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【もう一度『LOGAN/ローガン』を観るために①】本編からカットされた「ウェストチェスターでの事件」その詳細を監督&脚本家が語る

ヒュー・ジャックマンがウルヴァリンを演じる最後の作品となった、映画『LOGAN/ローガン』が2017年6月1日に劇場公開されてから、早くも10日あまりが経過した(2017年6月11日執筆時点)。多くのマーベルファン、『X-MEN』ファン、そしてアメコミ映画ファンはすでに劇場に足を運んでいることだろう。
そこでTHE RIVERでは、よりディープに『LOGAN/ローガン』の世界を味わうため、数回にわたって「もう一度『LOGAN/ローガン』を観るために」と題した記事をお届けしていく。もちろん内容は本編のネタバレを多分に含んでいるので、まだ観ていない方は劇場へ足を運んでから、もう観た方はもう一度劇場へ行く前にぜひお読みいただきたい。

第一回は『LOGAN/ローガン』ではあえて描かれなかった、劇中でミュータントたちがたどった“ある経緯”についての監督&脚本家の証言をお伝えしよう。

【注意】

この記事には、映画『LOGAN/ローガン』、コミック『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』のネタバレが含まれています。

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“ウェストチェスターでの事件”とは

『LOGAN/ローガン』の物語が始まった時点で、ミュータントたちはほとんど世界に存在していない。残されたのはローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)、チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)で、しかもアルツハイマーを患ったチャールズはメキシコ付近の国境に姿を隠している。しかもその能力が暴走しないよう薬を投与され、介護を受ける身となって……。

本作ではあえて、「なぜミュータントがいなくなったのか」という謎が明らかにされていない。観客が知ることができるのは、7人のミュータントが死亡したこと、チャールズの屋敷があったウェストチェスターで惨事が起きたこと、そしてチャールズが自身の(無意識による)行動を後悔していることだ。では、なぜローガンはチャールズをメキシコのひどい環境下に置かねばならなかったのか、なぜ逃亡しなければならないのか、そして政府はなぜチャールズを「大量破壊兵器」と呼んでいたのか……。その真実が劇中ではっきりと語られることはないのである。

しかしジェームズ・マンゴールド監督と脚本家のマイケル・グリーン氏は、そろって「なぜミュータントがいなくなったのか」を解明するシーンを執筆していたことを明らかにしている。“ウェストチェスターでの事件”は、コミック『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』をもとに考案されながら、ついに脚本の完成稿に使用されることはなかったのだ。

監督ジェームズ・マンゴールドの証言

『LOGAN/ローガン』の米国公開時、マンゴールド監督はハリウッドレポーター紙に対して、“ウェストチェスターでの事件”をカットした理由として「情報を少なくして、キャラクターをたっぷりと描く映画を作りたかった」と語っていた。しかし米国盤Blu-ray/DVDの発売にあたっては、IGNの取材にこんな意図も述べているのである。

「その(ウェストチェスターでの事件の)シークエンスから始まるオープニングを書いたよ。誰が死んだのか、まさにそのままね。でも本編でカットした理由は、それが他の映画と共有できなかったことだ。映画を再定義してしまう、ローガンとチャールズの映画ではなくX-MENの映画になってしまうと思ったんだよ」

また監督は、『LOGAN/ローガン』のストーリーを単独で考えた際にも、ストーリーの前日譚を描くべきではないと考えたようだ。

「決定的だったのは、脚本のはじめにそのくだりを読むと、キャラクターの後ろを影のごとく付きまとう悲劇ではなく、その他の“この悲劇”についてのストーリーになってしまうと思ったことだ」

あえて事件の詳細を語らないことで、より大きな問題、ウルヴァリンやプロフェッサーXの過去すべてに物語のテーマが波及していく。二人の人物の抱える業の深さを示すために、“ウェストチェスターでの事件”はあえて描かれなかったのである。

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脚本家マイケル・グリーンの証言

ハリウッドレポーター紙の取材で、脚本を執筆した一人であるマイケル・グリーン氏は、事件のフラッシュバックが含まれた脚本が確かに存在したことを認めている。しかしグリーンが語る「カットの理由」は、マンゴールド監督とは少しだけ異なっていた。

フラッシュバックを具体的に描くよりも、(描かないほうが)より辛いものになったんです。[中略](ローガンとチャールズには)本当に後悔していることがある。それはひどい出来事で、きっと友人たちを失ってしまったんだろう。あるいは私たちが知らない人かもしれない……。それを知ることのほうが、はるかに痛ましい鑑賞体験になると気づいたんですよ」

もちろんグリーン氏は、『LOGAN/ローガン』で示唆される“事件”がファンをあらゆる点で刺激する可能性を理解していたという。なぜなら原案コミック『ウルヴァリン:オールドマン・ローガン』では、ミュータントが全滅した理由は「幻覚を見たウルヴァリンが全員を殺害したから」なのだ。『LOGAN/ローガン』はミュータント全滅の理由をはっきり語っていないが、しかし『オールドマン・ローガン』と同じ経緯でないことだけは明らかになる

「(ミュータントたちに)最後に何が起こったのか、オンラインでファンの持論を読むこと以上に良いものはないでしょうね。私は『LOGAN/ローガン』についての(ファンの)持論を聞きたいんです。何が起こったのかについての考えはありますし、実際に何が起こったのかすら私は知っています。でもそれは問題じゃないんですよ。なぜならここでファンに神聖化されるものにこそ、映画のエモーショナルな影響があるからです」

ちなみにグリーン氏は、本編で描かれなかったものを今後明らかにするつもりはないという。しかし彼はこうも述べているのだ。

「いつか、誰かの手によってすべてが描かれた(『LOGAN/ローガン』の)素晴らしいコミックを読みたいですね」

さて、あなたは映画を観て、二人の過去には何があったと考えただろうか? ローガン/ウルヴァリンは何をしたのか、チャールズ/プロフェッサーXの後悔とは……。あえて描かれていないからこそ、何度も観ることで気づくこと、想像を広げられることがあるはずだ。

映画『LOGAN/ローガン』は2017年6月1日より全国公開中

Sources: http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/logan-spoilers-prof-x-scene-was-cut-movie-983121
http://www.ign.com/articles/2017/05/20/logan-almost-opened-with-that-x-men-scene
Eyecatch Image: https://www.instagram.com/p/BLybfSgjzFE/

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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