。ブラック・メタルだったら、やっぱりメイヘムです。自分で演じたからっていうのもありますけどね。

──ロリーさん自身はどんな音楽を聴いて育ったんですか?

クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングとかジェファーソン・エアプレインあたりですね。

──正式な出演オファーを得られる前から、髪を伸ばしたり、メタルの勉強をしたりと、役の準備をされていたそうです。なぜこの作品に惹かれていたんでしょうか?

脚本が良かったんです。特に教会を燃やすシーンですね。それから、最初に脚本を手にした時、表紙にユーロニモスのコープスペイント(白塗りのメイク)が描かれていて、これに惹かれたんです。こういう映画は珍しいんじゃないかなって。

ロード・オブ・カオス
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──実際のユーロニモスのコープスペイントからは、怒りや邪悪さが感じられますが、あなたのコープスペイントはなんだか哀しそうに見えると思います。

その意見は面白いですね。もちろん忠実な姿を描こうとしてはいますが、たぶん僕の素顔のせいですね。僕の顔の骨格であのメイクをやると、哀しいピエロみたいになっちゃうのかな(笑)。

──哀しいピエロ、いいですね(笑)。ところでメイヘムの歴史は、映画で描かれるようにショッキングな出来事がたくさんあります。教会への放火や、自殺に殺人。リサーチしていて、一番ショッキングだった事実はなんですか?

本当に、恐ろしい出来事ばかりですよね。親友デッドの自殺から、彼がそれにどういう反応をしたのかということも。(遺体を発見してから)警察を呼ばずに、写真を撮っていただなんて。恐ろしいし、気分が悪くなりますよね。親友の死体を見つけて、わざわざ周りにナイフを置いて写真を撮っていたなんて、気味が悪いし、嫌な感じです。

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──友人の死体を発見して、写真を撮ったり、その死をバンドの宣伝に利用したり。あなたはユーロニモスの取った行動を信じられますか?

ショックが大きすぎて、きちんと反応できなかったんじゃないかな。個人的には信じられないですね。宣伝に使われるうちに歪曲されたんじゃないかと。でも、本当にやったと信じている人もいる。本当のところは分からないですが、僕はただ宣伝に使われただけで、事実とは違うんじゃないかなと思います。

──メイヘムの演奏シーンではギターをプレイしていますが、実際に演奏を習得したんですか?

はい。メイヘムの曲ならちょっとだけ弾けますよ。ところどころですけどね。

──ライブシーンでも、実際にメンバー全員で演奏を?

できるだけ演奏していましたが、裏で曲が流れていたので、それに合わせる感じでした。

──ユーロニモスのステージパフォーマンスはどのように?

撮影現場にブラック・メタル・コーチがいて……、

──ブラック・メタル・コーチ!

そう、コーチがいたんです(笑)。ブラック・メタルの音楽性やアティチュード、立ち振舞を教えてもらいました。これがすごく大事なことで。鏡の前に立って、どうすれば邪悪に見えるか極めるんです。自宅でも練習しましたよ。

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──ブラック・メタルのステージパフォーマンスは、他のロックミュージシャンとどう違うんでしょうか?

たとえば当時はモトリー・クルーのようなヘアメタルがありましたが、彼らの場合は楽しさ重視ですよね。ブラック・メタルの場合も同じなんですけど、本人たちはそう認めないでしょう。もっとシリアスなんです。彼らはコープスペイントをしてパーティーに現れて、見た目はカッコいいんですけど、でもよくよく考えたら、家の鏡の前であのメイクをやってるんですよね……。彼らも楽しんでいるわけですが、もっとシリアスで恐ろしさを重視しているんです。

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──実際のメイヘムのメンバーたちは、この映画の製作に直接携わっていないということです。当時からのベーシストであるネクロブッチャーは、この映画について「映画は映画だから」といったスタンスで、公開後もしばらく観なかったそうです。特にラストは辛くて観られなかった、と。きっと、友人の死に直面しなくてはならなかったからなのでしょう。

ネクロブッチャーはユーロニモスともデッドとも親しかったわけですし、確かに友人の死の再現を観るのは辛かったと思います。彼がどんな気持ちだったか、想像もできません。でも、リードシンガーのアッティラが撮影現場に来てくださいましたから、メイヘムも一部関わっていると言えるんですよ。

──本作を経て、メタル・コミュニティやメタル・ファンに対してどう思いますか?

メタルは素晴らしいアートだと思いますし、見た目は威圧的で取っ付きにくいかもしれないんですけど、いざ入り込んでみると心地良い。そういう方が沢山いるんだと思いました。

──ブラック・メタルについての物語ではありますが、同時に青春ドラマとしても楽しめると思います。メタルファンでなくても、この映画は観るべきですよね。

新しいジャンルに出会える、良い機会だと思いますよ。僕自身、この映画に出るまでブラック・メタルのことは良く知らなかったけれど、本当に魅力的なジャンルです。是非観て欲しいです。

──メタリカが「ManUNkind」のミュージックビデオで、『ロード・オブ・カオス』の映像を使いましたね。映画の映像も使用されていますが、メタリカ用に追加撮影もしたんですか?

そうです。コンサートのシーンを撮った日に、2〜3時間使って。もともと(メイヘムの役の)コスチューム姿だったから、そのままメタリカの曲を覚えて、どう振り付けするかを決めて。ぱぱっと撮りましたね。ジョナスがラーズ(・ウルリッヒ、メタリカのドラマー)の友人ということで、ラーズから頼まれたそうです。

──世界最高のヘヴィ・メタルバンドのミュージックビデオに出演できた気持ちは?

最高ですよ!メイヘムの映画に出演したら、メタリカのビデオにも出演できるボーナスが付いてきた。最高です。

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──ところで、最近観た映画でお気に入りはなんですか?

うわ、なんだろう……。最近の……、あぁ、なんだろうな……。ずっと家にいて、もう映画館にはしばらく行けてないから、最近は映画を観ていないですね。プロレスは観てます(笑)。

──えっ、プロレスがお好きなんですか(笑)。

うん、大ファンです。

──好きなレスラーは?

ブレイ・ワイアットは良いですね。シンスケ・ナカムラ(中邑真輔)も良いですよね。

──中邑真輔!ちなみに日本とのつながりは何かありますか?

それが、パンデミック前は日本に行く予定があったんですよ。東京に遊びに行くつもりだったのに、キャンセルになっちゃった。また行けるようになったらいいな。初の日本になるはずだったんですけど。

──自粛期間中は何をして過ごしましたか?

ガーデニングをやって忙しくしたり、猫と遊んだりですね。男の子と女の子がいて、ピーチとクレヨンっていう名前です。

──ありがとうございました!最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

えっと……、(両手でグーサインを作って)『ロード・オブ・カオス』をチェックしてね!(照れ笑い)


このインタビューのほか、ロリーとは映画のラストシーンに関する話もすることができた。そちらはネタバレということで、別記事にてお届けする予定だ。

ネタバレ部分はこちら

映画『ロード・オブ・カオス』は2021年3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかにてロードショー。以降順次公開。

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THE RIVER編集部THE RIVER

THE RIVER編集部スタッフが選りすぐりの情報をお届けします。お問い合わせは info@theriver.jp まで。

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